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    otoko_ume___uma

    @otoko_ume___uma
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    otoko_ume___uma

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    番外編「Twitter」⚠︎︎この小説には、天気雨の実際のフォロワーが登場しています。また、小説内では敬称略をしています。実際にはない距離感が存在するので解釈違いならスルーお願いします。

    参加者様
    ・夢乃様
    ・夢迷ななし様
    ・能面様
    ・無色様

    人の賑わう青い楽屋風の部屋。年齢問わず、大勢の者がいる。そこには中学生から社会人まで、年齢に統一性は無かった。会話をしている者から、キャンバスを立てている者までいる。
    この場所は一部の者達により、通称、Twitterと呼ばれている。
    「天気雨さん、どうしたんですか?」その中の1人が天気雨と呼ばれる者に問いかけた。
    「いやぁ、困ったね」
    その問いに、その者は眉尻を下げ、どこか諦めたような、そんな表情をしてみせた。
    その者の名は天気雨。頬には大きな紅葉型。赤く腫れた頬はフォロワーの視線を集める。
    「実は、Apple Pencilに家出されたんです」

    いや、それは顔をみれば分かりますけどね、と能面は苦笑いした。
    能面と呼ばれる、彼女は現在93人ものフォロワーを誇るカリスマツイッタラーだ。その美声とその美しい絵は多くの者を引き付け、うたのおねえさんと言う称号を恣(ほしいまま)にしている。
    改めて、能面さんに向き直り、天気雨は背筋を伸ばして、
    「いやー、情けないです、僕がちゃんと使ってやれなかったのが原因ですよ」
    「ちゃんと…ね――
    能面はガラス細工のような瞳を細め、天気雨の背後に視線を向けた。
    つられて、天気雨も振り返る。
    その先にはピンク髪の少年が居た。
    「ステン!」だめだ、ここは来ちゃいけないと天気雨はピンク髪の少年に駆け寄った。天気雨の普段のどんな行動よりも早い。特にペンを持つ早さには。
    「えー、だって小説描いてくれないんだもの」
    ぎくり、天気雨の肌が粟立った。

    「もしかして、ステンくんに嫉妬しちゃったんじゃないですかね?」髪をいじり、こちらに歩み寄りながら、その者は疑問を口にした。
    ――無色さんだ。
    無色とは、(天気雨が勝手に)仲がいいと思っている相互の1人だ。これまた、フォロワー152を誇る、カリスマツイッタラーだ。凄まじい戦闘力。
    「それは、ありえますね、」
    能面も同意見のようで、無色と頷き合っている。

    「お2人揃って…ありえません、こんな子供に嫉妬とか」
    事実、ステンは13歳である。我が子であるステンにそんな劣情は抱かない。
    Apple Pencilには割と優しくしていたはずだ。この前だって――
    それは、まだまだ寒さの続く12月のこと――
    「天気雨さん、充電まだ?」
    Apple Pencilは、コピックを握る天気雨の肩を揺すった。 充電が足りず、お腹が空いている。
    「はい、これ」
    天気雨は、手ずから長方形の焼き菓子を取り出した。
    「なにこれ?」
    「カロリーメイトだよ」
    それなら充電もいっぱいになるよ、天気雨はApple Pencilの拘束から離れ、再びコピックを握ったのだった。

    ――意外と優しくしてなかった?
    「おや?心当たりでもありました?」
    天気雨の表情の変化に気がついたのか、無色は能面との会話を止めて顔を覗き込んだ。天気雨と目が合う。
    「ありましたね…」
    天気雨は力なく項垂れた。
    「「それなら、謝るしかないですよ!」」
    2人の声が同時に重なり、Twitter内に反響した。
    フォロワー達の視線が3人に集まる。
    「へぇ、面白そうな事話してますね」

    ◇◇◇

    それは、2021年7月の日夏の日のこと、
    Apple Pencilは胸を躍らせていた
    (新たな持ち主様に出会える!)
    宅配員がインターホンを押す音がダンボール越しに聞こえる。
    前日、ダンボールの中で、どれだけ持ち主の想像をしたことか、Apple Pencilは通気口から息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
    「はーい」遠くから声が聞こえた。持ち主の声のようだ。
    宅配員に応じて、ハンコをしたようだ。ダンボールが揺れ初めた。宅配員の手慣れた持ち方と違い、持ち主の持ち方は不慣れのようだ。

    ふと、軽い音と共に揺れが止まる。ダンボールが床に置かれただろうか。そして、ダンボールが切られ、空いた隙間から一人の人間が顔を見せた。目が合うと、その人間は口を開いた。
    「初めまして、よろしく」
    「はい、よろしくお願いします!」
    高鳴る鼓動を無視して、Apple Pencilは新たな主に返事をした。

    ◇◇◇

    「そんなこともあったっけ…」Apple Pencilは小さく口の中で呟いた。
    そんな彼の瞳は寂しげな光を宿している。

    憧れた外の世界。気がつけばApple Pencilは天気雨の自宅から脱出していた。
    最初こそ、楽しかった。
    だが、生まれてから工場と持ち主の自宅以外の世界をことの無いApple Pencilには無謀な事だった。
    時折吹き付ける、路地裏特有の強烈な風がApple Pencilの髪を靡かせる。
    「……」
    Apple Pencilの足が震えた。Tシャツと半ズボンの格好ならば当たり前だ。
    こつん、肩と肩がぶつかる感触。
    「ご、ごめんなさい」Apple Pencilは後から気がつく、割れた腹筋。服越しからでも伝わる胸板。なにより、首筋に刺青。
    「もちろん落とし前、つけてくれるよな?」

