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    uekikabeuchi

    月鯉が気になりすぎた
    書き終わったやつ大体ピクシブ
    https://www.pixiv.net/users/361405
    にあげがちなので結構重複した状態になっている・・・かと・・・!すみません!
    スタンプありがとうございますヽ(*´∀`)ノわーい

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    uekikabeuchi

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    現パロの鯉登のお兄さんと友達の月島とちっちゃい鯉登さんとの話(半年位前に書いてた月鯉の加筆修正)ジューンブライドですねっ

    ##月鯉
    #月鯉
    Tsukishima/Koito

    といえ「わたしのかわいい弟と結婚の約束をしたのか?」
     校舎の廊下で呼び止めてきた友に出会い頭にそう問われて、月島はぽかんと口を開けて固まった。
    「結婚?」
    「ああ、先週の日曜の話なんだが。」
    対する友・・・平之丞は口元は微笑んでいるけれど内から放っている威圧感が全く隠せていない。平素は菩薩のような穏やかな男が珍しい、と月島は内心首を傾げた。今はまるで菩薩の面を顔に貼り付けた般若だ。
    「覚えがない。先週の日曜・・・? そんな話は一度も・・・」
     困惑しながらそう答えつつ、だがこの男が何の根拠もなくそんな話をしてくるとはとても思えない、と目を瞑って月島は件の先週の日曜に想いを馳せた。
    「・・・そういえばあの子に連れションに行こうと誘われたけど結局行かずじまいだったな。」
     
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    月島は碌でもない父から距離を置くため実家から遠く離れた寮のある高校に入学し、そこで実家から学校に通っている平之丞と出会った。生まれも育ちも違う二人だったが、次第に意気投合して仲良くなった。
    ある日、月島の父の話を聞いた平之丞は思いつめたような顔でこう切り出した。
    「月島、あのな、今度わたしのかわいい弟に会うか?」
    「は?」
    「いや、おまえには何か・・・癒されることが必要だと思うんだ・・・」
    「お、おう。」
    自分の弟に会ったらあまりの可愛さに思わず癒されるだろうという友人の絶対的な自信に月島は口を開いたまま固まった。兄弟持ちはえてしてそういうものなのだろうか? 聞けば年の離れた弟で今年で三歳になるのだという。むしろ生意気の盛りではないだろうか。
     
    そうして月島はしばしば休みの日に平之丞に家に呼ばれては友人の弟の遊び相手になるようになった。弟は父親譲りなのだという小麦色の肌をした、顔は友人にそっくりな洟垂れ小僧だった。

     月島がその弟に敬語で話しているのをある日見かけた同級生は「おまえ、その子の執事なのかよ」とからかってきたが、月島は変わらず友人の十以上も年の離れた弟への敬語を貫き通した。経緯を話すと長くなるが、一度その弟と二人で散歩している時に通りがかった公園で、同級生達が小学生達にこれからここで球技をする、邪魔だから出て行けなどとすごんでいるのを見かけた月島は、少し離れた所で不安げにそれを傍観していた別の同級生達の間を「どけ」と言いながら抜けて特に居丈高な態度を取っている少年の前に立ち、そもそもここは球技禁止の場だ、小学生相手に大人気ないことをするなと鋭い瞳で淡々と諭したのだった。月島の腕っ節を知っている同級生達はすごすごと去っていった。
    その時の月島が弟君にはひどく好ましく映ったらしく、その後平之丞から、わたしのかわいい弟がお気に入りの小さいトナカイと大型船のぬいぐるみを向き合わせては「どけっ!」と言いながら喜々として遊ぶようになってしまった、どこであんな言葉を覚えてきたのか、まさかわたしの知らない所で誰かに面と向かってそんなことを言われたのだろうか・・・とほろほろ涙を流しながら相談され、月島は思わず遠い目をした。(弟のそんな姿を目撃した平之丞があまりの衝撃でそれまで皆勤だった学校を休んで寝込んだことも月島の罪悪感に拍車をかけた。)
    それ以来月島は友の弟への敬語を貫き通している。考えてみたら月島の乱暴な言葉遣いはあの碌でもない父親譲りだ。そんなものでこのまっさらな子を知らず知らずのうちに染めたくはなかった。


