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    soseki1_1

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    淫魔🔮に出会って改善したことを証明したい大佐🤕の話/傭占
    ※事後

     そういう訳でナワーブには心配事があった。数年ぶり、人生の色々な苛烈を経てから恋や愛を注いだ相手である。心配など尽きることがなかったが、その中でも身近で、それなりに見過ごせるものがある。いつもは幸福そうに色づく体躯だとか、心底好きだと言外に伝えてくる神秘の瞳だとか、食むと甘く離せばしとどに愛を伝えてくれる唇だとかを目の当たりにして「まあ大丈夫なんだろう」と判断してきた。
     が、いつかはきちんと聞かないとならないと心に決めていた。何せ建前上は彼の身体を保護かつ監視するという名目で手を出しているし、愛しているという本心を鑑みても聞くべきなのだ。色が悪いどころか初め会った頃は透けてさえいた肌はだんだんと色を取り戻している。注意深く観察しているが、これといった不調は見受けられない。しかし彼は往来の生き方があまりに悲惨だった為か、無理をすることに慣れきっていた。そしてナワーブは彼を愛していたので、そんな無理はひとかけらもして欲しくなかったのだ。
     人とそっくりだけれど人ではなく、淫魔という人外らしい彼にとって、精液だ栄養の一種だ。何よりも栄養価の高いものである。その精液に問題があっては堪らない。他人の物を飲ませる訳に行かないが、改善のため尽力はしなければならない。彼が幸福そうにする上、具合も良さそうなので聞かずにいたが、今日は一度のみの性交で終え、腕の中で幸福に微笑む彼に疲弊も滲んでいなかった。今日も今日とて丹念に愛したので取り繕う余暇はないだろう。ナワーブはそう判断して、兼ねてからの疑問を口にした。
    「俺の、それは美味いのか?」
     端的に単語を口にしかけて、止めた。ムードを気に掛ける繊細さなど持ち合わせていないものの、大切にするべきだとは思った。彼のことも同じように大切だったために。
     ナワーブの腕に頭を乗せて微睡んでいたイライがゆっくりと瞬く。長く美しい睫毛が鎖骨の皮膚を擽る。聡明さはほどけ、神秘の眼は蕩けてぼんやりとしていたので、彼はうっとりと質問を飲み込む。ナワーブはじっくりと待った。自分の問いかけを飲み込んでいく様を見詰めた。瞬きすら愛おしくてならなかった。
    「おいしいよ」イライは言いながら頬を寄せ、微笑んだ唇で睫毛が撫でた鎖骨にキスをした「大好き」
     一瞬ほど、ナワーブは固まった。声にも頬にも身体にも動揺の片鱗は出ず、思考だけがぴったりと一瞬止まった。そして一瞬後、ナワーブは手を擡げて擦り寄る栗色の頭へとやった。滲んでいた汗が少し乾き始めて、程よくしっとりとする短い髪を優しく撫でる。それは彼なりの愛情表現だった。可愛い。俺は大好きどころか愛している。そう口に出来ない葛藤を愛撫で誤魔化した。あわよくば伝わればいいとすら思いながら撫でた。この存在は決定的なまでに自尊心が欠如しているとナワーブは知り得ていたので、言葉も添えることにした。
    「お前の方が美味いと思うが…」
    「ええ…?」
     とびきり幸福そうに掌を受け止めながら、イライは笑うような声を零した。
    「そんなはずないよ。多分苦いと思う」
     自分が愛されているとは露ほども思っていない可愛い人が、今日も今日とて愛情に気付かずそんなことを言う。
    「淫魔と人間の味覚は少し違うんだ。誰でも美味しくないものを食べたいとは思わないだろう? 人の性液を美味しく感じるようにできているんだよ。僕は君のことが好きだから、余計にそうなんだ」
     ナワーブは思考した。ナワーブは嘘が下手な訳がなかったが、イライには真実ばかりを伝えたいと思っていた。愛しているというとびっきりの真実は然るべき時が来るまで仕舞っておくものの、だからこそ、それ以外ではなるだけ優しい真実ばかりをあげたいと思った。そして実際、イライの体液は美味だった。口付けるときも程よく甘いし、時折性器を舐ってやるときも不思議と苦みは感じない。何故かは定かでないが、この誤解は解いておいた方が後々楽だろうなと判断できた。主に自分が彼を愛でるときのために、逃げ道を潰しておける。
    「人間と差異があるなら体液もそうなんじゃないか」
    「そう…そうかな…?」微笑んで知識を提供していたイライは、指摘に対し眉尻を下げた「ごめん。経験がないからわからないな…」
     淫魔というのは人間の愛情だとか性欲だとかを糧にするため、それを煽るように設計されているという。彼が作った料理が無意識に媚薬まがいの効果を発揮した時もあった。であればイライの体液を甘く感じることも、この男心を掴む物言いも全てその設計によるものだろうか。ナワーブは数秒だけ真実への探求を思考しようとし、止めた。どちらにしても愛おしいことに違いはないので。
    「確かめてみるか」
    「え?」
    「まだ出来るね?」
     聡明なくせに自身への愛欲に滅法鈍い彼は、けれども聡明なので、ここにきて向けられる熱情に気付いたようだ。腕の中から顔を上げた彼は、熱を孕んだ碧眼と出会う。あっ。と桃色が滲んだ白皙が再び赤く染まるのを見ながら、ナワーブは腰を抱いた。先程抱いたばかりの為に、指の形が赤く滲んでついている細腰だ。指の赤い跡が痣にならないよう避けて掴みながら、手に馴染むような肌を愛おしく思う。
    「でき、る」
     合図をやるように一度口づければ、離れた傍から返答がまろびでる。声が上ずり、小さい声量だった。口づけて引っ張り出したかのような声音の有り様だった。
     けれども次には、彼は両腕をナワーブの首の後ろへ回し、抱き寄せて自らキスをした。
    「確かめて」
     心底幸福そうな微笑みを前に胸が満たされていく心地に陥る。確かめる。だけで終わるだろうか。首を擡げる獣じみた本能を自覚しながら、ナワーブは疑惑を思った。無理だろうなと、疑惑は直ぐに解決する。無理に違いない。なにせナワーブはこの青年のことを愛していて、可愛くて仕方がないと思っている。のに、それを口に出すことは叶わないので、触れられるときにうんと愛することでそれを解消している。これもその機会のひとつに違いなかったので、確認というのはあくまで口実に過ぎないことなど明白だったのだ。
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    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
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    soseki1_1