    ◇◇◇

    ――へぇ、面白そうな事話してますね

    声の主は、腕を組んでこちらを見ていた。
    声の主と視線が合う。
    「夢乃さん!こんにちは」
    返事の代わりにその者はこちらを見て微笑んだ。
    夢乃さんもまた、天気雨の数少ない相互の一人である。ほのぼのとした絵柄と人柄が、皆のTLにオアシスを建設している。
    「ところで、Apple Pencilさんが見つからないんですよね?それなら今すぐ探しに行きましょう」


    外へと繋がる扉を開けると、冬の凍りつくような風が4人へ吹き付けた。
    それぞれ「さむい」や「帰りたい」等口々に感想を漏らしている。
    ここは都心のど真ん中、――決して寒くない訳では無いが――ほとんど雪の降らないこの地に今日はすぐにも溶けてしまいそうな霜が降りていた。
    「実は、Apple Pencilがいる場所は検討がついてます。」
    掲示板に駆け寄り、地図にそれぞれ指を指して言った。冷気に晒されさらに肥大化した紅葉型を抑える手は離さずに。
    その1
    ――Instagram
    その2
    ――Facebook
    その3
    ――poipiku

    説明が終わると、3人共どうやら思案していた様子で、3人の中で無色が口を開いた。
    「理由とかってあるんですか?」
    「特に、ないです。何となく」

    「そんなんじゃ見つからないですって!」
    「勘なんか信用出来ないです!!」
    天気雨の返答に、2人から不満の声が届いた。能面は前のめりに、夢乃はどこか失望したように。それを見ている無色は苦笑い。口角が引き攣っている。

    まぁ、まぁ、と無色は口を開いた。
    「探す場所がないなら、とりあえず探してみません?」
    「しょうがない」や、「わかりました」等の返事が渋々という様子で絞り出された。

    「それじゃあ、ダメもとで行ってみましょう」

    その1
    ――Instagram
    その扉を開けると、4人に真夏のような熱風が吹き付けた。
    そこには沢山の大学生が居た。それぞれが異性と手を繋いでいたりだとか、ネズミのカチューシャをしていたりだとか、その光景に天気雨は目眩を覚えた。
    だけど帰る訳には行かない。近くにいた青年達に尋ねてみる。
    「Apple Pencil?そんなん知らない。聞いたこともない笑」
    「りんご?笑」
    「よく分からんけど、ここにはないんじゃね?」
    「知らん。通話してくれないならあっちいって」

    ――会話にならない!!
    4人は、勢いよくInstagramの扉を閉めたのだった。

    その2
    ――Facebook
    回転する扉をくぐると、そこは壮観だった。
    吹き抜けた天井、壁にそって様々な本が立ち並ぶ。
    それは、遠目で見ればの話だが。
    「すごい!」能面はすぐさま本棚に駆け寄り本をとった。表紙を見る。その瞬間すぐに能面の期待に満ちた表情は削ぎ落とされた。
    その本にはこう書いてある。
    日本語の話し方

    隣の本もまたくだらないタイトルだ。風呂掃除のやり方。味噌汁の作り方。お金の使い方。
    ――まるで中身がない
    「おや、新しい方ですか?」
    そうしていると、1人の男性が声をかけてきた。どうやらココの住人のようだ。ぶじょうヒゲを生やし、丸眼鏡をかけている。
    「ああ、いえ探しものを」
    「いえ、強がらなくていいんです、みんな歓迎してますから」

    「へ?」男の発言が妙に引っかかる。気が付くと、4人の周りを人が囲んでいた。こちらを見て、恍惚な表情をして「おいで」「こんにちは」など好き好きに言葉をかけている。

    「「「「嫌だァー!!!」」」」


    その3…?

    はぁはぁ、4人分の荒い息遣いが路地に響く。
    「なんなんだあのSNS…」
    「逃げるのに苦労しました…」
    Facebookの追っ手から逃げるのには苦労した。お陰でこの痛いほどの寒気を忘れられたが。
    床に落ちた行き場のない視線を上に持ち上げる。そうすれば、そこには誰かが居た。誰かをおんぶして、こっちに向かってくる。
    どこかで見覚えのある…
    「夢迷さん…?」
    「天気雨さん、こんにちは」
    「その背負ってる人は…?」
    天気雨の目は見開かれた。そこには眠りこけたApplePencilがいた。ぼさぼさになった白髪が、家出の事実を語っている。
    「彼、チンピラに襲われかけてたんです。」夢迷は語る。
    チンピラにぶつかってしまい、殴られるところだった。それを見かけた夢迷さんが皆殴り倒してしまったのこと。
    「よかった…!!ApplePencilが無事で」

    「起きたらApplePencilさんに優しくしてあげてくださいよ。」
    そうして夢迷はApplePencilを肩からおろした。代わりに天気雨の手元に移った。
    ApplePencilのぼさぼさの髪を撫でながら言ったのだった。
    「わかりましたよ」

    その後、目覚めたApplePencilと天気雨の痴話喧嘩があるとかないとか――
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