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    choko_bonbon

    @choko_bonbon

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    POIPOI 33

    choko_bonbon

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    気持ちを見透かす彼氏。
    見透かされても平気な彼氏。
    (良いコーヒーメーカーは、めっっっっちゃ高い)

    5さんに甘える7好きだ、と、彼を想う気持ちは日々、心の中にしんしんと募った。
    もともと自分は、感情の起伏が殆ど一定を指し示す、淡白な人間であると思っていたのに。彼を相手にすると毎度のごとく心臓は新鮮に跳ね上がり、その鼓動の響きは全身を震わせ、心身ともに五条悟を愛していることを告げて来る。どれだけポーカーフェイスを気取ったところで、あの男にかかれば一目で愛を見破られてしまうというのに困ったものだ。
    そういうこと――たとえば、他人の鼓動の速さを覗く、なんて芸当は。重要な場面でのみやっと活用する男である、との認識は甘かった様子。正面に座すれば、すぐにも彼はこちらの心拍や発汗、筋肉の仔細な動きに関するまでをつぶさに“視て”、こちらの気持ちを総て見透かしてくる。
    見透かす、とは、語弊があった。
    実際には、彼ほどの眼を持っていたところで、他人の心の動きは読めない。それは彼自身、ふかい傷を負い知ったことだ。
    だから正確には、彼は正しく“予想”する。
    仕草に滲み、生理運動に現れる多大なる気持ち。深く彼を慈しむ、この身に溢れんばかりの愛を。驕りや謙遜による過不足を除き、事実に即した心の内側をじっくりと推察して導き出すのだ。

