クリリクロミジュリパロいずれもおとらぬ二つの名家、この街を牛耳り、縄張り争いを長年繰り広げる、ダルトン家とブース家のひとり息子たちは、それぞれリックとクリフといった。
リックは今年19歳になる美しい青年で、華奢ではかなげな容姿を裏切る気性の持ち主だ。粗野な取り巻きに囲まれて、または気まぐれにひとりきり、ビーチでぷかぷかと一服している姿を、海の近いこの街でしばしば見ることができる。
クリフはまだ16歳の少年だが、大人びた憂いのある美貌と長身で、ブース派の女子のみならず、街中の女はたいてい彼に恋をしていた。この街でひとりのクリフの姿を見ることはまずないだろう。隣にはいつもちがう女の子がいる、そういう少年だ。
さてこの麗しい二人が運命の出会いを果たしたのは、ダルトン家主催の仮装パーティーであった。
「お母さま、恥ずかしいです」
少々ふてくされたようすのリックがカウボーイハットを押し返そうとする。
「ふふとても似合ってますよかわいいわたしの子」
リックの母親であるダルトン夫人は花のように微笑んで美しい息子のふわふわとしたダークブロンドにハットをかぶせた。
リックはしぶしぶそれを受け入れ、大きな姿見にうつしだされた己の姿にため息をつく。
カウボーイだ。西部劇のカウボーイ。焦げ茶のレザーベストを指でつまんで、またため息。
去年のようにドレスを着せられなかっただけましだと思うことにしよう、とリックはせめてもと目深に鍔を下げて、母親に大人しく手をひかれるままに部屋を出る。
ドアの外は鮮やかな色彩と喧騒で溢れかえっていた。
大きな階段に登場する主催者親子にフロアがわっと湧き上がる。
リックは俯き気味にそそくさと階段を降りて、柱の影へと逃げた。
「ヘイ、あんたもカウボーイ?」
声がしたほうへと顔を向けると、自分と同じカウボーイ姿の少年が立っていた。
背格好はリックとそう変わらない。少しだけ背は低いがリックより筋肉はありそうだ。
帽子を斜めに支える手のひらは大きく、その横のブルーアイズがじっとこちらを見つめている。
眉にかかる明るいブロンド、やたらと整った顔、リックよりカウボーイらしくはあった。
「そうだよ……」