元錬金術師との再会「よ、ようやく見つけたぞ…!ここがお前の言っていた家だな!?」
『うん!なかなか見つからなくてびっくりしちゃった!』
「恐らく、腕のいい魔法使いに頼んで場所を知らない人間を迷わせる魔法を使っているんだろう」
『あたしには効かないけどね、えっへん!』
「家があることしか覚えていなかっただろうお前は…さて、入るか」
『類くんのお家にー、レッツゴー!』
「おや?一見さんかな、あの魔法を相手によく粘ったねぇ。ようこそ、ルイ・ブラウロゼの魔法薬…店、へ?」
「ハッーハッハッハ!やはり居たか、類!」
『わんだほーい!類くん、久しぶりだねー!』
「…司くんに、えむくん…?…っ痛、夢じゃない…」
「類!急に手首を切りつけるなど、一体何を…!」
「大丈夫だよ、司くん。だって僕は…」
『…わー!傷が治った!』
「魔法使い、だからね」
「改めて…ようこそ僕の店、【トワ・アルノマル】へ。歓迎するよえむくん。…そして、司くん」
「どうした類、なぜそんなしかめっ面をし…っうお!?」
「ど、どうしてえむくんと会うより前にここに来てくれなかったんだい…!?」
「…ん?どういうことだ?」
「僕はえむくんよりこの国に来ていたんだよ!」
『えーっ!?そうだったの類くん!』
「…おかしいな、僕の店そこそこ有名だと思っていたんだけれど…」
「少なくとも、我が城には届いていなかったな。…きっと類の店を報告したら、類が王族の専属になると思われたのだろう」
「今の生活も楽しいけれど…僕としては、報告される方が良かったな」
『んー、なんで?みんなを笑顔にできるんだから、あたしは今の方がいいと思うなー!』
「うん、確かにそうだね。…でも報告されていたら、えむくんより先に君に会えたのだろう?」
「そうかも、しれないが…」
「この国へ来たのは、司くんに会う為だからね。そっちの方が嬉しかったんだ」
『類くん、司くんに会う為にこの国に来たの!?』
「ふふ、司くんそっくりの第一皇子様が居るらしいと噂で聞いてね。いてもたってもいられなくなってしまったんだ」
「今世のえむくんの名前は…」
『はいはーい!エム・フェニックスだよー!』
「おや、割とそのままだね。司くんの今世の名前はなんだい?」
「…悪いが諸事情で言えない、今は“リリィ”と呼んでくれ」
「なら、司くんのままでいいよね」
「いや、だから“リリィ”と…」
「…君は司くんなんだから、司くんでいいだろう?」
「確かに、お前達に“リリィ”と呼ばれるのは違うか」
「ロゼと呼んでくれてもいいんだよ、司くん」
「それは何か違う気がするんだが…ルイ、でいいか?」
「…!もちろんだよ、司くん!」
「…これは…」
「エムの声が出ない原因について、何か分かったか?ルイ」
「恐らくだけど、人魚の呪いだね」
『のろい…?遅いの?』
「それは鈍いだ、呪いはだな…」
「エムくんのように声を奪われたり、足を動けなくさせたりするものだよ」
『こ、怖い…!』
「僕の魔法で、少しは緩和出来ると思うけど…やった人魚から返してもらった方がいいだろうね」
「それにしても…エムから声を奪った人魚は何のために奪ったんだ?」
『あれ?…確かに!あたしが何か悪いことしちゃった…とは流石に思えないし』
「あぁ、エムくんの動きからして怨みなどを貰う訳がない。むしろ怨む側だね」
『あたしは神様を怨む気はないよ!…あの件は、あたしが悪いんだから』
「…えむ、そんなことはない」
『ううん!あたしが悪い!言いつけを守らなかったあたしは、悪いんだよ…』
「でもそのお陰で、司くんに会えたんだろう?」
「ルイ!少しは言い方をだな…!」
「だって、司くんの噂を聞いて僕はこの国に来たのに先に会ったのがエムくんなのは事実じゃないか」
「…もしやお前、拗ねてるのか?」
「いいや?拗ねてなんていないとも」
『…あたしが言いつけを破ったから、司くん達に出会えた…?』
