ユ〜レイ伊作と記憶なし留三郎アパートの外観
ボロとかじゃない普通のアパート
〜どんがらがっしゃ〜ん〜
風呂上がり留三郎 バスタオルを肩からかけて歯を磨いている。狭いリビングに置かれたシングルベッドの前で立ち尽くす。
留三郎の眼下に広がる光景は、ベッド横の本棚までどッ散らかしてベッドの上にひっくり返って転がってる伊作(カオス)
「は……?」
「とっ……留三郎じゃないか〜〜〜!!!」
タイトル
【自称旧友の幽霊に取り憑かれた】
部屋着の留三郎(現代)と忍術学園の忍び装束の伊作(霊)は、留三郎の部屋のラグの上に座り向かい合っていた。
「で…誰が信じるんだよそんな話……前世って…」
「信じてよ留三郎!本当に覚えていないの…?」
〜輝かしい青春の日々〜
『う〜〜〜ん😟』
「大体な〜、幽霊ったって触れるし(チョン)
散らかすし(指さし)……」
「でもほら、足がないよ」
「……………………」
暗転
「怖っ!!!!!!!!!」
「(こっちのセリフだろ…)」
「じゃあ、僕、500年近く成仏できてないってこと?😭」
「推測だけどな……話聞く限り俺達が生きてたのは多分このあたり…ヤバイな……」
机の上 雑に広げたタブレットやパソコンで歴史年表や地図を表示している。
留三郎は、タブレット上の年表に指を滑らせ、1570年あたり "永禄"の文字をなぞった。
「(……俺達ってなんだよ なんで受け入れてるんだ……)😑」
「わあ…すごい…」
「こう見るとおまえ…すごい昔から来たんだな」
「途方もないよね」
電子機器を物珍しそうに眺める伊作
その横顔を眺める留三郎
なぜだか、嘘はついていないのだろうと思った
「それで、僕らがいたのは忍術学園っていうところで…場所は…わからない……」
「地形は経年変化するからな」
当時のものと思われる地図をネットから引っ張ってきて見せたが、場所の特定には至らなかった。
「で、僕は32歳で死んだから……」
伊作は指を折って、覚えたばかりの「西暦」を数える。
「え、早」
「君含めて、みんな僕より先に死んだって噂じゃないか」
「あ、そうなの?」
「そうだよ」
「戦国時代だもんな…そんなもんか…」
「大往生だよ、僕」
暗転
「……で、何故ついてくる」
23時近く アパートの鍵を締め階段を降りる留三郎
その後ろを伊作はついて歩いた(実際は足がないので歩いていない)
「ああ、これなんだけどねっ」
留三郎のそばからぴゅ〜っと離れる伊作
5Mくらい行ったところで伊作の体が止まる
ぐぐぐ…「これ以上は離れられないっぽい…」
「……」
付き纏われるのか。といった様子の留三郎
非現実的なことが起こりすぎて、ややげんなりしている。ただ、なぜだかこの現状を素直に受け入れている自分もいる。
「す、すまない…」
「まあ…気にするな…」
伊作の隣を通って追い越した留三郎の顔を
伊作は見つめていた
夜のコンビニ
「いらっしゃいませー」〜🎶🎶
バイトのゆるい声と、自動ドアの音楽が鳴る
入り口すぐそばに並ぶ医薬品 伊作は釘付け
「留三郎 ここなに?」
「はあ?コンビニ…あー……便利屋だ便利屋
ここに来れば大抵のものは揃う」
「へえ…」
さらに足をすすめ、所狭しと並ぶカラフルな商品と、自分の背丈より高い陳列棚に圧倒される伊作
「伊作もなんか食うか?」
「この体 お腹はすかないみたい」
「そうか…まあでも…」
伊作の頭からつま先を見る
すごく痩せているように見える(幽霊だから?)
「食ったほうがいいな」
少しかがんで陳列棚を吟味する留三郎
「何が好きなんだ?やっぱ和食?」
「食べれるものならなんでも」
「さすが忍者」
「留三郎だって」ふふ
あ〜これうまいんだよな。とかブツブツ言いながら買い物する留三郎
留三郎を見ながらヒソヒソするカップルが横切る。他の人には伊作の姿は見えないので、留三郎が凄まじい独り言を喋っているように見えている。
「……………(やべえ 通報される…)」
商品を抱えそそくさとレジへ行く留三郎
「?」
ピピっとスマホで決済する留三郎
やはりそれを怪訝な目で見る伊作
通貨になる鉄の板 自動で開く扉
夜なのに明るい屋外
夜の住宅街 二人スナックを齧りながら歩く
「美味しい!!!????!?!?!」
キーンとなりそうなほどに大きな伊作の声が響く
留三郎はすでに冷静で、こいつの声が他人には聞こえていなくてよかった、と思った
「唐揚げ棒ってまじでヤバイよな」
暗転
【こいつと過ごして わかったことがある】
「嘘みたいに早い!この箱どうやって動いてるの!?」
ジェスチャーで🤫ってする留三郎
「(まあ…誰にも聞こえてないけど…)」
何知らぬ顔の乗客たち
留三郎は電車の吊革を掴んでいる
【まず こいつは 世の中のことを何も知らない】
スマホ!?なにそれよく見せて!
