そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
こんな調子だったので白鷹はそのうち我慢ができなくなった。つまり、夜行梟を押し倒した。まるで追い詰められる獲物のような格好に、夜行梟は目を丸くした。まさか何百年と生きていた自分が、誰かにこんな格好にさせられるなんて思わなかったのだ。それもよりによって自分が育てたいとし子に。狩られる、という危機感が寒気となって背筋に流れた。そのまま攻勢に移るはずが、できなかった。何故なら押し倒しているのは自分の可愛い可愛いかわいいいとし子だったからだ。夜行梟は、何百年も生きる罪の森の番人は、いつしか、この子になら殺されてもいいだなんて世迷言を抱くようになっていた。だから抵抗できなかった。このまま喉でも食いちぎられるのかと息を詰めていた。
とんだ間違いだ。