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    soseki1_1

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    夜行梟🔮を買った驚異🤕が彼を懐かせるまで~序章~/傭占

     夜行梟がその男を見つけたのは、鳥の羽ばたく音さえしない夜のことだった。正確には何日か前からその姿はあった。自分を囲う檻越しに、その肩についているコインがちらちらと輝くのが見えていた。だけどそのとき、夜行梟はその男を個として識別するのを拒絶した。そのときの夜行梟にとって、男は人間たちのひとりにすぎなかった。森を汚し、自分を汚し、森の番人たる神聖なこの身を売り物としか見ていない下賤な人間たち。その一角でしかなかった。「彼を買おう」男がそう言うのを、夜行梟は羽に顔をうずめながら聞いていた。そのときはもう、唾を吐きかける体力すら残っていなかった。
     男の輪郭がその眼に映り始めたのが、その夜だった。歯車が回る音と、ガタゴトと揺れる車体、かび臭い檻はそのままに周りの空気だけが華やかに移ろう。きっと移動しているのだろう。そんな変化を終えた後の夜だった。男が檻の中に入ってきて、夜行梟に語り掛けてきたのだ。
    「君の願いを少しだけ叶えよう。その代わり、私の願いも少しだけ叶えてくれ」
     男はそう言って、夜行梟に手を差し伸べた。手には、柔らかな白いパンが乗っていた。「これを食べてくれ」男は黒グローブに覆われた指でパンをちぎった「ひと欠けでもいい」
     夜行梟は驚いて、顔を上げた。森で人間たちに囚われて以来、この檻の中に入ってきたのは、この男が初めてだった。誰もが威嚇する夜行梟に怯え、恐れ、檻の外から彼を見た。たったそれだけで満たされるといわんばかりの下品な目で夜行梟を見つめていた。「これがあの夜行梟」と声に出す者さえいたのだ。しかし男の目や声は、そのすべての目と声と違っていた。男の目は何も満足していなかった。輝く瞳で夜行梟を見つめ、それ以上を求めてきた。パンを千切った指は、夜行梟の羽をもごうと握った手とは遠くかけ離れていた。
     なぜ?
     そう考えようとして、止めた。考えるだけの力がほとんど残されていなかった。もう何日も食べていなかったのだ。餓死を望んでいたが、天眼という規格外の目を嵌めた体はそれを許さないらしいと理解し始めたばかりだった。つまるところ、タイミングが良かったのだ。
    「森の木の葉が欲しい」
     夜行梟の願いは、存外すぐにかなえられた。木々の一部から手折った小枝は、今も水の入った小瓶に入れられ生きている。
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    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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