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    namo_kabe_sysy

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    またしてもすけべ前段階 次こそ本番 きっと本番

    #アル空
    nullAndVoid

    テリトリーの外側2どうして、と言いかけて、飲み込む。席を外した時間が長すぎたのだろう。おそらく、こちらの様子を伺いにきたと容易に推測できる。アルベドはお猪口に残った酒を飲み干して、ほんの僅か液体の入った瓶を持ち「これから戻ろうとしてた」と、なんとなくバツが悪い口調で呟いた。
    「ごめん、急かすつもりで来たんじゃないんだ。ただ、いつもより言葉数も少なかったし、もしかして体調でも悪いのかなと思って、心配で」
    言いながら、隣に座ってもいいか尋ねる空にゆるく首を振ることで応じた。彼は未成年という枠のため昨日も今日も一滴の酒も飲んでいない。完全に素面だ。完全な理性の塊の彼を隣に感じると、無性に自分のことが情けなくなって、アルベドは「ごめん」と口を開いた。
    「うまく言える自信があまりないのだけど、……稲妻に訪れてからたった二日、キミがボクの知らない人間と言葉を交わすのを見ていたら、落ち着いていられなかったんだ。モンドにいるジンたちや街の人間に対しては感じなかったのに、足元が急に不安定になったような感じがしてしまった。その理由をまだ探し当てることができていないんだ。だから少し、頭を冷やせば何かわかるだろうかと思って」
    実際のところ、席を立ったのは単に行秋との親しそうな光景をあれ以上長くは見ていられなかったからだ。何かわかるだろうか、などと誤魔化して、本音を渡すことにも怯えている。
    月の光は四角の窓枠を切り取って、室内に光と影を落としている。ひらひら風に流れる花びらも影になって、雪のようにちらついていた。
    先程まではアルベドひとりの輪郭を月が照らして一人分の黒い絵を部屋に描いていたが、いまは空とならんで、二人分のシルエットが描かれている。空本人を真横にしながらも隣を振り返ることができないまま、アルベドは落ちた影絵に向かって語りかけていた。
    空は何も言わずに、黙ってアルベドの声に耳を傾けていた。拳ひとつぶんの距離を置いて、相槌の声も挟まずに沈黙を貫いている。
    落ちた影絵にも、その隙間は明確に映し出されている。お互いが別々の個体であることをよりわかりやすく訴えているようで、アルベドは胸が軋むのを覚えた。
    躊躇いなくうめられるはずの隙間。肩と肩が合えば溶け合うこともできるのに、空が何も言わないでいることと、こちらに詰めようとしないとこに、勝手に悲壮感を帯びている。
    「……――すまない。一方的に話してしまったね。そろそろ行こうか。ウェンティは一人では戻れないだろうから、行秋にも協力してもらって運ばないと」
    「それなら気にしなくてもいいよ。店の人が送ってくれるって言ってたから。行秋とパイモンが付き添ってくれてるから、今頃は万国紹介の宿に着いたんじゃないかな? あとは俺たちが戻ればいいだけだよ」
    「……そう、なんだ」
    ありがたいことだ。明らかに面倒なことをしてもらって、一人抜け出して悶々としていただけの自分は手ぶらで帰るだけなのだから。会計だけはする必要があっても、それだけだ。背負う酔っ払いの吟遊詩人はいないし、空の隣で朗らかに笑っていた小説家もいない。
    この時を、きっと待っていたのかもしれない。
    アルベドは酒瓶を傾けて、残ったわずかな酒を落とし切る。喉をならして飲み下すと、からっぽになったお猪口を畳の上に転がした。
    「空。今夜、キミを抱きたいのだけど」
    黒い影から視線を上げて、アルベドは隣にいる空本人をようやく視界に収めた。淡い月明かりに照らされた金糸の髪、三つ編みにされた長いそれはところどころほつれていて、ゆるやかな風でちりりと揺れている。見据えた蜂蜜を練り固めた瞳の奥が見開かれて、途端に顔を赤くする空に、アルベドは小さく笑ってしまう。
