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    choko_bonbon

    @choko_bonbon

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    choko_bonbon

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    キッスかますので、ごちゅうい!!

    企画参加、とっても楽しかったです~(ハッピーサマー)
    頑張って毎日書いたので、すこしでも、楽しんでいただけますように!!
    感想頂けたら、はちゃめちゃ嬉しいです
    https://marshmallow-qa.com/choko_bonbon?u

    五七版夏の企画#8「泣いてんの? なんで? 泣きてぇのは俺なんだけど? 好きな子に告白したら、フラれる前に逃げ出されるってさ。泣いていいよな?」
    耳元で甘く、口ぶりは粗雑に囁かれ。腰が抜けるかと思った。あまりの衝撃に振りかえれずにいると、背中をぐいぐいとなかへ押しこまれ、玄関扉が閉まる音を聞く。とにかく、近隣住人に怪しまれずに済んだことはありがたい。
    「五条さん、な、んでここが」
    「灰原」
    あいつめ……。
    ぐっと奥歯を噛みしめる。
    タクシーに飛び乗った後すぐにも、灰原に住所を訊き出していたんだろう。素直すぎる友人に溜息が出そうになるのを、ぐっと堪え、腰に回った腕から逃れようと身を捩る。その動きで余計に腕は力強さを増して、さらに囁きを灯す唇が顎から肩に乗ることで、拘束はなおも深まった。
    「なぁ。なんで逃げたの」
    「……私はアナタと、お付き合い出来ないからです」
    「違うね。だってオマエ、俺が一目惚れしたって伝えるのより先に、もう俺に惚れてたんだろ?」
    ぐるんと身体を回される。相変わらず器用な人だ。私の身体はあっさりと、背にした扉と、真正面にいる五条さんの身体とで閉じ込められる。
    以前に出演したドラマで、まったく同じ体勢で女性に迫るシーンがあったのを、場違いに思い出す。たしかあのときは、主人公である女性に愛の言葉を語りかける流れでの行為だった。やっている側としては、これのなにが楽しくて取り入れられたシーンなのだろうと、疑問に思ったものだ。実際にされた上での感想は、自分より体格が良く、身長もある男に所謂壁ドンとやらをされると、ときめきより恐ろしさが勝った。
    「七海。俺は、オマエのことが本気で好きだよ」
    「そうですか」
    「七海はどうしたら、俺が本気だって信じてくれる? どうしたら、オマエのこと気軽に食事に誘って、手とか繋げるようになれる?」
    前言撤回。心臓が激しく鳴ってしまうのを、自分の力では止められなかった。血流がぐんと増した煩い心臓は、耳の真横にあるようで。
    あの五条さんが、理由など無しに食事に誘いたいと言い募っている。
    あの唯我独尊が、お手てを繋ぎたいだなんて、駄々を捏ねている。
    しかもそれらは、背の高さでは優に勝っているくせに、顎を引いた上目遣いで呟かれるものだから性質が悪い。天然でやられてしまっては、お手上げだ。
    私は何としても、彼を拒まないといけないのに。
    「アナタには、もう、大切な人が、いるでしょう」
    震えないよう、必死になって声を絞り出した。五条さんはそれを聴くなり、食い気味に声を被せる。
    「は? 誰? ンな奴いねぇよ」
    迫りくる胸板を押し返すが、眼光は鋭く、鼻筋に皺を寄せて不機嫌を丸出しにされると、とてもじゃないが恐ろしかった。こういうところは、ほんとうにあの頃。高専時代に、仲間内で馬鹿をやっていたころの面影が強い。我儘が通らなければすぐに脅しをかけるような、その子供っぽさが、今となると愛おしい。
    近寄ってきた鼻先から、すこし顔を反らし、逃げを試みておく。噛みつかれたらたまらない。
    「アナタには、もう、夏油さんが、いるでしょう?」
    もう、と言うか。まだ、と言うか。それでも彼は追撃を重ねてくる。
    「ハ? は? は? なに言ってんだよ。傑は友達だろ? ただの相方だ。めちゃくちゃ気の合う奴だけど、付き合いたい意味での好きとは全然違う」
    激しい反論によって、彼の呼気に頬の皮膚をくすぐられた。心臓は依然として痛み、五条さんの愛に溺れたいと告げる。たとえドッキリだって、冗談だって、構わないからと。
    あとで傷つくことになっても良い。この世界だって、人間はいつ死ぬか分かったもんじゃない。ならば幸せに対して貪欲であれと本能が叫ぶ。
    その幸せには、相手を想っての拒絶も含まれるからこそ、五条さんを強く否定できる。
    「とにかく、私、アナタの言葉は、どうしたって信じられません。お引き取りください」
    「オマエって……思ってたより頑固だな」
    やれやれと呆れた口ぶりですら心地良いとは、すっかり五条さんに傾倒し、浸食されているらしい。それが前世からのことであれば、自分ではどうすることも出来なくて。
    彼が私に飽きて帰ってくれることを切に願う。
    「わーったよ。わかった。降参」
    とうとう願いは成就された。それまで顔の横につかれていた二本の腕がぱっと離れ、両手の平がふりふり振られる。簡易的な拘束から逃れられた寂しさより、今は達成感の方が強い。ここに着いたときとは別の意味で力が抜けた。
