Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    soseki1_1

    @soseki1_1の進捗置き場 センシティブもある

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 92

    soseki1_1

    ☆quiet follow

    夜行梟🦉🔮にクソでか感情を抱いている番人の鹿🦌が、白鷹🤕🦅にそれを渡す話
    (鷹梟+鹿/傭占+鹿)

    「白鷹」
    水辺の側に植る木の根元。幾羽かの雛が上擦る声音で親鳥を希う下に集めた素材を置き終えたとき。徐に呼び名を紡がれ、白鷹は顔を上げた。声は近頃聞き馴染んだベインのものに違いない。白鷹よりもはるかに上背のある森の番人は、存外なほど直ぐとした眼差しを白鷹に注いでいた。
    「あの子を頼む」
    告げられたのは眼差しと同じく直ぐとした声音だ。いっそ重たさすら感じ得るというのに、その底にあるものはあまりに優しい。
    あの子、と、ベインが幼い子供のように呼ぶのはひとりだけだ。森の守り人の奥底にある人。暗い夜にひとりきりで泣いている彼。その名を知らずとも、ベインはあの厳格たろうとする姿の奥にある彼を見つけている。
    「言われるまでもないだろう。解っている。だが、言わざるを得ない程にあの子は孤独だ。そして孤独に慣れすぎた」
    ベインはこの森の生まれではないのだと、いつだったかに彼は語った。帰らずの森に迷い込んだ存在のひとりで、血塗れで倒れていたところを夜行梟に保護された。加えて、ベインが訪れたのには何事かの目的があったそうだが、それを夜行梟が手助けしたのだと言う。
    その一件以来、夜行梟に恩情を感じているともベインは言った。そのとき、夜行梟は未だ小さな子供だった。背丈の伸び切らない背姿を見ながら、彼が過ぎる重荷を追っていると悟ったのだと。
    「強い風が吹けば倒れ、天敵が襲い来れば身を隠す。しかしあの子は倒れない。天敵もいない。だから厄介だ」
    告げられる言葉の意味を、白鷹はなんとなしに想像することができた。それは強き者の宿命だ。どれだけの者が倒れ付そうとも倒れることができない。どれだけ取り零そうとも、零した己の手は崩れることなく有り続ける。荒野にただひとり立ち尽くしたとて、地平線は無情にも暁の終わりを自分ひとりに告げ知らす。耐え難いと思えど黎明が目を焼く。酷い孤独だ。
    「お前は強い。お前なら、あの子の隣に立てるだろう。私でもあの子の相棒でも成せなかったことだ」
    「…レディは、何があろうとあいつのそばにいる。羨ましいほどだ」
    「あれはあの子が奈落に堕ちようとすれば果てまで伴って行くだろう。だがお前は、あのこの手を引っ張り上げてやれる」
    ベインの眼差しは変わらない。重く、実のところ優しく、だからこそ力強い眼だ。
    「あのとき…お前が初めにこの森へと訪れた時には、どうしてくれようかと怒りさえ覚えたものだ。だが共に過ごせばわかる。あの子は芯からお前を選んだのだ。そして、その選択は正しい」
    初めに合わさった眼差しは、確かに苛烈さを奥底に隠してきた。しかし今、白鷹の眼前にあるのは穏やかなものだ。梟族の元へ挨拶に赴いたときよりも、ずっと重い鼓動が胸の裡にある。それを抱えて然るべきだと、白鷹は思った。これが長きに渡り夜行梟を見ていた眼差しだと思うと、深い感謝さえ湧き出でる思いだった。これこそが、アイツがひとりでなかった幸いの証だ。
    「あの子を頼む。俺の、数少なくなった願いだ。見放してくれるな」
    ほんの少し冗談めいて…けれども実のところ、酷く切実な願いを込めて、ベインは微笑む。その眼差しから一寸とも視線を逸らさぬまま、白鷹は笑った。
    「ああ、言われずとも」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
    1556

    soseki1_1

    DOODLE本丸傭占奇譚
    「好きな奴が出来たんだと思う」
     言われたとき、なんのことだかさっぱり解らなかった。
    「主」
     そう続けられた言葉でようやく言葉の真意を理解できた。正しくは、広げていた雑誌を読めも見もできず何秒か握りしめ、畳んで、発言した加州清光の方を見て、数秒経ってようやく理解できた。皴のついたページは恋愛特集だった。時の政府が発行している月刊雑誌の中でも恋物語を中心に集めた一冊だ。毎月本丸の、自分の部屋に届くようにしてある雑誌を一文字則宗は横に置く。
    「まじか」
    「たぶんマジ」
     普段使わない一昔前の若者言葉がまろび出る。らしくないとは加州も解っていたろうが全く指摘されなかった。それだけの大事だった。
     この一文字則宗と加州清光が所属する本丸は、端的に言えば素晴らしく堅物なところである。質実剛健を絵に描いたような場所だ。審神者制度が樹立した最初期に設立し、今なお各任務で優秀な成績を残し続け、表彰式に呼ばれ過ぎて参列側じゃなく運営側に回ってしまうような所である。そんな本丸を運営する審神者は、本丸の有り様と同様の人間であった。則宗からすれば朴訥すぎるきらいさえあった。どこぞの国の軍人で、前線を経験しており、かつては大佐と呼ばれる地位にあったらしい。ここまでは本丸の誰もが知っている経歴だ。しかし則宗はもう少し込み入った事情まで知っていた。元監査官の特権だ。最前線を行く審神者の手に渡ると決まったとき、興味を持ってちょっと調べておいた。男には、前線にいたとき作戦の執行に問題があったと難癖をつけられ、結果部下三名を処刑された経歴があった。作戦外で、戦場外で部下を無駄死にさせた経験は男の精神を大層苛み、一時は、というより審神者の招集があるまでは病院に詰めていたらしい。樹立期における軍人経験のある審神者の登用は必死なもので、特に男は指揮力と前線経験のある経歴も申し分なかった。審神者当人は戦場に赴かず、前線に出るのも人間より幾倍も頑丈な刀剣男士だからと何度も説得されて首を縦に振ったらしい。だから審神者になったばかりの頃、刀装なしで初期刀を出陣させる指令にはたいへん反抗的な姿勢を見せたとか。政府に対する三日三晩に渡る必死の抗議と独自に作成したマニュアルにより、この出陣命令は見直され、今は初手の出陣で初期刀が重傷で帰城するようなことは少なくなったのだとか。そしてそういった改善が何件かあり、今では政府
    1292

    recommended works