    「だ、……え、えっ?」
    「もう一度言おうか。今夜、キミを抱きたい。抱きたい、というのは少し遠回しだったかな。つまるところ、ボクはキミとセックスをしたいんだ。……伝わっているかな?」
    「わっ、わかった、すごく、とても!」
    そんな言い直さなくていいよと狼狽える空に、アルベドは「だから選んで」と真剣な声音で提示した。
    「もししてもいいなら、ボクと一緒に帰ってほしい。したくないなら、キミは先に宿に戻っていて。ボクは後から追いかける。別々に帰ることが、ノーという意味になる」
    「――……」
    わざわざ決断を委ねてしまう弱さに辟易する。
    己の欲望のまま掻き抱いても、おそらく空は笑うだけだろう。これまでもまったくなかった訳ではない。何度か身体を重ねる中で、抑えきれなくなった欲情を無防備な彼にぶつけたことはすべて記憶している。そのあとの反応も、つづく関係も、すべては空の握る手綱で決まってしまうと、本気で思っている。だからこそ、決定権は彼にあるのだとアルベドはいつも思っていた。
    「アルベド」
    形の良い唇が、名前を唱える。酒は確かに飲んでいたが、結局酔うことはできていなかった。覚醒の中にいたはずだ。それが、空の声ひとつで、飲んだこともない美酒に漬けられた感覚に陥っている。
    「……なんだい、空」
    「ねえ、答える前にひとつ、聞かせて。……もしかして、やきもちをやいてたの?」
    「……やきもち?」
    「嫉妬だよ。俺がこの国の人々や行秋と楽しく話してることを、快く思ってなかったんでしょ?」
    「それは、……本当に、すまない」
    そうだ、とほぼ言っているようなものだった。視線を逸らして情けなく吐くと、空はくつくつ喉を鳴らして笑っている。
    「どうしてあやまるの?」
    「それはキミに対して、……というより、キミとキミの周囲の人間に対して、失礼だろうから」
    「でもそんなの、ぜんぜん顔に出してなかったよね?」
    「それは最低限、そのように振る舞いたかったから。皆、キミにとって大切な人々だ。尊重したいと思っているからね」
    「そういうとこ、本当にまじめだよね、アルベドって。……あのさ。それなら俺も正直に言っちゃうけど。昨日も今日も、アルベドはウェンティにつきっきりだったでしょ?」
    思い出すのは幼い風貌をした酔いどれの吟遊詩人だ。絵画のモデルにもなった彼からインスピレーションを得て以降、より再現するための材料を増やすために会話を重ねていたのは事実だった。「そうだね」と、大人しく頷いて返す。
    「俺はそれ見て、ちょっと……というか、かなり、ずるいなーって思ってた。ウェンティにやきもちやいてた。アルベドとたくさん話してて、それなのにすぐ酔っ払って寝ちゃうし。今日だってそうだよ。二人はお酒が飲めて、俺は飲めない。だからある程度は仕方ないと思ってたけど、すぐ近くにいるのに全然会話に入っていけなくて、なんか、……さみしかった」
    さみしかったんだよ、と空に打ち明けられて、弱い力で、片手を取られる。彼の両手に包み込まれたその手は静かに引っ張られて、アルベドは少しだけ姿勢を崩してしまった。
    あいているもう片方の腕でバランスを取り、顔をあげる。眼前には潤んだ蜂蜜色があった。
    「……――空、」
    酒のせいだろうか。今更になって喉の渇きを覚える。けれどこのまま冷水を飲んでも、焼けた場所に落ちた途端に蒸発して終わりのような気がした。
    とらえられた片手は、そのままするりと空の頬にあてられた。輪郭を預けてくるような動きで、首を傾げた空は、心底からアルベドが欲していた言葉を紡いでいた。
    「一緒に、かえろ?」
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