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    ranrann315

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    #あたなる異能力妄想


    前提として

    ・四宮伊織(@iori_shinomiya)さんの「あたなる異能力妄想」を踏まえた二次創作です。(URLは本文中にて紹介しております)


    注意

    ・”死に関する表現”が含まれます。
    ・基本的に四宮さんとぜろつーさんしか登場いたしません。
    ・もう一度注記いたしますが負け方の妄想ですので登場人物について”死に関する表現”があります。くれぐれもご注意ください。

    Monochrome・・・





    つまらない。
    自分も、世界も、未来も。

    壊したい。
    自分も、世界も、未来も。

    辟易している。
    自分も、世界も、未来も。

    楽しみたい。
    自分も、世界も、未来も。



    ふと、どこからか波の音が聞こえた気がした。
    瞼に極彩色が点滅する。
    指先を冷えたふちに乗せる。
    遠ざかる音と寄り添う孤独に海が凪いだ。
    一呼吸置いてゆっくりと瞼を開く。

    目の前には同じ顔が何の感慨もなさそうに立っていた。





    ・・・





    「伊織君、右」

    「了解」

    短い会話の後、今まさに飛び掛からんとしていた黒服が突然地に伏す。
    一体何が起こったのだろうか。不可解な仲間の姿を見て反対側から来ていた男が思わず足を止める。それを見やった赤色の左目がすっと細まった。

    「戦場で足を止めちゃあ駄目じゃないか。」

    嘲笑を滲ませた声がすぐ後ろから発せられる。あり得ない、と振り向くまでの猶予も与えられることはなかった。鈍く何かが折れる音がする。目を見開いたまま倒れる男の首は許容範囲を超えてくるりと滑稽な程に回っていた。

    「さて、物語を作ろうか。」





    ・・・





    気付けば辺りはすっかり静まりかえっていた。
    当たり前だ。死体は喋らない。
    重なるようにして落ちているそれを避けて歩みを進める。
    後方にいた彫りの深い男。黒服が守ろうとしていたのは間違いなくこの男だった。
    既に事切れて服を汚すばかりのこれが今回の目的だろう。こいつが持っている情報データを回収すれば今日の仕事は終わりだ。

    「お疲れ様。」

    「うん。そっちこそね。」

    「僕は別に。でも君はちょっと能力を使い過ぎてる。」

    件の死体の荷物を漁っていた伊織君がこちらを見ないまま言葉だけを寄越す。

    「そんなことないと思うよ?……でも心配してくれてるのかな、ありがとう。」

    能力の酷使を気遣ってくれているのだろう。意外と気を配れるのだと知ったのはいつだったか。
    そんなことを何となく思っていると、伊織君が何かを見つけたようでぱっと立ち上がった。

    「データ、あったわ。」

    「お、良かった~。じゃあ用もないし帰ろうか。」

    ポケットにしまうのを横目に再び足を進める。予定より早く終わって良かった。帰ってシャワーを浴びたらどこかへ行くのも良いかもしれない。

    「伊織君と組むと見える未来が広がってすごいやりやすいんだよね。」

    道すがら呟く。自分に授けられた二秒先の起こり得る未来を見て選べるという能力は、その性質上選択肢自体を選ぶことは出来ない。その点彼といると選べることが増える。彼の見せる未来は実に様々で新鮮だった。

    「僕もぜろつーさんといるとこの能力は使いやすいよ。」

    「そう言ってもらえると嬉しいね。」

    以前、彼が能力について軽く話してくれた時自分ではどんな結果を引き起こすのか実際に使うまで分からないのだと言っていた。
    使いやすいということは昔どこかで失敗したことがあるのだろうか。
    ……そういえば、あまり彼の過去を知らない。とはいえこれに関してはお互い様ではあるけれど。何とはなしに尋ねてみるが、敢え無く否定されてしまう。
    笑い飛ばしていたものの、なんとなく深掘りしない方が良い気がして話題を切り替える。いつか知るべきことならばいつか聞けるだろう。
    そのまま取り留めのない会話が続く。彼は話をするのが上手だと思う。彼の近くで沈黙が帳を下ろすことなんてない。



    そうして歩いていた刹那、急に今まで感じたことがない程の嫌な予感が背筋を刺す。
    どこかで風の音が聞こえた気がした。

    反射的に二秒後を求める。

    「!?」

    映し出されるのは赤色。幾通りもの可能性が一色に染まっていた。
    銃弾で胸を貫かれる自身の姿、伊織君の頭を貫通していく銃弾、庇おうとする自分の身体ごと二人を貫いていく銃弾と血飛沫。二秒後に二人が生きている未来は起こり得ないものとして物語は繋がっていく。


