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    soseki1_1

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    里帰りした白鷹が子供たちになつかれている話
    (鷹梟/傭占)

    「あ! 白鷹だ!」
    「しらたか兄ちゃん!」
    手を握り込め、眼前に手漂う水泡をただ眺めていた途上、その耳に飛び込んだ嬉々たる声音によって、白鷹は意識をそちらへ傾けた。見れば、門の傍で屈んでいた子供のふたりが、顔を上げて白鷹へと走り寄って来る。よほど興奮したのか、宙に水泡を浮かべる器具は地面に置きっぱなしのままだ。𠮟るべきなのだろう。そう悟ったが、白鷹は笑みを浮かべて膝を屈め、己の腰元に駆け寄った子供を撫でてやる。久方ぶりに帰った兄貴分が早速叱るというのも難だ。叱られる前に気づかせてやればいい。
    「元気にしてたか」
    「うん!今日もね、母ちゃんの手伝いしてから遊んだよ」
    「シャボン玉も、にいちゃんとはんぶんこであそんでるよ!」
    「そうか、偉いな。その…シャボン玉、だったか。俺にも見せてくれるか?」
    「いいよ!」
    「待ってて!」
    さりげなく置いてけぼりの玩具を回収するように誘導すると、白鷹は膝を伸ばして立ち上がる。子供たちが地面においてあった玩具を手に持ち、再び白鷹へと駆け寄る頃には、伴って里の門へと歩き出していた。麓の町と交友があるため、そして鷹族が強いため、この森に密猟者は滅多にいない。加えて鷹族の里の近く…それも門の傍の広場は安全とはいえ、子供ふたりで帰すのは気が引けた。過保護だと言われれば、そうかもしれない。近頃首ったけの番がいるために、白鷹の庇護欲は以前よりも露見している。
    「白鷹、およめさんは?」
    「あのきれいな鳥さんはいっしょじゃないの?」
    少し歩き、遠目に門が見え始めたころ。子供たちは改めて白鷹の周りをきょろりと見渡し、そう声を上げた。星々のような青い鱗粉を零す、夜色の美しい羽。ここに発つ前、新居の玄関先で目に、優しく撫でた番のそれが瞼の裏によぎる。白鷹は仮面の下で愛しそうに、切望するように目を細める。
    「お仕事で忙しくてな。今回は留守番してもらってる」
    「えー!」
    「会いたかったのに」
    「今度は連れてくる」
    「やったあ」
    髪の柔らかな頭部を撫でて言えば、未だ呂律のつたない子供が上擦る声を上げる。一時期…森を守る計画を立てるために鷹族の元で暮らしていた際、夜行梟は子供になつかれていた。偏見や噂の知らない子供たちは、彼の根にあるやさしさを感じ取るらしかった。照れた風に微笑むその横顔を思い出して、胸の裡が締め付けられる。今すぐにでも踵を帰したい。半ばほど本気で、そんな衝動にかられた。
    「帰ったか、白鷹」
    「ああ、久しいな」
    「そうでもない。…いや、チビ達にはそうだったらしいな」
    昔戦場へ赴いたこと、戦術指導をした経験、元は里の若とすら言われていたことから、白鷹は殆どの鷹族と面識がある。無論、本日の門兵とも顔見知りなもので、白鷹の腰元に抱きつくように歩く子供に苦笑が送られる。
    「長老にも会うんだろう。チビは預かるよ」
    「ああ、頼む」
    「ええー!」
    「やだ! シャボン玉みてもらうの!」
    「シャボン玉は後でな、ほらおいで」
    白鷹ほどの者でなくとも、里に暮らす者は皆が協力し合い生きている。門兵が慣れた素振りで子供たちを呼び寄せると、白鷹の腰にしがみついていた彼らは渋々といった顔をしてその腕を離していった。「後でな」と白鷹が言えば、「絶対だよ!」「ぜったい!」と強い眼差しが帰ってくる。これは中々に付き合わされるやもしれない。脳裏に手立てた予想にそれなりの覚悟をしながら、白鷹は門をくぐった。
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    soseki1_1

    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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