青の園Ⅱ「冬の朝(モブ視点、天虎と风息) 私が生まれたのは、深い森に覆われた山間にある小さな村だ。祖父からは、ここは神様の住う土地だと教えられてきたけれど、そんなの昔話だ。皆が神様の事を思い出すのは、今はもうお祭りの時くらいで、勿論私は神様を見た事なんて無い。
東の空が白む頃、私は布団に包まったまま、姦しい鶏の鳴き声を聞いている。カンの上に布団を敷いているから、寝台はぬくぬくと温かく離れがたい。
あと五分、いいえ十分。ようやく決心して、えいと体を起こすと腊月の寒さに身震いする。井戸から汲み貯めた水で顔を清めると、指先が千切れそうな程冷たい。
朝餉の支度は、私の仕事だ。竈門に乾燥させた果樹の枝を放り投げて、鉄鍋に湯を沸かす。粥を炊くのと一緒に魚と野菜も蒸してしまう。
7020