分裂🏹 龍羽 夏真っ盛り。冷房もないこの石世界でも、温暖化が治まっているとはいえ、毎日暑い日が続いていた。
毎晩暑さにうんざりしながら床につき、毎朝暑さに起こされる。今朝もそうだ。まだ日も昇りきっていないのに、無性に暑くて目が覚めてしまった。
汗で周りの布がじっとりと張り付いてくる。暑い。暑すぎる。まるで誰かに抱きつかれているような……いや、ようなじゃない。抱きつかれている。誰かの体温と音を僕の胸元から感じる。
そっと手を動かして確認する。大人だ。子どもたちの誰かかと思っていたのだが。骨格がしっかりしていることから、男だとわかる。
大人の男と寝るような事態になった記憶がない。周りを見渡しても全員各々の布団の上で寝ている。一体誰なんだ。
恐る恐る自分の胸元を見る。ちらりと見えたのは、銀髪の丸い頭と黄色い服。科学王国面々の特徴を思い浮かべるも、当てはまるのが一人しか浮かばない。ただ、その一人がここにいるはずがない。絶対にあり得ない。
混乱して硬直している間に、その男も目が覚めたらしい。「うぅん……」という声が出てすぐにもぞもぞと動き始めた。あつい、と離れて目を開けて僕の方を見る。そしてにこりと笑った。
「おはよう、ぼく」
その見た目と聞こえた声は、どう見聞きしても僕だった。