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    もんトラと虎於が一緒に住んでる話。
    もんトラ視点なので、ひらがなばっかり。

    もんトラのおるすばん「それじゃあ、行ってくる。良い子で待ってろよ。」
    そういって大きな手でからだぜんぶをつつむようになでられる。このあたたかい手でなでられると、ぽかぽかしてきもちがいい。もっとなでてほしい、と思うけどとらおはこれからおしごとにいくのだ。わがままを言ってはいけない、とぐっとがまんする。
    「トララ!」
    大きなこえでへんじをすれば、おれよりもずっとたかいばしょでわらった声がした。さいごにもう一回だけなでてから、ぽかぽかした手ははなれていった。
    ガチャン、と大きい音がした。
    今日のおれのにんむは『おるすばん』だ。おしごとのばしょによっては、おれもつれていってくれるけど、今日はいそがしいからだめらしい。そんな日は、ひとりでいえにいるのだ。
    どこのへやにいてもいいけれど、あぶないことはしない。そとにはでない。
    とらおとのやくそくを思い出しながら、ぎゅっと手をにぎってきあいをいれた。

    とはいえ、『おるすばん』は今までにもしたことがある。だいたいどこかのへやをたんけんしているうちに、ねむたくなってしまってベッドでねむる。そうしたら、とらおがかえってくるドアの音で目がさめて、おむかえにいくんだ。
    さて、今日はどこのへやをたんけんしよう。リビングはいつもいるし、しあたあるーむはおとといいったし、げすとるーむもこの前あそんだし。う~ん、とかんがえてひらめいた。ベッドるーむはいつもねむりに行くだけでたんけんしたことない。きょうのたんけんさきはベッドるーむにしよう。
    ぴょん、とソファからとびおりてベッドるーむをめざす。てちてちと長いろうかを歩いて、とらおが少しだけ開いてくれているドアのすきまに体をすべりこませればもくてきのばしょにとうちゃくだ。
    きょろきょろとあたりをみまわすものの、やはりこのへやで目をひくのはひとつだけだ。いつもとらおがねている大きなベッドを見上げる。ふかふかできもちよさそうだ。よいしょ、とシーツのはしっこをつかみながら、少しずつ上へとのぼっていく。何回かすべりおちることもあり、長い時間をかけてしまったがベッドの上にたどりつくことにせいこうした。まぁ、おれにかかればこれくらいできてとうぜんだな。
    「トララ~!」
    ふふん、とたっせいかんをあじわっていると、ふとすぐ近く小さなたなの上に何かがのっているこにきがついた。ぴょん、とたなへととびうつって近くでかんさつする。それはぎんいろのゆびわだった。カーテンのわずかなすきまから入るたいようの光をあびてきらきらしている。きれいだ。そう思って、手をのばしたのがまずかったのか。ゆびわはころり、ところがってたなの下に入りこんでしまった。
    「トラ?!」
    あわててベッドからとびおりて手をのばすけれど、おれのみじかい手ではとどかなかった。なんとたなの下にはいりこめないかとあたまからつっこめば、とちゅうでつっかえてしまう。かんたんにもどることもできなくなってしまい、手足をばたばたとうごかす。
    「トラ!?トラ?!」
    すぽん、となんとか体はぬけたけれどゆびわはとれなかった。ゆかに体をたおして、のぞきこむとたなのちょうどまんなかくらいにゆびわがあるのが見えた。
    とどかない、どうしよう。
    「トラ……。」
    たなのあしをひっぱって、ずらせないかとがんばるけどぴくりともしなかった。じわ、となみだがうかんでくる。
    とらおのたいせつなものかもしれないのに。おれのせいで、ゆびわとれなくなっちゃった。
    ぎゅ、と手にちからをこめる。あきらめたらだめだ。もう一回がんばろう。
    たなの下に手を入れる。とどかない。
    体を入れる。入らない。
    たなをひっぱる。うごかない。
    たなをおす。うごかない。

    何回も何回もくりかえしているうちに、とおいばしょでガチャという音がした。
    「ただいま。……もんトラ?寝てるのか?」
    とらおの声だ。もうかえってきたのか。かべにかかっているとけいを見たら、もういつもならでぃなーのじかんになっていた。どうしよう、ゆびわとれてない。
    「もんトラ?」
    キィ、とこんどはすぐ近くで音がする。そっちをむけばとらおが立っていた。
    「なんだ起きてたのか、ただいま。」
    「トラ……。」
    「良い子にしてたか?」
    おれ、いいこなんかじゃない。
    とらおのことばにぼろり、となみだがこぼれる。
    どうしよう、いいこにしてろって言われたのに、できなかった。とらおはおれのこときらいになるかな。すてられちゃう。いやだ。でも、とらおのだいじなものなくしちゃったんだもん。どうしよう。おれ、わるいこだ。
    「トラ~……!!!」
    「もんトラ?!どうした?!」
    あわててとらおがちかよって、大きな手ですくいあげてくれる。おれの大好きなぽかぽかしたあたたかい手。うれしいのに、すごくかなしい。
    「トラッ…!トラッ…!」
    「本当にどうしたんだ……?お前ほこりまみれだし、何してたんだ?」
    「……トラァ…。」
    いつまでもないていてもしかたない。ちゃんととらおにせつめいして、あやまらないと。かくごをきめて、おれのしっぱいをはなすためにとらおのおやゆびについているゆびわをたたいた。
    「……なんだ?ゆび……?指輪か?」
    「トラ……。」
    こくん、とうなづく。そして、つぎにたなの上を、さいごにたなの下をゆびさせばとらおにはつたわったらしい。おれをそっとベッドの上においてたなの下をのぞきこんでいた。
    もうとらおにもわかっただろう。あやまらないと。
    「トラァ……!!」
    「お前、指輪落としたの取ろうとしてそんなことになったのか?」
    「トラ……。」

    「ふ、あはは!」
    きゅうにとらおがわらいはじめた。おこってないの。
    「トラ……?」
    「このくらいすぐに取れるよ。」
    そういって、とらおはたなをかるくもちあげてよこにずらした。おれがどれだけがんばってもぜんぜんうごかなかったのに。とらおすごい。そして、すがたをあらわしたゆびわをひろいあげて、おれに見せてくれた。
    「俺もお前が届くような位置に置いていたのが悪かったし、気にするな。」
    「トラァ……!!」
    ぎゅう、ととらおのおなかあたりにだきついた。
    よかった。ゆびわとれた。とらおもおこってない。きらわれない、すてられない。よかった。
    そのまましばらくとらおにだきついたままでいればくるる、とおなかがなった。
    「お腹空いたのか?」
    「トラ……。」
    あんしんしたらおなかがすいた。そういえば今日はランチもおやつもたべていない。ものすごくおなかがすいた。ぎゅう、ととらおにだきついたままごはんがたべたいとあぴーるした。そうすればひょい、ととらおはおれをもちあげてベッドるーむからでてくれた。けれどむかうさきはリビングではなかった。
    「だが、今日は先にシャワーだな。」
    おれ、ほこりまみれなんだった。

    そのあと、ひのきのたらいで体をていねいにあらわれているうちにねむってしまい、おきたのはつぎの日のあさだった。ディナーをたべそこねたことにきがついて、おちこんだ。
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