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    soseki1_1

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    番になった夜行梟に出迎えられる白鷹
    (傭占/鷹梟)

    「おかえり、白鷹」
    出迎えの声に身体中の体温が上がる。目に映るその姿に鼓動が駆ける。口元に笑みが浮かぶことを止められず、また止める必要もない。眼前にあるのは間違いなく、己の番たる存在なのだから。
    「ただいま、夜行」
    扉が閉まり切ったことを蝶番の音で確認しながら、白鷹は両腕を広げ、眼前の体躯を抱き寄せる。濃紺のローブに青い鱗粉がはらはらと零れる様は、星の瞬く夜の如き様だ。背にある美しい灰色の羽を優しく撫でると、その場で硬直していた体がそうっと白鷹へと傾き、そのまま身を預ける。
    美しいその身を壊さないように、しかし離さないように抱きしめれば、澄んでいるというのに柔らかな香りが鼻腔を擽った。募るばかりの愛おしさには、頬の側にある濃紺のフードさえ隔てるもののように思えたのだろう。白鷹はそうっとそのフードを外し、同時に晒された白銀の髪にうっとりと目を細める。絹糸の如きその髪に頬を寄せると、優しい夜の香りがいっそう近く感じ取れて、白鷹は思わず喉を鳴らした。くるる…ぐる……と軽やかで低い音が零れていく。ほんの小さな音だが、抱擁するふたりには充分な音色だ。番の他には何人たりとも耳にしたことのない白鷹の柔い音色の最中、腕の中からきゅる…と小さく音色が零れる。微かに…しかし確かに零れたその音色を、白鷹が聞き逃すわけもない。もう一度と強請るように耳元で優しく囁くようにして鳴けば、きゅる、きゅるる…と上擦った鳴き声は次々零れ落ちていく。あまりに愛おしいその音色に、白鷹は堪らず白銀の髪へと口づけを落とした。そのままさらりとした髪へ頬擦りをしながら、殊更優しく鳴き続ける。
    「ぐるる…くる……くる…」
    「きゅう……くる…きゅる…」
    昔日に鳴き方を教わらなかった…親鳥と共に過ごす時間があまりに少なかった夜行梟の喉からは、成鳥になった今も子供のような声が零れ出る。あどけない鳴き声という自覚があるらしく、彼は鳴くことを恥じらい、なかなか自ら鳴こうとしない。その鳴き声が零れるのは、白鷹と共にある時だけ…白鷹が強請ったときだけだ。その恥じらいも、あどけない鳴き方も含めて、白鷹は全てが愛おしいと思った。欲目を出すならば、自ら鳴いてくれれば更に喜ばしいものだが…その願いには一旦蓋をしている。この愛らしい鳴き声を独り占めできると言うだけで、過ぎるほどの喜びなのだから。
    顔を擡げ、仮面越しに眼差しが合わさり、仕舞いに嘴同士をこつりと触れ合わせて一度鳴く。そうして顔を離せば、抱き寄せた番の面持ちが白鷹の碧眼に丸きり映る。仮面の下から赤らんだ頬を滲ませる面持ちだ。見えはしないが、きっと恥じらうあまり彷徨いているだろう視線を感じ取ると、白鷹は頬が緩むのを止められないまま唇を開く。
    「…イライ」
    「っ、…」
    「イライ、イライ」
    囁くように、ともすれば唄うようにその名を紡ぐ。ふたりとレディしかいないこの家でしか口にしない名。互いに授け合った真名。ただの呼び名ではなく、特別な意味を持つ名前。白鷹は殊更大切にその名を紡いだ。互いにしか聞こえないような声音は、確かと彼へ伝わったようだ。仮面の下の頬はいよいよ赤みを増し、熟れた果実のようになっている。太陽にすら触れられ慣れていない白皙に、その色は際立って映った。白鷹は果実のような頬の片方に指を滑らせ、優しく包む。応えてほしいと言外に強請る意図を隠さずにいれば、美味たる果実の如き番がその口を薄く開いた。
    「…ナワーブ」
    たったひと言。短い音の連なりだ。しかしそれだけであまりの歓喜に満ち溢れる。身体中に熱い血が巡っていく。跳ねる鼓動が鮮明に聞こえ、目の奥が滲むような熱を帯びる。口元が綻ぶのを止められないまま、喉から音が鳴ることも留められない。
    「イライ」
    「ナワーブ」
    歓喜に満ちる声音で今一度名を紡げば、こちらの名を呼び返される。未だ恥じらいが滲みつつも、大切に声にしたのだろうと解る声音だ。どうか彼も、いつか同じ心地で居てくれると良い。願望を跳ね打つ胸裏に隠して、ナワーブは今一度こつりと嘴を合わせた。きゅぅ…と、イライの口から小さく溢れた声音は、やはり愛おしくてならないものだった。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
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