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    choko_bonbon

    @choko_bonbon

    メモ代わりの、あらすじズラズラ。
    練習絵。などなど。

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    choko_bonbon

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    タイトル通りだ。

    スキニーを履く7の尻!!部屋のドアが乱暴に開かれた。乱暴なのは誘い方もそうで、プラチナに輝く髪をなびかせた五条は、ふかふかの布団にくるまるブロンド目指して飛び跳ねた。
    「ななみ! おいコラ。なんでまだ寝てんだよ」
    無事に、とはどの範囲までであろう。他人より頭一個ぶん長身の五条が着地したベッドは、ギシギシッと嫌な音をたてて飛び上がりを受け止める。同じくらい痛々しい声をあげるのは、下敷きになった七海だ。
    「……ぅ、ぐうッ」
    悲惨な呻きに五条は、一応は手加減したんだけどな、と四つん這いの姿勢で首を捻る。反省は一瞬。五条は過去を振り返らない主義だ。
    「ななみ、早く起きろって。こっちはもう準備万端なんだけど?」
    ぬう…と不機嫌そのものの。きりりと切れ長の瞳を更に尖らせ、布団の端から出した七海は五条をぎろりと睨みつける。
    「ご、じょ……さん、さんざんな、起こし方、ですね」
    対する五条も、いつものサングラスの奥で、澄んだ瞳にいくらかの怒りを滲ませ見つめ返す。両者の高い鼻先の合間に花が散った。
    「七海。俺さ、誘ったよね? 買い物行くぞって」
    「……ぇ、あぁ……えっと」
    昨日のことだ。七海の授業終わりと、五条の任務終わりとが重なり。ばったり出会った廊下で交わした二言三言の中で、五条が身勝手に決めた予定。それを七海は、また悪い冗談だろうと思い、寝ていたわけだが。
    五条からすれば本気だったらしい。
    カーキ色のオーバーサイズアウターに、首には柄物のマフラー。寒さをおして出掛ける気満々といった格好が一目で覗え、七海は咥内でもごもごと言い訳を繰り返す。
    だってアナタ、前は準備を万全にして待っていた私を、『昨日の誘い? あんなの冗談だよ』とからかってきたじゃないですか。
    そんな文句は五条の耳に届くより、布団に吸い込まれた分量の方が多く。はやく、とは言葉で急かされ。布団を剥いでまで追い立てられる。起き抜けで寒がりな身体を両腕で抱き、楽しみにしていたと言わんばかりの五条の格好を見て、溜息を吐いた。
    「いま、着替えますから。すみません……これでも飲んで、待っていてください」
    慌てて顔を洗い。そのついでに、インスタントコーヒーと牛乳でカフェオレを作ってやる。甘党なのは見ていてわかる。スティックシュガーは四本。目の前で入れてやってマグを手渡す。五条はそれを両手で持ち、ふうふうと湯気を揺らす。先程より、機嫌を直している風な雰囲気に、知らず強張っていた肩から力が抜けた。
    美人が怒ると、その顔はよその倍以上に怖い。
    以前、約束を反故にされた経験があったとはいえ。今回わるいのは七海だ。マグに集中する五条を横目に、急ぎ服を選びとった。
