昼過ぎの賑やかな街を目的地に向かってまっすぐ進む。人混みを歩くのには随分慣れたが、だからといってそれが好きなわけではない。できることならいつも犬の散歩をする時に通る静かで落ち着いた緑の多い場所でのんびりと時間を忘れて過ごしていたかった。
ポケットに入れていたスマホが震えたのを感じ、俺はそれを手に取り画面を確認した。新着メッセージが一件。パスコードを入力してロックを解除し、すぐに内容を確認する。
『買い忘れたものがあるからスーパーに行ってくる。すぐ戻るけど、もしすれ違いになっちゃったら勝手に入ってていいよ』
顔文字つきのメッセージに素早く返事を送り足を早めた。もう片手では数えられないくらい訪れているその場所への道のりは地図を見なくても頭に入っている。
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