    そう、ほっと短い息を着いた、その隙を狙い撃つとは。やはり五条さんの戦闘センスは鈍っていなかった模様である。
    「ななみ」
    ゆっくりと名前を呼ばれ、弛緩した面持ちで見上げた彼の顔が。
    鼻先が。
    なにより唇が。
    ふっと私の顔に影を作り、羽根のような軽さで触れ。
    ちゅ。可愛い音がした。こんな、むさ苦しい男ふたりの間で。
    「……え?」
    「もっかいするから。くち、ちょっと開けてろ」
    脳が現状を理解するのにかかる時間は、たっぷり三秒ほど。その間にも五条さんの唇は、こちらの唇に柔らかく触れて、角度を変えて食み。乾いていた表面を、生温く湿度の高い強さがなぞっていく。
    彼の指にルージュを拭われたときの力強さが蘇る。
    「ぁ……」
    薄く開いていた唇の袷より、表面をなぞっていったものが侵入を試みた。前世で憶えのある感覚ながら、今世では初めて経験する気持ち良さに、少し舌を入られただけで腰が抜けた。
    「ッ、ン……」
    「っと、あっぶね」
    腰を掴まれ、膝から頽れる事態は避けられた。全身が心臓になってしまった。ばくばくと、手はもちろん足の先までもが鋭敏になるほど鳴り響いている。
    「平気か? 七海? おーい」
    「……いまアナタ、私に、キス、しま、した?」
    「したよ」
    まるで悪びれもせずに言い放たれ、文句を言う腹積もりであった出鼻を挫かれる。混乱を極める私をみかねた五条さんが、後頭部に手をやって、肩に頭を預けさせてくれた。
    額を当てた肩口がやさしく上下している。彼の呼吸は安定しているようだ。重なりあった胸板からは、爆発しそうな鼓動の強さが伝わるが。
    「これでわかったろ。なぁ、七海」
    ぽん、ぽん。幼子をあやす仕草など、五条さんがしてくれるなんて。思わず、額を擦りつけて甘えてしまう。
    「七海、もっかいしようぜ」
    「嫌ですよ。私たち、付き合っているわけでは無いんですから」
    口では強気に。心だって、彼の幸せを願って離れようと決心するのに。そのほかの全身が、彼を受け入れてしまう。前世から虜になっていることを、五条さんに見せつけることになろうと。
    「七海、俺が好きなのはオマエだよ。だってこんな、カメラもマイクもないところで告白して、なんになると思う? 七海に言いたいから、オマエに信じてほしいから言ってるんだ」
    こっちも、オマエのため。
    優しく言い含める五条さんの声が好きだ。なにもかもを投げ出したって足りない。アナタに会えるのなら。アナタに愛してもらえるのなら。
    「七海、こっち向いて」
    泣き出す一歩手前で、塩辛かった咥内に。いまなお重度の甘党である五条さんの舌が入り込むと、ひとさじの甘さが加えられる。甘みにコクを足すための隠し味は塩。キスの味はすぐにも甘美な味わいにすり替わり。ずっとずっと求めてきた暖かさに、舌から蕩けてしまうのではと心配になった。
    「ン、ぅ、ん……ッ、」
    歯列をなぞられた。奥底で眠っていた舌をつつかれ、絡め合おうと誘われる。
    いったい誰とどんな付き合いを重ねて、この人はキスを上達させたのだろう。醜い嫉妬を餌に燃え上がる心そのまま、五条さんの太い首に縋りついた。互いの唾液を混ぜ合わせて飲むと、彼色にすっかり染められた胃が喜びに打ち震え。じんじんと下腹に熱が蓄積する。腕に力をかければかけるほど、五条さんの勢いはすさまじく。舌根まで舐めしゃぶられる。
    キスでずり下がり落ちたサングラス越しに、空色の瞳が覗く。長い睫毛の先、閃光的な瞬きを放って真直ぐに射抜く視線が、興奮を如実に伝える。
    「ぁ、はは。目は口ほどに物を言うって、ほんと、なんだな」
    「、ッぁ……ぁ、え?」
    ちゅるりと抜け出した舌で、それぞれ濡れた唇を舐める。見つめあえば、頬を両の手で捕まえられた。
    「ほら。『私を食べて』って自分で言ってくる、甘いお菓子。七海はいま、それと一緒」
    「あれは……クッキーの表面に、そう書いてあったのだと思いますけれど」
    「七海のデコにも書いてあるよ。五条さんが好き、とか。アナタに食べて欲しい、とか。あと、付き合ってあげても良いよ……ってさ」
    それらの言葉ひとつひとつに返事をしているつもりか。五条さんの唇が額に、ぷちゅ、ぷちゅ、とくっついてまわる。そんな恥ずかしいことを、恋人以前の人間にしてくる人だったとは到底考えられない。これでは、私達はすでに付き合っている雰囲気で。
    「じゃあ私は、言葉での返事をしなくて結構ですね」
    「え、やだよ。言えって。オマエも俺のこと好きだろ? 付き合うだろ?」
    「私の顔でも見ていたらどうです?」
    はやいところ五条さんには、自身の本心を見極めてもらわねば。そのためには、もう少しばかりはご飯を一緒にするのも、仕方のないこと。なのかもしれない。本能と理性との狭間で、矛盾する感情でめちゃくちゃだ。
    ふん、と反らしてみせた顔を、五条さんがにこにこと嬉しそうに見つめているのが目の端でわかる。ままならないのは、いつも同じ。
    「じゃあ……七海の事、ずっと見てるしかねぇな」
    前髪をひとすくい。くるくると指に巻かれ、ふっと離される。
    そこに漂う空気は、高専時代の彼とも、最強の男のそれとも、また少し違くて。それに見惚れている合間にも唇を塞がれ、恋人じゃないのに、という反論ごと脳を掻き混ぜられて、有耶無耶になった。