    「その……この間は、悪かった、よ」
    「え?」
    パジャマにしているスウェットを脱ぎ、白い麻素材の白シャツに腕を通す。厚手のニットを被るごそごそとした音に包まれるなかでの声掛けだった。不明瞭な言葉を訊き返せば、普段は威張らせてばかりの広い肩が丸まっている様に遭遇する。
    「この間、俺、約束すっぽかしたじゃん。あの日、急に仕事いれられたんだよね。言い訳すんのもカッコ悪ぃしで、茶化した。あんときは、準備してくれてたのに……ごめん」
    とつぜん神妙な、それでいてサングラスに僅か隠れた頬や鼻先を、ほんのり桃色に染めて謝られたら悪い気はしない。どころか、とくべつ今回だけは、許してやりたくもなる。
    七海は、犬や猫といった動物がわりと好きなのだ。いまの五条は、そういった獣が怒られてしょんぼりしている様に酷似している。胸の内から鼓膜に、きゅうん…、と聞いたことのない音が届く。伏せがちな瞼と白い睫毛を見るだけで、心臓が絞られるようだ。
    「今日は……美味しい昼食を、期待してます。から」
    目を反らし、まだ怒ってますから、とは背中で語りながら仲直りのきっかけを作った。五条がぱっと顔を華やがせた気配がする。その表情を例えるなら、名前を呼ばれた犬が、首を伸ばして耳の音をピンと立てる仕草。またも七海の胸に、きゅううん、と心臓の悲鳴が聞こえる。相手は身長一九〇に迫る、未だ成長期の男。それも年上なのに。
    「おう、まっかせとけって。うんまいフレンチトーストの店、知ってっからさ」
    「また甘いもの……」
    まぁ、そういうところは、総じてサンドウィッチのような塩気のあるパン類も美味しいことが多い。五条の舌とアンテナは信じている。思わず口角がにこりと上がってしまう七海だ。
    五条は五条で、許すきっかけを提示されたことが嬉しいのだろう。にこにこと満面の笑みでカフェオレを啜る。
    「えっと……下は……」
    選んだのは黒のスキニー。五条が上下共にだぼついた――それでいて元来そなわるスタイルの良さは四肢の長さでわかる――格好なのを考慮し、隣に立つ自分は下肢をすっきり見せた方が良いだろうと踏んで。
    スウェットのズボンを脱ぐのに、じっとりとした視線を感じた。
    ような気がして、はっと後ろを振り返る。
    この場で視線を投げられる唯一の五条は、カフェオレを片手にベッド際の本棚を物色中だ。いまの視線は、幻覚だったらしい。
    上はもこもことニットで太っても、下肢が下着一枚なら流石に肌寒い。手早く吐いてしまおうと両足を通したスキニーの、狭い筒がふくらはぎを締め付ける。太腿まで上げようものなら、そのきつさはさらに強く。当然、七海は、脚をもぞもぞと左右に踏ん張り。小さなお尻を振ることで、スキニーの生地をあげていく。小刻みに、ゆらゆら。クッ…クッ…とウエスト部分を引っ張って、上向きの小尻を収めていく。
    そこでまた、視線を感じた。
    「五条さん?」
    「なにー?」
    振り返るも、男は今度、手に取った本に落としていた視線を七海に向けてくる。今まで活字に目を通していましたと言わんばかりの態度。
    本当に、そう、なのか。
    訝しむ目線を投げてみても、もう準備できたの、と訊かれるだけ。七海は一応、部屋を見回して視線の正体に想い馳せつつ、ウエストのホックをしめた。


