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    🔪※本誌派 ネiタiバiレ注意

    @1919_0307

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    bntnワンドロさん お題 「赤」「ピアス」
    ・蘭竜メインで、匂わせ春竜&モブ竜
    ・ちょっとだけ竜胆が痛い目にあいます。

    【出張から帰ってきたら、ビiッチな弟が酷い匂わせをしてくる件について】・蘭竜メインで、匂わせ春竜&モブ竜
    ・ちょっとだけ竜胆が痛い目にあいます。

    ↓↓↓本文↓↓↓


    「なにこれ、煽ってんの」

    地を這うような、怒気に満ちた低音が自然と喉から滑り出る。蘭は100人中100人が満場一致で『美しい』と褒め称えるであろう、整った笑顔を浮かべ、1ヶ月振りに会う愛しい弟の左耳に触れた。そして、次の瞬間――――ブチリ。軽快な音を立ててソレを、弟の耳から引きちぎる。

    海外での取引に単独で駆り出されること、1ヶ月。いくら業務と言えどこれだけ長い期間、愛して愛してやまない、最愛の弟と離れたためしはなかった。故に蘭は久方ぶりに訪れる我が家――弟が待つマンションへ、帰宅するのが楽しみで仕方がなかったのだ。嫌々ながら向かわされた旅先で何度、触れられない弟を想い自慰に耽ったかなどもうわかりもしない。
    蘭は久々に最愛の弟と再会を果たした暁には、沢山キスをして「会いたかった。愛しているよ」と呟いて。愛しい、愛しい弟の頭から足の指の先まで慈しむつもり、だったのだ。
    自宅、リビングのソファーで寛ぐ弟が振り返り「おかえり、兄ちゃん」と可愛らしい花のかんばせを向けてくるまでは。

    「……ぐ………っ、」

    引きちぎられた左耳が、痛みで燃えるように熱を孕んでいるのだろう。弟は唐突に齎された激痛で眉根を寄せ、鮮血に染まる耳元を押さえると座っていたソファーの上で背を丸めた。

    「オレがいねぇ間、どんだけ可愛がられてたんだかは知らねぇが、わざわざ匂わすな。いいな?」

    蘭は血で赤く染まったフープピアスに絡まる弟の皮ごと、テーブル横のゴミ箱へ投げ捨てる。自分以外に捧げられた部位など、最早『蘭の愛する灰谷竜胆』として正確に機能していないのだから。

    ――弟が組織のナンバー2である男やその他諸々と遊んでいるのは薄々勘づいていたし、弟も弟で別段隠すつもりもないらしく堂々としていた。だから、許していたのだ。遊び、ならば。可愛い弟なのだから多少は大目に見てやろう、と。所詮、他者の血肉で形成された存在など同じ女の胎で同じ血と肉を喰み、成り立った、という自分達の切っても切れない絆の前では足元にも及ばないのだから、と。
    そうやって蘭は自身と、弟が選ぶ遊び相手とに一線を引き、歯牙にも掛けずにいたのだ。兄である自分以外の男により注がれた、浅ましき『独占欲』を今宵、竜胆が受け入れているさまをその目にするまでは。

    「なぁ、竜胆。兄ちゃんの言いつけ、守れるよなァ?」
    「……兄ちゃ…」

     サラサラとした絹のような手触りの髪を梳き、問う。NOは受付ない。絶対にだ、という圧を込めて。
    もし、も。仮に、だが。弟がどうしてもゴミ箱に叩き込んだピアスの送り主を選ぶならば、蘭は蘭なりの恩情を加えてやってもいいとも、考えていた。無論、薬で蕩けかけの脳味噌が詰まっている、ピンク頭の首をねじ切って、だが。
    アレは言動こそクソを煮詰めたような下品さが際立っているが、顔の造形だけは飛びぬけて美しいのだ。敢えて蘭がヤツの美点をあげるのなら、ボスの命令なら躊躇わず人を殺めることと、その小奇麗な顔くらいしかない。故に、兄の自分以上に奴を想い・慕っているのであれば、その美しさだけはホルマリン漬けにでもして残すつもりだった。これは蘭なりの愛しい弟相手だからこそ譲歩できる、最大限の甘やかしでもある。
    しかし弟は傷口を抑え、血で左手を赤く染めたまま、ふるふると首を横へ振った。

    「ごめん……っ、兄ちゃん…。もう、遊んだりしない。だから、許して……」
    「竜胆……」

    久方ぶりに肉眼で捉えるアメジストの瞳は、涙に濡れ繊細な耀きを放っていた。自身にもまったく同じ色の瞳が埋まっている筈なのに、何故だか弟の双眸の方が濁りなく透き通って見えてしまうのだから不思議である。

    「……いいんだ。すまない、竜胆。兄ちゃんも少し、嫉妬が過ぎた。愛しているよ」

     蘭はソファーで未だ丸くなっている哀れな弟をやさしく抱きしめ、凹みのない、完璧な丸みを帯びた弟の頭部を撫でる。兄ちゃん、ごめん。嫌いにならないで、と腕の中で懇願する弟はこれ以上ないほどに哀れで、可愛らしい。
    弟への愛情を再確認しつつも、ふと同時に蘭はこうも、思った。
    こんなにも愛らしい存在が、兄の怒りを買ってでも執着しかけたモノを容易に捨ててしまうのはあまりにも、かわいそうだろう、と。
     ――やはりここは愛おしい弟を最大限、喜ばすため早急にピンク頭のホルマリン漬けをプレゼントすべきなのだ。
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