ほんの少しの祝福をとある裂け目。現世幽世現実幻想エトセトラ。様々な世界の境界のスキマで日傘を差した少女が楽しそうに浮かんでいる。
ふらふら、ふわふわ、ふよふよ。
そうして少女はお目当ての世界を見つけたようで、日傘を差したままスキマに消えていった。
目まぐるしく数値が変わる装置や規則正しい電子音を刻む装置が所狭しと置かれた中を男が歩いている。身なりからは育ちの良いことが感じ取れるが、鋭い目付きやその眉間に刻み込まれた深い皺には近寄りがたい雰囲気がある。男は手元の書類を見て溜息をつく。どこかの馬鹿が好き放題やったせいで今回も赤字である。いくら説教をしたってまったくもって奴は聞く耳を持たない。もしや俺の説教の時だけ外部音声を切断しているのか?今度抜き打ちで検査してやるか。などと考えを巡らせながら装置の点検を終える。
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