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    otoko_ume___uma

    @otoko_ume___uma
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    otoko_ume___uma

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    星ノ鳥籠――昔昔、あるところにピンクの狼達が居ました。
    彼らは、みんなでピンク色の毛色とオレンジ色の瞳をしていました。
    ある日、その中で白い狼が産まれました。目の色も黄色で、周りからは気味悪がられていました。だけど、白い狼に1人だけ優しくしてくれるピンクの狼がいました。その2人は意気投合し、親友となります。
    だけど周りはその状況を良くは思いませんでした。やがて、2人へのいじめが始まります。わざと目の前で悪口を言ったり、食べ物を横取りしました。
    それに対して2人は怒りを抑えきれなくなりました。ついに、2人の狼は、嫌がらせをしてきたピンクの狼を殺してしまいます。
    ピンクの狼達はそれに危機感を覚え始めます。
    ピンクの狼達は2人を引き離すことにします。どうやっても2人が会えないように。
    そうしたら、なんと、2人とも自ら死ぬことを選んだのです。
    死ぬ際に、2人は言いました。「もう会えないなら死ぬしかない」と。
    もう二人の関係は友達を超えていました。もはや恋人でもありません。化け物じみた、なにかだったのです。

    ◇◇◇

    しゃりと、小さな咀嚼音が人気の疎かな路地に響いた。
    「今日も沢山りんご貰っちゃったなぁ」
    もらった、と言えば聞こえがいいが、実際はくすねてきた林檎を咀嚼しながらステンは、脚を再び動かした。
    吐く息は白く、鼻先が赤いが、ステンにはなんてことはない。
    なんだか今日は気分がいい。鼻歌混じりのスキップから機嫌の良さが伺える。
    るんるん、鼻歌混じりのスキップは突然途切れた。
    どん、という音と共にステンの身体が重力に従って地面が近くなっていく。ステンの手は空中のりんごに伸ばされた。しかし抵抗虚しく、どさり、と音がした。
    「あだっ」

    つま先が欠けた石畳に引っかかったのだ。
    凍りそうな石畳からすぐに起き上がり、刹那、鮮やかな手つきで服から土埃を払った。
    すぐに石畳に視線をやると、ひび割れたりんごが目に入った。隙間から果汁が染み出ている。
    こうなるともうこのリンゴはダメだろう。
    「うわぁ……」
    ステンは膝を落とし、項垂れた。人からくすねたリンゴだと言うのに、なんともお調子者な人間である。
    そうして、伏せられた視界を見慣れない細長いものが遮った。
    「僕、これやるよ」
    鈴のなるような声、好奇心に振り返ると、そこには美麗な少年の姿があった。色素の薄い白髪は、路地の隙間から差し込む太陽に反射して銀色に輝いている。
    「これは?」
    「チーズカマボコって言うんだ。」
    「なんだそれ…」
    聞きなれない単語に顔を顰めた。それを見てか白髪の少年は細長いなにかを宙に放り投げ、一閃、あっという間にチーズカマボコは細かく薄切りされてステンの手元に戻ってきた。棒だったものをよく見ると、肌色、時々橙色の斑点がある。
    「食べてみてくれ」
    なんだか趣旨がずれている気がするが、ステンはチーズカマボコを口にした。
    弾力のある食感と、塩気と酸味が舌に広がる。

    「なんだこれ……」
    「チーズカマボコだよ」

    「あ、いやそうじゃなくて」
    コホン、咳払いを1つするとステンは立ち上がった。
    「まぁ、そのありがとうございます、美味しかったです」
    白髪の少年は一瞬きょとんとした顔をしてから、すぐに直った。
    「うん、じゃあまたね」
    その言葉が、どこか引っかかった気がするが気のせいだろう。それを頭の隅に追いやった。
    そう、この夕陽が消えてしまう前に。



    「ただいまー」
    そう言いながら扉を押すと、扉の奥には4人の人間がいた。皆がこちらを見て微笑み、「おかえり」と返した。ただし、一人を除いては。
    さらさらのブロンドヘアー。その碧眼を吊り上げてこちらを見る。
    「こら、ちゃんと優しくしてあげなさい」
    牧師が注意すると、碧眼はますます口を尖らせてこちらを指さし言う。
    「だって、ピンク髪じゃん。」
    ステンの目は伏せられた。それに続いて、その他の人間の目も伏せられる。誰も触れてはいけない話題、いつの間にかそんな空気ができていた。
    「ちょっと、外に出ようか、」
    牧師は碧眼の襟首を掴んで歩き出した。どうせ、建前な癖に。
    「バーカ!」
    負け惜しみに言った、そんな碧眼の言葉が、凍りついた空気をさらに一段と冷えさせた。