    「五条さん、ちょっと……手つきが、いやらしいんですが」
    「そりゃあまぁ、恋人と久しぶりのデートでラブラブした日の夜だからね。僕の手だって、浮かれちゃったんだ。よし、僕から叱っておこう」
    隣に腰かけ、温かいココアを飲んでいた男が、ゆるめていた表情をしかめて美しいかんばせの眉間に皺を作る。そして、そこもまた銀に輝く眉の終わりを持ち上げることで、見目ばかりは怒った表情を作りだしてみせる。
    「こらッ!」
    その表情と叱りつける声とが向けられるのは。念願かなって朝から休日を共にできたというのに、いわゆる夜のお誘いを拒んだつれない態度の恋人より、ことを急いた彼自身の手に対して。
    「めッ、だろ。七海だって疲れてるんだ。もう少しくらい、ゆっくりさせてやれよ。まったく……オマエはいつだってそうだ。七海のことが好きなのはわかるけど、もうすこし丁寧に誘いなさい」
    大きな手の平を顔の前に持ち上げ、面と向かって彼は説教を始めた。うすくて平たく、骨ばった輪郭を持つ大きな手の平が、所在無げに肩を落とす。ように見えるのは、彼の演技の賜物か。
    「僕だって七海が好きだ。七海だって、僕のことが好きだよ? でも、急かすのはよくない。だって七海はね、ゆったりした時間を楽しんだ後で、ベッドの中でこっそり二人っきりになるのが好きなんだからさ」
    「……ちょっと、変なこと言わないでくださいよ」
    「なに、変なことだった? だけど、理由もなくただやめてって言うより、ちゃんと“どうしてか”を教えた方が、わかってもらえるからさ」
    教育者としての顔と、表情に乏しい手の平とが、同時にこちらを振り返った。便宜上、二人と認識される目に見つめられて息がつまる。一応は先輩であって教職につく者からそう言われると共に、顔を傾けるがごとく手の平が左に傾くと。幼子じみた手の平の動きに背中を押され、それもそうか、と思わされてしまう。その手腕には脱帽だ。
    「すみません。五条さんの言う通りです」
    どうして、と見つめてくる五条の手の平に、七海は自身の指先を宛がった。それから、天に向かう中指の先端を目指し、するすると、たてた爪で撫であがっていく。
    「私は……五条さんとゆっくり二人で過ごしてから、ベッドでスるのが、好きなんです」
    ほんのすこしだけ震えた手の平が、こちらの手を取るより先に、鼻先をずいいと近寄らせた。
    手の平のわずかに窪んだかたちには、じっとりと汗が滲んでいる。スン、と鼻を鳴らして香りを頂くと、同じボディソープの爽やかさが鼻腔を抜けていく。
    彼と一緒に過ごしていることを文字通り匂わせるそれに、やさしい嬉しさと、はげしい興奮を覚えてしまう。肺の奥に満ちた香りは、ただただ、自分からも同じく漂ってあるのにも関わらず、だ。
    「アナタの持ち主である五条さんと、二人きりでいることがよくわかる、アナタの匂いもするベッドに潜って……ス、る、のが、好きで、」
    親指の根元にある膨らみへキスをした後は、手の甲にも触れてみたくなり。大きな手を摑まえ、くる…と前後を反転させる。手の平と比べて骨ばった印象の強い、皮膚の薄さを越して血管の極々繊細なおうとつが素晴らしい。匂いを鼻で、柔らかさは唇で感じ取る。
    していた仕草は子供と似ているのに、実際の硬さは大人っぽい、そのギャップにも惹かれた。
    表情や嗜好は子供じみているのに、ベッドの中に限らず、恋人として相対するとすぐさま大人の色気をたっぷりと用いた顔をするあたり、まさしく五条 悟、そのもの。
    さきほど太腿を撫で擦る動きを嗜めたばかりであって、今度はこちらから、ベッドに行くことを求めてしまいそうになっている。それらは当然、見透かされていると分かっていて、熱い息を吹きかけてしまわぬよう自制するので手一杯だ。唇は思いのまま、白い皮膚に浮かぶ青緑の血管に沿って、口づけを重ねてしまうが。
    「僕も」
    「ん、はい? なんです?」
    「僕も好きだよ。七海と一緒に、ひっろ~いベッドで、ぎゅうぎゅう縮こまってお腹の奥にまで受け入れてもらうセックスするの、がさ」
    「なにもそこまでは言ってませんよ」
    ちゅ、ちゅ、と音の鳴る湿ったキスを押しつけ。愛し愛しという気持ちを前面に、ぎろりと睨みを利かせた。あからさまに際どい台詞を吐かれるのは、すこしむず痒い。それも、彼の良い声で言われたら、自分も好きだった気になってしまうだろう。
    「じゃあ七海は、どんなセックスなら好き? 僕は、七海がいてくれればそれでいい、なんて殊勝なことは言えないよ? お互い愛してるってわかって、そのぶん気持ちが良くて、七海の知らない事ぜ~んぶわかっちゃうセックスが好きかな」
    言って五条が、手の平にご執心になっていた七海の耳元へ頬を寄せた。首筋に柔らかなあたたかさが押し当てられる気配がして瞼を閉じる。鼻からそよぐ息遣いが項を撫ぜていく心地が、なんとも堪らず居住まいを正す様に尻をもぞつかせてしまった。
    「ン、は……、はい。愛しているのがわかる、セックス、は、好きですね」
    「でしょ、でしょ」
    パジャマ代わりのスウェットは、襟ぐりが大きく開いているせいで、そこにある素肌全体で五条を感じてしまう。大きな背中に、ぞわりと産毛の逆立つ感触が走った。
    「そろそろ、説明書なんかじゃなく、僕のことに集中してもらえそう?」
    「それはアナタの、ために……、っクソ」
    「クソとかいわないの。愛してる、って。好きだ、って言ってよ、七海」
    せっかく、五条のためを想って買った、カフェオレもお任せあれのコーヒーメーカーの説明書が、あと数ページで読み終わると言うのに。『明日の朝には、ミルクたっぷり砂糖マシマシ、七海の愛も特盛のカフェオレね♡』という愛しき男のおねだりに応えるのは大変困難になりそうだ。
    けれどまぁ、飲めはしないにしろ、砂糖のような甘さたっぷりに、愛をこれでもかとのせた身体と心となら。五条が望めば、すぐにも用意してやれる。喉より舌で味わう甘さはどうだろう。
    「愛していますよ、五条さん。好きなので、カフェオレは諦めて、私にして頂いても?」
    「かふぇおれ……あぁ、カフェオレね。そうだ、頼んでた。僕のために甘すぎるくらいの、七海特製ラブ盛り飲ませて、だったよね」
    「えぇ。でもアナタも、アナタの手も。もう我慢したくないのでしょう」
    本来、五条のためを想って説明書に熱中していたのだ。その熱心さを、いざ本人に向けろと言われれば、それは簡単な話。
    瞬きを、一度。
    それはそれは、ゆっくりと、時間をかけて。
    瞼を下ろすと、視界が暗くなる間際、金色が霞んで見える。
    金が微かに震えているのは、緊張と興奮に。
    吐息が零れる。
    「七海の出したので、びしょびしょになったシーツと枕カバーを変えるでしょ? でも、それでも、あのベッドはオマエの匂いでいっぱいなの大好き。ずっと潜ってたい。七海のこと抱きしめながらね」
    「じゃあ今から、どうぞ、好きなだけ抱きしめて」
    ソファに乗っていた状況を活かし、五条の長ったらしい脚、太腿に、どっかりと両足を載せ上げた。普通の人間なら、重いとか邪魔だとか文句を言ったろうが、五条に限ってそんな野暮なことは言わないし、微塵も思わない。彼が口にするのは。
    「お任せあれ」
    にっこりとした笑顔が眩しい。表情はそうして爽やかで、愛らしくて、子供じみていて。なのに抱きこむ力は強く、腫れぼったいくらいの薄桃色の唇から吐き出される息遣いはやや野性的だ。腰に巻きつき尻にかけて下っては、こちらの身体を、さて、と引き寄せる手だって大人。
    「ベッドにまで運んであげる、で、良いんだよね?」
    「どこか寄り道したいところでも?」
    「コーヒーとカフェオレ、適当に作って持って行くのもいいかなって」
    「結構です。それより、一分一秒でも早く、アナタが欲しい」
    やっとのことで説明書をローテーブルに放って、太い首筋に両腕を絡みつかせる。眉を山なりにして頬をバラ色に染める喜びようを見て、七海の目尻にも紅がさした。
    カフェインに頼るより先に、男の存在ひとつで欲は目覚めているし。寝起きの目を擦って、二人で淹れるカフェインというのも粋だ。明日の朝に飲むのを楽しみにしていよう。
    「じゃあベッドに直行だ。僕も、七海以外、な~んにもいらないし」
    さんざ鍛え上げた筋肉で、重たいはずの身体がひょいと持ち上げられる。いきなり近づいた五条の顔に見惚れ、おもわず、唇と呼ぶにはぎりぎり頬にあたる部位にキスを。ちゅ、と音をたてて唇を離した時点で恥ずかしさがやってきて、ふっと鼻先を落としてしまう。そのこめかみには、五条からもキスをおくられて心臓が高鳴った。
    「五条さん、」

    彼は正しく“予想”する。
    仕草に滲み、生理運動に現れる多大なる気持ち。深く彼を慈しむ、この身に溢れんばかりの愛を。驕りや謙遜による過不足を除き、事実に即した心の内側をじっくりと推察して導き出す。こちらがなにを求めているのかまで、正確に。

    「愛してる。大好きだよ。今夜は一晩中、伝えてあげる」
    抱き締める力が強くなる。それは、腰を抱く手。首にまわる腕。
    甘い匂いに、眩暈を憶えた。
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