    「……伊織君!後ろに下がって!!」

    「……!」

    己か、友人か。
    取捨選択をするにはあまりに短い時間。彼を選んだのは情故かプライドか。

    咄嗟の声に驚いた表情を浮かべた彼は何か危険が迫っていることを感じたのだろう。いつものように俺の指示に従って後退する……ことはしなかった。
    とん、と地面を蹴ってこっちに駆けてくる。制止するほどの時間は残っていない。

    「伊織く———」

    ついさっき見た可能性の一つが流れる。目の前で今が進んでいく。自分の身体がバランスを崩して後ろに倒れる。片足が上がってふわりと宙に浮く感覚。見ると、伊織君が俺を突き飛ばしていた。両腕をこちらに突き出したその時。
    彼の胸を銃弾が貫いた。

    みるみる内に赤い染みが広がっていく。どさりと倒れる音が聞こえる。駆け寄りたい気持ちはあれど、未だ危険は去っていない。再び瞳に力を入れる。二秒後、再び銃弾がこちらを狙う未来が見える。避ける未来を手繰り寄せると、再び銃弾がこちらに向かってくる未来を見る。埒が明かない。懐からナイフを取り出し、見えた弾道に這わせてその軌道をずらす。銃弾は腕に当たるものの、死ぬような傷ではない。弾が飛んできた方向……狙撃手のいる方向を見ると、遥か遠くの方で何かが動いた気がした。硝煙か、燻る影が一瞬見えた気がする。警戒して能力を使用し続けるものの一向に撃たれる気配がない。奴は去ったのだろうか。
    警戒は緩めないままに、急いで彼のもとに駆け寄る。

    「伊織君!伊織君!」

    名前を呼ぶ。彼は不規則に息を零すばかりで目は虚ろだった。肩で息をしながら、時折苦しそうに眉を顰める。しかしその反応も段々と鈍くなっていくのが見て取れる。
    さっき見た染みは広がるばかりで、当てている手は気休めにしかなっていないようだった。
    助からないだろう。そう今までの経験が言っている。すぐに死ぬ、ということも。

    「…ぜ……つー、……」

    ほとんど音になってはいなかったが、名前を呼ばれたことは分かった。
    聞き取れるように顔を近付ける。
    喘鳴に交じって声が紡がれる。

    「      」

    震えていて少し歪だったものの彼の口元は笑っていた。
    目を伏せたまま、胸に置かれていた腕がだらりと垂れる。
    僅かに動いていた肩が力をなくす。



    死体なんて文字通り見慣れているはずだった。拒絶した悪夢に幾度となく現れてきたのだから。嫌になるほど見てきたはずだった。剣で胸を切られて。首の骨を折られて。爆発に巻き込まれて。銃で射抜かれて。四肢をもがれて。車にはねられて。怪物に成り果てて。泉で溺れて。
    見てきたはずだった。
    それなのに、目の前のたった一つの死体を見ただけで何も出来ずにいる。

    「伊織君……。」

    静かだった。
    当たり前だ。……死体が喋る訳がない。

    どうしてこんな未来が来てしまったのだろう。
    こんなはずではなかった。
    いつものように仕事を終えて、いつものように軽口をたたきながら帰るはずだった。
    そうしたかった。

    「まだ、まだ何とか……!」

    目に力を込める。一つで良い。どこかにまだ可能性が残されていないか。
    見る。血眼になって探す。でも、ない。隅まで見てもなかった。

    「ないのか……何か、何か……。」

    散々呪った神だって良い。今を変えてくれるって言うなら膝くらいはついてやる。
    もう一度戻れたらもっと上手くやれる。


    神も天使もいない。結果の逆算から生まれた彼らに結果を変えることなど出来ない。
    土埃がつくことも厭わず彼の隣にしゃがみこむ。お気に入りだと言っていたパーカーには赤い染みがべっとりとついていた。その上にはらりと落ちた白い毛束が擦れて滲む。

    少しの間見つめた後、指の腹で瞼を下ろしてやる。
    そうしてまたしばらくその場にとどまった末にゆっくりと立ち上がった。
    口を開く者なんていない。
    厚い静寂が立ち込めていた。





    ・・・





    つまらない。
    かつて彼は言った。自分も、世界も、未来も、全てがつまらないと。

    壊したい。
    かつて彼は言った。自分も、世界も、未来も、全てを壊してしまいたいと。

    辟易している。
    かつて彼は言った。自分に、世界に、未来に、全てに辟易していると。

    楽しみたい。
    かつて彼は言った。自分を、世界を、未来を、全てを楽しみたいのだと。



    傷口を抑えて、震える唇と漏れ続ける息の合間に。
    「楽しかった。」
    彼はそう俺に言った。ただそれだけを言って死んでいった。

    本心か慰めか、それを知る術はもうない。
    死人に口なしとはよく言ったものだ。罪悪感ごと持っていく言葉に委ねればそれで終わるのだから。

    死んだらどこに行くのだろうか。天か、暗闇か、海か、あるいは無か。
    考えるだけ無駄だと理解している。突飛な世界が二秒後に広がることなどない。死んだら分かる、ただそれだけだ。