    「悟。いま、何時だっけ?」
    「ん~? 何時かな。たしか、夜中だろ」
    「そうだね。いくらなんでも、怒るよ?」
    「まっさか。傑ほどの菩薩顔ほかにいねぇんだからさ、怒るとか無理すんなって」
    今すぐにでも切ってやろうか。
    思うだけで、あまりにも嬉しそうな声に免じて話を聞いてやるあたり、私は本当に菩薩なのかもしれない。そろそろ宗教でも開こうかな。
    水を向けると、ぺらぺらと上機嫌で喋り出す悟。どうやら数ヵ月間かけてやっと、意中のあの子と交際に発展したらしい。これまでさんざお忍びで食事のできる店を考えてやって、その都度あれが駄目でこれが駄目でと泣き言を聞かされた日々が。やっと終わるのかと思うと清々する。
    「つか、傑のことが好きなんだろうとか、マジでオッエ~~なこと言い出した時は、どうしようかと思ったんだけど?」
    「それ、私に非はないよね? 君の信用の無さは自業自得だろ」
    文句を言う割に、悟はけたけたと笑ったのち格別の感謝を柄にもなく述べてくる。貴重な礼を丁重に受け取って、とりあえず次の現場終わりには、またあの焼き肉屋へ、四人での来店を予約することを礼に欲した。無論、悟の奢りで。
    君が幸せなら、あの子も幸せだろうさ。
    まったく、いつまでも手のかかる親友は疲れるなと。
    二度目となるふたりの恋が、今度はふたりが年老いるまで続くことを願い。惚気の続きそうな気配を察して、通話を切った。
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