絆創膏!?これ!?便利な時代になったね〜
【そのくせ東洋医学(厳密にはそれらの前身となる知識)や、当時の極めて限定的な事物に関しては、やけに詳しかった】
留三郎に話している 回想
留三郎はフ〜ンって感じたまにすげえ〜って
電車から降りてエスカレーターに乗る留三郎
潮江•浜•次屋方面の看板を見て立ち止まる伊作
人々は、伊作をすり抜けて歩く
「おい 伊作」
「ああっごめん」
【俺以外には見えていない 聞こえてない
俺以外は 伊作にはさわれないようだ】
暗転
大学構内 人の少ないベンチを選んで座る
「わあ、甘い…い、痛い…」ぱちぱち
清涼飲料水の缶を持つ伊作
「(でもこいつは、この世のものを触れる……)」ご都合だ…
「夏って炭酸飲みたくなるよなあ」
「こんな味初めて」
「嫌い?」
「ううん すき」
すごいすごい と、そう笑う伊作の顔はいつもより幼く見えた
【つまるところ こいつの言う事はすべて本当なのだろう。
善法寺伊作は、当時を生きた幽霊で
俺の前世は、忍者なのだと思う】
「(これ、俺以外から見ると缶が浮いてるように見えてる…?ヤバ…)」
「それにしても、まさか留三郎が医学生だなんて」
「まさか、は余計だ」
紙パックのジュースを飲みながらムッとする
↑ニ浪済で留三浪になるところだった
「兄弟がみんな医者なんだよ」
「へえ!お兄さん、二人ともそうなんだ!」
ハッ とする留三郎
「(兄二人……マジで怖いって…)」教えてねえよ…」
紙パックのストローをずずっと吸う
【医者を志した本当のきっかけは なんだっけ】
留三郎幼少期の回想
実家でなんの気なしにテレビを見る留三郎 12歳ぐらい?NHKの特集で、戦場医として働く日本人のドキュメンタリー
【父親が録画していた野戦病院のドキュメンタリー 『』みたいだって、思ったんじゃなかったか】
脳内の映像が乱れる
【『』ってなんだっけ】_____ボト
「んあ?」
留三郎頭に落ちてくるハトのフン
「あ……」
口を開けている伊作
「「不運だ……」」
夜 バイト帰りだが別に伝わらなくていい
出会った日みたいに夜の住宅街を二人歩く
「その服」
「うん?」
「思ったより夜に紛れるんだな」
コンクリートの上の スニーカーの足音
「そうかも」
「ふつう忍者といえば黒か婚じゃねえ…?イメージだけど」
「就職したお城の隊服は黒だったよ 辞めちゃったけど」
「辞めたのか」
「ふふ やめた」
「死んだときの姿で出てくるわけじゃないんだな だってほら それは、忍術学園の制服なわけだろ?」
「ああ う〜ん これはね、金楽寺の和尚が言っていたことだけど…」
「(誰…)」
「ひとは死んだら、いちばんきれいな姿になってから彼の世に行くんだって。だから、そういうことかな?
(学園にいた頃はひとなんか 手にかけたことなかったから…)」
伊作はいつもの調子で答えた。
留三郎もまた、いつもの調子で答えた。
二人は、顔を見合わせなかった。
「……ふうん…スピってんな…」
「スピ?」
「え?ちょっとまて」
「なあに?」
「やべえ。チャリ盗まれてる………」
一時的に止めていた駐輪場から自分の自転車がなくなっていることに気づく留三郎
暗転
【伊作との日々は 悪くない】
コマ毎に二人の生活を描く
令和文明にいちいちビビる伊作
ギターを弾いて歌う留三郎
ベッドの上で眠る留三郎を見ている伊作
するりと髪を撫で、こめかみあたりをかきあげてやると、まるで15歳の頃の留三郎を見ているようだった。留三郎は、眠っている
カーテンの隙間 窓の外に大きな月が輝いている
「月がきれい」
暗転
夏だった季節は秋になろうとしている
「お前 なかなか成仏しないな」
「なかなか成仏できないね…」
「そもそも、どうやったら成仏できるんだ?なんか未練でもあんの?」
「ないよ未練なんか やりたいことやって長生きしたしね」
抜け忍してひっそり町医者をやっていた頃を思い出す という回想
「最初は留三郎が昔のことを忘れちゃってたの
悲しかったけど いまはそうでもないかな」
留三郎の頬を撫でる伊作の手
「あのさ………………」
目を伏せながら伊作を呼ぶ留三郎
「うん?」
しれっとした顔の伊作
「俺達ってつきあってた?」ズコーッ(お約束)
「ええなに突然………………」
「っすまん、時代柄、今より普通にこう、男色なら何やらと歴史書に書いてあったから…ムニャムニャ」
「あははは!僕たちはただの同室だよ
僕昔留三郎に、嫁でももらって幸せになれって言われたこともあったしね」
伊作は笑っていた
いつもと同じように笑っていた
「お…俺、良いやつだな……」
「(俺が昔のことを思い出したら……こいつは消えてしまうのか?)」
突然何かと思ったあ〜と笑う伊作の姿を見て、漠然と、それさ嫌だと思った。
【俺は この奇妙な生活を 捨てられなくなっている】
「いいやつ…かな?