    付き合っているのか曖昧な関係でも、ふたりで出かければデートと呼べるだろうか。寒々しい冬の、隣に立つ人物のせいで耳や頬は極端に熱くなった日から、数年が経った。


    この日も七海は、乱暴に開かれたドアの音で起こされた。場所は都内高層マンションの自室。常日頃は静謐な空気を漂わせる七海の寝室も、五条がいるだけで賑やかだ。
    「おっはよう、七海ィ。おでかけ行こうよ」
    「……、…、……」
    お一人でどうぞ。
    そう言ったつもりであったが、喉は震えるも、唇と布団とに言葉は阻まれてしまう。五条はのっそり、白い布団のうえから七海に多い被さって、金の髪に高い鼻先を差し込む。
    「つれないこと言わないでサ。新しいラグマット買いに行く約束じゃん」
    「…、…、……」
    クッションカバーも。
    新調したかったな、と思って呟くと。五条も七海を見習い瞼をとじ、新調されたクッションを脳裏に思い浮かべてくれる。
    「ふかふかの、毛足の長いカバーにしよっか。七海、クッションぎゅってしながらイくの好きだもんね。やぁらかくて、ふわっふわの方が、イくとき絶対きもちーじゃん?」
    頭の悪い言い草には腹が立つも、概ね事実。ひとつ付け足すとすれば、抱きしめてイくのに一番心地いいのは、武骨な骨としなやかな筋肉、すべやかなで肌で構成された五条の身体。ということくらいか。
    「ほらほら、起きな。朝飯は、オマエのお気にのカフェで良いよね? 作るの面倒くさいし」
    「……えぇ」
    やっとのことで瞼を薄く開けた七海を、五条の色鮮やかなスカイブルーの笑顔がお出迎え。眩しさに目を一段と細め。ぐい、と手の平で、五条の顔を横に押しやった。起き抜けに目にするのには、眩しさが過ぎたのだ。もう何年と見続けていて飽きないとはこれいかに。美人は三日で飽きる、んじゃなかったのか。
    「いだだだだ、いだい、いだいよ、だだみ」
    「アナタが上にいたら、着替えもなにも出来ないでしょう」
    押しやられた五条は、それでも嬉しそうに七海へ着替えを促した。さぁさぁと急かされるまま、まず洗面所に行って顔を洗い、歯を磨き。ベッドの上で待ち構えていた五条の元へ戻ってくる。
    ちらっと横目で、ふかふかの布団の上で胡坐をかく男の服装を確認。
    コートは、彼の背丈であって踝まで隠すほどの、スーパーロングを着用するつもりのようだ。それに見合った丈の、末広がりの裾を持つパンツのウエストは見事に引き締まって、くびれを強調している。つくづくいい男なのが悔しい。
    ではこれを、と七海が選んだのはデニム地のスキニー。それ着るなんて珍しいね、と五条が一声。振り返れば五条が七海の一挙手一投足を逃すまいと、自慢の六眼をはっきり見開いている。ここまで共に過ごしていると、熱視線はむしろ露わにするらしかった。
    「昔は、もうすこし遠慮があったかと思いますが」
    「なんの話?」
    下着一枚の下肢をねっとり見つめる男が、こてんと首を傾げた。
    その視線、その執着。その喜びよう。
    隠されていた頃は厄介だった。なにせ、男はそれらを秘すのに長けており、七海はどこから向けられる視線かわからずいたから。多少なりと、恐い思いをしたもので。それが今なら、視線の正体なぞ丸見え。受け流し方も熟知している。
    「お尻ふりふり、かわいいね」
    左右の脚を上げ下げ、太腿まで引き上げたウエストを更に持ち上げるのにお尻を振ると。五条がうっとりと甘ったれた声で呟いた。
    「見学料、いただきましょうか」
    スキニーのきつさで下着の端がめくれぬように。スキニーの中に手を差し込んで、お尻の下、太腿との境目を人差し指でなぞる。五条は口角を上げた状態でベッドから降りてくると、ジッパーとホックを締めた七海の手に、その大きな手を重ねて後ろから抱きしめてきた。
    「なにを支払えばいいの? なんだってするよ、オマエのことを見るためなら」
    「ではまず、おはようのキスを」
    素直になったのは、男の視線ばかりじゃない。七海だって。
    首だけで振り返り、すぐそこに在る顎を指先で掬い、唇を押しつける。
    ちゅっぷ、とかるい水音を響かせ、出かける準備は完了だ。この後の見学料は、これからのデートでしっかり支払ってもらおう。
    「お腹すきましたね。フレンチトースト、一口貰っても?」
    「いいよ。ホイップあんまりかかってないとこなら」
    それは、あまりにもな甘みに眉を顰める七海を想ってか。
    ホイップを一口でも多く食べたい、五条自身の願いか。
    くすくす笑って、それは実際に確かめに行こうと。七海は自分のことが大好きだと、視線で常に伝えてくる正直者を引き連れ、玄関へ向かった。
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