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    yasumi_03

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    yasumi_03

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    ポイピクを昨日初めて知ったのでテスト投稿です。
    この話自体は昨年twitterにあげた天気の子SS(ほだひな)の再掲です。

    #天気の子
    childOfTheWeather
    #ほだひな
    eternalSunGoddess

    こたつよりも、ストーブよりも ピピピ、とタイマーが鳴った。
     仄かに香ってきた美味しそうな匂いが焼き上がり間近なことを告げている。
     こたつの対面に座っていた陽菜さんが、タイマーを止めストーブに駆け寄った。
    「あちち」
    「大丈夫?火傷しちゃうよ?」
     軍手も着けずに素手でストーブの上のお芋をひっくり返す彼女が心配になる。
    「平気平気。もう慣れっこだから」
     日頃から料理や家事をする陽菜さんの手は、その見た目に反し逞しいらしい。
    「でも危ないから、次は僕がやろうか?」
    「帆高に任せた方が心配」
    「こう見えてちゃんと一人暮らししてるんだけどなぁ」
     彼女の中での自分の評価が思った以上に伸びていないことがちょっと不服だ。
    「ちゃんと一人暮らししてる人は彼女に部屋の掃除なんてさせません」
    「サーセン」
     ぐうの音も出ない反論に謝ることしか出来ない。
     そんな僕の様子に陽菜さんはクスクスと笑いを零し、僕もそれにつられる。
    「それに、」
     ストーブから戻ってきた陽菜さんが僕の隣に座る。
    「帆高からこうやって近付いて来てくれないじゃん」
     ただでさえ狭いこたつに、二人で窮屈に入る。
     自ずと僕達は密着することになり、陽菜さんから女の人のいい香りがした。
     あの夏の日。水商売には向いていないと陽菜さんを評したが、今の彼女に同じ評価を下せそうにない。
     この三年の間、健康的に成長した彼女は以前とは比べ物にならないほど女性として魅力的になった。
     元からの可愛らしい容姿には更に磨きがかかり、華奢だった身体には程よく肉が付き艶めかしさを感じる。胸は、夏美さんがおかしいだけだ。
     ともかく、陽菜さんが女性として魅力溢れる成長を遂げたからこそ、僕としても迂闊に近付くことを避けていたんだ。
     少しでもタガが緩んだら、僕は自分を抑えられる自信がなかったから。
    「ねぇ、帆高」
     耳元で囁かれる自分の名前にビクッとした。そして、やけに熱っぽいその声に心臓が鼓動を早くする。
    「私、そんなに魅力ない?」
     視線を移すと不安そうな陽菜さんの顔が間近にあった。
    ーーそんなことないよ。
     そう伝えようとした理性を振り切って、本能が彼女を抱き寄せた。
     いきなり肩に手を回され「えっ」と漏らした息が甘美に響く。
     より密着度が増した陽菜さんのドキドキが伝わってくる。息遣いも感じる。体温も。ビクッと驚いたことも。ちょっと身を固くしたことも。全部、全部。
    「陽菜」
     先程のお返しとばかりに耳元でその名前を呼ぶと、強張りが一層増した。
    「陽菜は凄く魅力的だよ。僕だってこれでも必死に抑えてるんだ」
     このドキドキは僕のものか、陽菜のものか。
     二人の鼓動が、熱が、呼吸が、交わり、混ざり合い、溶けていく。
     これまでも陽菜と一緒に居て幸せや喜びは十分感じて来た。
     でも、今感じている言い様の無い、切ないとさえ形容できる時間は初めてだ。繋ぎ留めたい。止まって欲しい。ずっとこのまま……。
     僕は思わず彼女の唇を奪った。
     こんな乱暴にキスをしたのは初めてかもしれない。
     いきなりのことで陽菜が驚いたことが肩に回した手から伝わってきたが、直ぐにその力は抜かれ、僕にその身を任せてきた。
    「陽菜」
    「帆高……」
     その声は先程より艶めかしく、どちらからともなく身を横に倒した。
     僕の意識は目の前の彼女に固定され、彼女もまた僕だけしか見ていない。
     ゆっくり顔を近付けると彼女の瞼が徐に閉じられ、口元がほんの少し強張った様にキュッと引き結ばれた。
     余裕をなくした僕はその事に気付けない。
     溶けあった二人の意識の下、僕は陽菜を求めるだけの獣に成り果てた。
     五感は全て陽菜を貪る為に機能していた。それ以外の何もかもが意識の外に追いやられる。
     外に降り続く雪のことも、窓の外に広がる極寒の世界のことも、脚に当たるこたつの熱源のことも、ストーブがもたらす必要以上の熱も。
     何もかもを忘れて……。
     忘れ……。
     忘……。
     …………。

     臭い。
     その瞬間、一気に鼻腔を物凄い危機的匂いが駆け巡った。
     それは何かが焦げる匂い。
     ガバッと顔を上げストーブに目を向ける。
     先程までの香しい匂いはなくなり、部屋に芋が炭化する匂いが充満する。
     思わずストーブに駆け寄り芋を掴む。
    「あっつっ!」
     余りの熱さに情けない声が出る。
     反射的に上げた脚が思いっきりストーブに当たり、自動消火機能がバチンッ!と作動した。
     ジンジンと痛む脚を我慢して何とか全ての芋をストーブから除き、ホッと一息つくとクスクス笑う陽菜さんの声に気付いた。
    「な、なんだよ」
    「だって、さっきまであんな狼みたいな雰囲気だったのに」
     途端に顔が熱くなる。
    「帆高ってさ、そう言うところがちょっと残念だよね」
    「サーセン……」
     反論の余地もなく、ポリポリと頭を掻く。
    「でも、そんな所も好きだよ」
     こたつに頬杖を突き慈しむように目を細める陽菜さんが眩しい。
     多分これからも、陽菜さんには頭が上がらない気がする。

     部屋に充満する焦げ臭さを換気をする為に窓を開けると、途端に冬の寒さが部屋に押入ってきた。
    「あ、ごめん。ストーブ点けるのが先だったね」
     慌てて向き直った僕を陽菜さんが抱き締めてきた。
    「いいの。もう少し、帆高の熱を感じてたいから………………」
     そう言うセリフを不用意に発しないで欲しい。
     一度は引っ込んだ僕の中の獣が改めて首を擡げる。
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