    ◇◇◇

    2人は孤児院の玄関扉を閉めた。もう夜のようで、夕陽の上からちらりと、星空が覗いている。
    冬らしく、冷たい空気だ。だけど孤児院内よりはマシな寒さだろう。
    牧師は口を開いた。
    「何度も言ったでしょう。ピンク髪なんて呼び方をしてはいけません。」彼にもステンという名前があるのですよ、吐く息が白いが、牧師は構わず続けた。
    「差別も何も、ピンク髪はこの国を脅かしたじゃん」
    「脅かしてなんかいません。ステンは無害です。」
    失望したとばかりに碧眼の双眸が眇られた。
    「じゃあ、嘘ついたんだね、父さん」
    慌てて牧師は口を開く。
    「嘘なんかついてな――」
    「ああ、それは嘘さ」
    牧師の声と重なって聞き覚えのない声が2人に重なる。声のした方へ振り返るとそこには白髪の少年の姿があった。全身が黒で統一された謎の服、手には黒手袋。見たことの無い衣服に2人は戸惑う。白髪と相まって、とても不気味な雰囲気を放っている。
    「僕は、君達じゃなくてこの先に用があるんだ。」

    ◇◇◇

    ステンは記憶喪失だ。
    牧師によると、最初は路地裏で倒れていた。足の骨も折れていて、これはまずいと孤児院で匿うことにしたらしい。ここに来たばかりの時はこの国の言葉さえわからなかった。それでも居場所をくれた牧師には感謝してもしきれない。
    それでも、
    ――牧師も心の底では僕を軽蔑しているのだろうか。

    碧眼が去っても呪いのように場の空気は凍っている。
    皆、ステンと目を合わせず床を見つめていた。

    きぃ

    扉の音で全員の視線は持ち上げられた。
    呪いのようなこの空気が終わるのだと。そんな視線で。
    だけど、ステンにとってはどうでもいい。どうせまた建前を言うに決まっている。

    扉から入ってきたのは白髪の少年の姿だった。
    見慣れない黒で統一された服。
    白髪と目が合う。
    「どうして、君が、ここにいるの?」
    「君を助けに来たからだ」
    おもむろに白髪は片手を上げて、指を鳴らした。
    パチン、指が鳴る音が鳴り響く。
    白髪が指を鳴らした事で特段何かが起こる訳では無い。
    だけど――
    『僕が殺すんだ』



    どさり、何かが倒れる音がした。牧師が血を流し倒れている。
    一泊、間を置いて、理解が追いついた者達の表情は怒りと悲しみで満たされる。
    鼓膜を刺すような悲鳴も構わず白髪は言った
    「僕はメル、今日から君たちは殺し屋だ」

    なんだよ……それ、碧眼は地の割れるような低い声で唸る。
    「ふざけんな!お前!父さんに何をした!」
    碧眼は白髪に駆け寄り蹴りに乗せて悲憤をぶつけた。
    それに対して白髪は回し蹴りを躱し、足首を掴むことで対処した。
    ふざけるも何も、そのまま口を開く。
    「これは、彼、ヒイラギが望んだことだ」
    さらに何かを呟いた気がしたが声はあまりに小さく、何を言ってるかまでは聞こえなかった。
    「いや、やめておこう」
    少年は掴んだ足首を手放した。少しの勢いと一緒に。どごん、床に肉を打ち付ける鈍い音が響く。
    「嘘だ!そんな適当な嘘よくも…」
    碧眼はされども泣き叫んだ。痛みなんてものは碧眼の心の痛みによって掻き消えてしまったのかもしれない。床に鼻水か涙か分からない水溜まりができている。

    「いいや、嘘じゃないよ」
    これは譲れない、とばかりに白髪はきっぱりと言った。しかし、瞳は少しばかり伏せられていた。まるでこちらを憐れむように。そんな白髪は碧眼にとって怒りの対象でしかなかった。
    「俺を憐れむな!」
    吠える。暴力が効かないなら言葉で、
    「憐れんでなどいない」
    今度こそ白髪はきっぱりと返した。その琥珀の瞳を鋭くする。
    じゃあ、また明日、そう言って白髪は踵を返した。白髪の背中が遠くなる。

    「嘘だ!父さんは言ってくれた!なのになのにお前如きに何がわかるんだよぉぉぉ……」
    遠くなる背中、哀れな洟垂れの叫び声がただ、残響した。
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