でも、優しいやつだよ
(留三郎は今も優しい)
(別に眠らなくても良い僕のために布団をひいてくれる)」
布団ぼふっと倒れ込む伊作
「それにしても、まさか500年も彷徨い続けるなんて……浄土に行けるとは思ってなかったけど、こんなに長い間成仏できないとは思ってなかった」
「お、出た。お決まりの"不運"だ?」
もうお前のことを知っているぜ、という得意げな留三郎
「う〜ん……ふふ、ううん。留三郎が、今はこんなに素敵な時代を生きられているって知れて、僕は幸運なのかもしれない」
「お前も大概いいやつだな………ぁ……でもお前に取り憑かれてから明らかに不運の数が増えたような……」
「た、たしかに すまない……」
寝かせていた体をへにょへにょにして謝る伊作
「あはは嘘だ。気にするな」
「(同室じゃないか)」
伊作は仰向けになったまま、笑う留三郎を見上げていた。
聞き慣れた言葉が続かない、伊作はなんだか寂しくなった。留三郎は自分より随分先に死んだ。なのに、たった今、留三郎を失ったような気分になった。
「じゃあ寝るぞ おやすみ伊作」
「うん。おやすみ留三郎」
その夜 留三郎は夢を見た
〜室町 沈み行く日があたりの木々を橙に染めている〜
「僕ねえ未来に行ったんだよ」
「なんだよそれ」
二人の指はするりと絡み合う
夕暮れに手をつなぎ 二人笑い合う
紛れもなく恋人同士の雰囲気
「なんと 500年後」
「それは、途方もないな」
「ほんとうに」
くすくすと笑う二人
「みんなねえ 手のひらサイズの鉄板を使って生活してるんだよ」
「へえ」
「あ〜本気にしてないだろ。そのからくりを使って離れている人と話をしたり、あとは、地図も見れる」
「鉄板で?」
「そう。鉄板が、通貨にもなる」
「さっぱりわからん」
「そしてみんな"ヤバイ"って言う」
「ヤバイ?」
「美味しいものを食べても、綺麗なものを見てヤバイって」
「ヤバイって…言ってるバヤイか?」
「違うよ〜!"ヤバイ"の〜!」
あはは 二人の頬は夕日に照らされて赤かった
伊作の手を強く握りなおす留三郎
応えるように 手を握り返す伊作
「?」
「……伊作 お前はいなくなってくれるなよ」
「留三郎…?」
「ずっと」
「……ずっとは無理だよ ずっとなんてないよ」
暗転
現代 夜明け
「伊作……?」
ベッドから飛び起きる
隣にはいない伊作 空っぽの布団
1人泣く留三郎
LINE通知〜🎶
ディスプレイ「浜:今日のシフト15時から……続きを読む」
再び目覚めた時刻は夕暮れ。泣き疲れて、そのまま眠ってしまっていた。
「寝すぎた……」
窓から差し込む夕日 あの頃とは全然違うな思った。ずっと寝ていても仕方ないので、ベッドから起き上がる。それと同時に軋むスプリング
振り返ると、ベッドの上でぺたんと座り込む伊作の姿 15歳の伊作の姿
「へぇあ…?」
〜終〜
「なんで…僕成仏できなかったのぉ?」
「お、思い出したんだがな……これじゃなかったのか…?」
「不運だ……」
う〜んう〜んと悩む留三郎
なんでなんでってモダモダする伊作
頭を抱える伊作を見て、たまらず伊作を抱きしめる留三郎
「な、なに?留三郎…?」
口づけ
見つめて
もう一度 3分割
「………忘れてて すまん」
「僕だってはぐらかしてしまったし……いいよ。あ、違う。同室じゃないか」
「俺のセリフだって」
わはは
二人の生活は、まだしばらく続くようだ
ずっとなんてものは ないけれど。
「(伊作が成仏できないのは 俺が…
俺があのとき呪いの言葉をかけちまったからなのかな……)」