    「おいと といえ すっ?」 
    先週の日曜日。
    ソファの脇からぴょこりと頭を出して首をことりと傾けた幼児にそう問われ、月島はしばらく考えて(トイレする・・・つまり連れションのことか・・・?)と独り合点した。まだ小さい子だ、大好きな兄の友達として随分慕ってくれてしきりと名前を呼んでくれるが「月島」が「ちゅきちま」になりがちな子だ、しかも名前が四文字なのも長くてつらかったのか最近は「ちゅき!」と省略して呼んでくるぐらいだ、ラ行の発音にはまだ早いのだろう。いつもの通りまるい目をくるくるとさせてソファの向こう側でぴょこぴょこと跳ね元気そうに見えるけれど、もしかすると背伸びして怖い絵本でも見てしまって一人でトイレに行くのが怖いのかもしれない。
    「もちろん。」
    手に吸い付くようなもちもちの頬を両手で挟んで月島は微笑んだ。
    「したいときに言ってください。いつでも駆けつけますから。」
    幼子はふにゃりと微笑んだ。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


    「連れション?」
     眼前の平之丞から荒ぶる菩薩の面が剥がれ落ちて訝しそうな兄の顔に戻った。
    「もしかして・・・『トイレ』?」
    「ああ、」
    「正確にいうと『といえ』だったりしたか?」「そうだな」
    「馬鹿すったれ『といえ』と『トイレ』はちごっ! 『といえ』はこちら語で『結婚』じゃ!!!!」
    友人の声帯から発せられた爆音で廊下の窓がことごとく粉々になった。
    「?!!」
    「・・・いや、すまない、お前は何も知らなかったのだから・・・弟にもくれぐれも言っておく・・・方言がこんな勘違いによる悲劇を産むということを・・・」
    友人は儚げに微笑むと何事もなかったように去っていった。粉砕された窓から吹き込む冷気に晒されながら月島は呆然と立ち尽くした。


    その翌日、月島は落ち着きを取り戻した平之丞から父親の仕事の関係で急な話ではあるが一家で一週間後に北海道に引っ越す予定なのだと話を聞いた。数日前に両親が兄弟にその話をした際、弟は目に涙をいっぱい溜めて、それなら月島と結婚するからここに残る、この間いつでもしたいときにしてくれるって言ってくれた、と言ったのだそうだ。
    「もしそれが本当だったら止めるつもりだったのか」
    あの日の苛烈な怒りのオーラを思い返して月島がそう訊ねると、
    「止めるも何も、どちらも十八にならないと結婚はできないだろう? おまえだってまだできないし弟なんてあと十五年は無理だ。それなのに『いつでもしたい時に』なんていい加減なことを言っていたのなら弟を落胆させるなと怒るつもりだった」
    と平之丞は真面目に答えた。
    「そこなのか」

    急に決まった辞令で引越準備が慌ただしいとのことで、結局その後月島は友人の弟に会えなかった。ただ、もしかすると一度会わせてしまったら引き剥がすのに苦労するかもしれないという両親の判断だったのかもしれない。
    その後平之丞が引越し前にと移動手段である船の上で撮った動画を送ってきてくれたが、友人の溺愛する弟は泣きはらしたような目でそれでもにっこり微笑んで両手でこちらに手を振った。
    「ちゅきちま、ちゅき。」

    ここに来て月島は、ようやくあの「ちゅき」が名前を省略していたわけではなく、あの子が使えた唯一の標準語だったことを悟った。


    それから十数年後、再会した友人の弟君・・・音之進が訛りの全くない標準語を使いこなし、あまつさえ稀に方言が出てもあまりの速さに薩摩弁の話者でなければ聞き取れないという仕様になっていたことに、きっと兄の教育の賜物だな・・・と月島は偶々その場にはいなかった平之丞に想いを馳せた。


    それはそれとして、当時の幼子のプロポーズが無効になったかはまた別の話である。
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