「そうだとも、エムくん。エムくんが言いつけを今も守っていたら、僕達は再会出来なかったんだよ?」
『そう、だけど…でも!』
「それと君が恐らく天使の頃に仲良くしていた人、実は僕の元お得意さまでね」
『…え?あの人が、ルイくんの…?』
「あぁ。元々病弱で、長く生きられても18までだったらしいよ」
『あたしがあの人と仲良くしだしたのも、18歳の頃…』
「つまりエムくんは、只仕事をしていただけなんだよ」
「…ルイ、それは本当なのか?」
「勿論だとも!君たちに嘘をついたことがあるかい?」
『…ない、一度もない!じゃあ、あたし…』
「うん、えむくんはあの人のことで気を病む必要は無いってことだよ」
「待て。ならば、あの変死の理由は一体なんだ?」
「…うーん、僕は医者ではないから推測だけれど…心臓発作、だと思うな」
「心臓発作…なるほどな、確かにこの国では変死と扱われるか」
『あたしの、せいじゃ…なかったの?』
「そうだとも、あの人が死んだのはエムくんのせいではないよ」
『そっ、かぁ…あたしのせいじゃ、なかったんだ…』
「エム」
『あたしが、あの人の命を奪っちゃったんだってずっと思ってた。…でも違ったんだ、良かった…!』
「…えむ」
『なぁに?司くん!』
「泣いても、いいんだぞ」
『…ほんとうに、いいの?』
「こっちに来い、泣いてる顔は見ないでやる」
『うぅ…つ゛か゛さ゛く゛ん!!』
「…さて、あとは寧々だけか」
『寧々ちゃん、どこにいるんだろうね…』
「おや?寧々はまだ見つかってないのかい?」
「あぁ、悔しいがな…歌が聞こえるらしい海辺には何ヶ所か行ったが、全て寧々の歌声ではなかった」
『あたしがもうちょっとだけ、記憶を思い出せたらなぁ…ごめんね、司くん』
「…記憶を、か…エムくん」
『ほえ?どうしたのー、ルイくん!」
「ちょっと頭を触らせてくれないかな?」
「もちろん!なにか思いついたの?」
「僕が使える魔法の中に他者の記憶を探る、という魔法があってね」
「使い所を間違えると危なそうだな」
「でも、こういう時に便利だろう?」
「…まぁ、な」
「ふむ、なるほどね」
「何か分かったか、ルイ」
「…あの場所は…それにあの歌声は、確実に寧々だね」
『…!じゃあじゃあ、あたしちゃーんと寧々ちゃんの歌声覚えてたんだー!』
「よかったな、えむ」
『うん!』
「あの場所、ここから結構離れているね。綺麗に逆方向だ」
「そ、そんなに遠いのか…!?」
「結構遠くではあるねぇ、簡単に計算すると…歩いて3日かな」
「なぬっ!?み、3日!?」
『あたしは飛べるから大丈夫だけど、司くんとルイくんは大丈夫…?』
「フフ、僕は大丈夫だよ。…来い」
「なぬっ!?ほ、箒が飛んできただと…!?」
「魔法使いだからね、これくらいは出来て当然さ」
『すごいすごーい!…んー、なら司くんはどうするの?』
「む、オレか?オレは…“こいつ”を呼ぶ」
「…!ペガサス、かい…?」
『ほ、本物だー!!本当にお馬さんに羽が生えてる!あれ、でもツノもある…?』
「我が王国の守護獣だ…とは言ってもまだ幼いがな。大人になったらツノが取れて立派なペガサスになる」
「遠目に見ていた時とはやはり違うね…!名前はなんと言うんだい?」
「レッヒェルンという名だ」
『レッヒェルンくん!とーってもいい名前だね!』
「そうだろうそうだろう!」
「…ねぇ司くん。僕の箒に、名前をつけてもらってもいいかい?」
「ん?勿論、構わないが…ルイじゃなくていいのか?」
「司くんに、つけて欲しいんだ。…ふふ、そう言ってもらえて嬉しいよ」
「そうだな、ルイの箒…ノイギーア、はどうだ?」
「…いい名前をつけてもらったね、ノイギーア」
「さて、行くとするか!ゆくぞレッヒェルン!」
「おいで、ノイギーア。共に行こう」
『…待っててね、寧々ちゃん!』
「ハーッハッハッハッ!ワンダーランズ×ショウタイム再結成の日は近いぞ!」