    DOODLE本丸傭占奇譚
    「好きな奴が出来たんだと思う」
     言われたとき、なんのことだかさっぱり解らなかった。
    「主」
     そう続けられた言葉でようやく言葉の真意を理解できた。正しくは、広げていた雑誌を読めも見もできず何秒か握りしめ、畳んで、発言した加州清光の方を見て、数秒経ってようやく理解できた。皴のついたページは恋愛特集だった。時の政府が発行している月刊雑誌の中でも恋物語を中心に集めた一冊だ。毎月本丸の、自分の部屋に届くようにしてある雑誌を一文字則宗は横に置く。
    「まじか」
    「たぶんマジ」
     普段使わない一昔前の若者言葉がまろび出る。らしくないとは加州も解っていたろうが全く指摘されなかった。それだけの大事だった。
     この一文字則宗と加州清光が所属する本丸は、端的に言えば素晴らしく堅物なところである。質実剛健を絵に描いたような場所だ。審神者制度が樹立した最初期に設立し、今なお各任務で優秀な成績を残し続け、表彰式に呼ばれ過ぎて参列側じゃなく運営側に回ってしまうような所である。そんな本丸を運営する審神者は、本丸の有り様と同様の人間であった。則宗からすれば朴訥すぎるきらいさえあった。どこぞの国の軍人で、前線を経験しており、かつては大佐と呼ばれる地位にあったらしい。ここまでは本丸の誰もが知っている経歴だ。しかし則宗はもう少し込み入った事情まで知っていた。元監査官の特権だ。最前線を行く審神者の手に渡ると決まったとき、興味を持ってちょっと調べておいた。男には、前線にいたとき作戦の執行に問題があったと難癖をつけられ、結果部下三名を処刑された経歴があった。作戦外で、戦場外で部下を無駄死にさせた経験は男の精神を大層苛み、一時は、というより審神者の招集があるまでは病院に詰めていたらしい。樹立期における軍人経験のある審神者の登用は必死なもので、特に男は指揮力と前線経験のある経歴も申し分なかった。審神者当人は戦場に赴かず、前線に出るのも人間より幾倍も頑丈な刀剣男士だからと何度も説得されて首を縦に振ったらしい。だから審神者になったばかりの頃、刀装なしで初期刀を出陣させる指令にはたいへん反抗的な姿勢を見せたとか。政府に対する三日三晩に渡る必死の抗議と独自に作成したマニュアルにより、この出陣命令は見直され、今は初手の出陣で初期刀が重傷で帰城するようなことは少なくなったのだとか。そしてそういった改善が何件かあり、今では政府
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