    ざざ、と波の音がどこからか聞こえてくる。ノイズに近い音。耳の奥が痛む。
    ぐらり。視界が歪む。思わず目を閉じる。赤。黒。黄。緑。派手な彩色が弾けてそして消えていく。思わず洗面所の縁に手をついた。段々と身体が元通りになっていく感覚がある。気が付けばもうすっかり静かだった。ゆっくりと瞼を開く。

    目の前の男は、わらっていた。





    Fin.





















    異能力の設定について 

    あたなる異能力妄想(全編)/四宮伊織
    https://iori.fanbox.cc/posts/2846348 
    あたなる異能力妄想(後編)/四宮伊織
    https://iori.fanbox.cc/posts/3239019 

    また、白夜零兎/ぜろつー(@zero2_trpg)さんも能力考察を行っておりこちらも素敵なので掲載させていただきます。
    あたたかくなるメンバー能力考察
    https://note.com/zerotwo_vtuber/n/n0a0912b20797 










    本編、終わり 以下、長い垂れ流し



    ぜろつーさんは未来を選んで手繰り寄せることは出来ても「起こり得る未来」というプールは選べないんだよね、でも四宮伊織の能力をもってすればそのプールを大幅に増やせそうだよね、四宮伊織としても能力の効果の不確実性が減るからよさそう、というところから始まった話。あとオタクは「負け方」を考えがちだって偉い人が言ってた。わかる。

    以下ちょっとした解説(言い訳)。ぜろつーさんの能力に関して、「様々な未来の可能性を映し出す」ステップと「見た未来の可能性を手繰り寄せる」ステップに分けた解釈を行っています。そのためぜろつーさんが「映し出す」→四宮さんの能力を使うことが最善の未来だと判断→四宮さんが能力を使用(四宮さんの能力を使う必要がないと判断した場合はそのまま最善と判断した未来を「手繰り寄せる」)というスタイルをとっています。なんとなく妄想ですが(そもそもすべてが妄想ですがね)友人に対して自身の能力で何かを強制させるのは嫌だという人間感情があっても良いかなという思いでこのような形になりました。その結果想定した未来にならなかった訳ですけども。不条理が好きなオタク心も、ある。ちなみに四宮さんの能力を使えば銃弾を無力化出来ると思いますが、銃弾の存在を認識していない以上その存在を教えて能力を使ってもらう必要があるため二秒では間に合わんやろなという見解です。狙撃手などに関する設定は一応全て固まっていますが伏せておきます。対戦よろしくお願いいたします。

    最後に、筆者は四宮伊織の書く文章やゲームシナリオが好きなので失礼ながら引用させていただきました。後者に関してはネタバレを含む可能性があるため詳しく言及いたしませんがそちらもおすすめなのでぜひに。

    書きたいところだけを書いた拙文でしたがお付き合い下さりありがとうございました! 
    そして素敵な異能力妄想をくださった四宮伊織さんにも重ねて感謝を。飯が非常にうまかったです。

    2022.01.10

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    前提として

    ・四宮伊織(@iori_shinomiya)さんの「あたなる異能力妄想」を踏まえた二次創作です。(URLは本文中にて紹介しております)


    注意

    ・”死に関する表現”が含まれます。
    ・基本的に四宮さんとぜろつーさんしか登場いたしません。
    ・もう一度注記いたしますが負け方の妄想ですので登場人物について”死に関する表現”があります。くれぐれもご注意ください。
    Monochrome・・・





    つまらない。
    自分も、世界も、未来も。

    壊したい。
    自分も、世界も、未来も。

    辟易している。
    自分も、世界も、未来も。

    楽しみたい。
    自分も、世界も、未来も。



    ふと、どこからか波の音が聞こえた気がした。
    瞼に極彩色が点滅する。
    指先を冷えたふちに乗せる。
    遠ざかる音と寄り添う孤独に海が凪いだ。
    一呼吸置いてゆっくりと瞼を開く。

    目の前には同じ顔が何の感慨もなさそうに立っていた。





    ・・・





    「伊織君、右」

    「了解」

    短い会話の後、今まさに飛び掛からんとしていた黒服が突然地に伏す。
    一体何が起こったのだろうか。不可解な仲間の姿を見て反対側から来ていた男が思わず足を止める。それを見やった赤色の左目がすっと細まった。

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