雨に打たれて.
雨が上がるのを待っていた。
放課後、出発前に天気予報も何も見ていなかった環は、左手をランドセルの肩ベルトに、傘もカッパも持っていない右手を宙ぶらりんにして、重い雲がかかった空を見上げていた。
雨は地面に強く叩きつけられていて、1度地面に落ちて散った飛沫が、時折短パン姿の環の脛に当たっている。それは下駄箱すぐの昇降口の屋根下ギリギリに立っているせいなのだが、環はそこから学校の中へ戻ろうとはしなかった。なんとなく、雲の薄さ具合から雨が上がるとまでは行かなくとも弱まりそうで、走って帰れそうな気がしたからだ。
そんなことを考えて、はや二十分ほど。周りを見渡すと、もう他の生徒は見当たらなかった。こんな土砂降りの日に校庭で遊ぶ人間はさすがに居ないし、ほとんどの者は傘をきちんと持ってきていた。中には環と同じように雨上がりを待っている生徒もいたが、すぐ痺れを切らして友達と一緒に走って帰ってしまった。
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