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    艾(もぐさ)

    雑多。落書きと作業進捗。

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    艾(もぐさ)

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    沖田組 / いけだやで折れなかった加州を折りに行く安定の話、というのを書きたくて書いた導入部分

    #沖田組
    okitaClan
    ##刀

    君のみぞ知れる (仮題)あなたは、神を信じますか。
    そんなことを問われたことがある。何の変哲もない、現代遠征と称したお使いを頼まれた時のことだ。
    行き交う人波と音の洪水の中、そこだけぽつんと奇妙に空いたスペース。人が減って歩きやすいなぁなんて思っていれば何てことない、人波が避けて通っていただけのそこで投げかけられた言葉に、ついうっかり足を止めて立ち止まってしまった。
    ヤバ、と思った瞬間ずいと遠慮なしに距離を詰めてくる、女性とも男性とも取れない、ワンレンの長い髪をゆるく巻いた黒いロングコートの宗教勧誘者。
    どうでしょう。
    重ねられる言葉に、どうでしょうねと目をそらす。
    この時の自分は、どうにも調子がおかしかった。頼まれたお使いの物は覚えているのに個数は曖昧で、足元はどこかふわふわしているのに思考は氷のように張りつめクリアなままで。
    まるで徹夜明けに朝焼けの中を歩いているような、そんな感覚。だからつい、いつもなら綺麗に流すようなくだりに振り返ってしまったのだ。
    付喪神ならいるんじゃないかな、だって僕がそうだし。
    口に出しかけて慌てて噤んだ。往来で付喪神宣言なんてとんだサイコパスだ、それくらいの理性はまだ残っている。
    この時は結局、足を止めた自分を訝しんで戻ってきた今剣がすぐに状況を察し「かみさまはよくわかりませんが、てんぐならいるとおもいますよ!だってぼく、みましたから」なんて乱入して相手を逆に困惑させ事なきを得た。有難くはあったが、自分との関係性は全く読めないだろう日本人離れした色素の子どもに割って入られた勧誘者が、天狗信仰に入信していないかが気になるところだ。
    ―本当に今気にしなければいけないのは、全く別の事だけれど。
    現実逃避。そんな言葉が脳裏を過って、はあとわざとらしく息を吐いた。気持ちを切り替えようとしての事だったけれど、どうにも陰鬱なものにしかならない。それもまた気の持ちようか、ならば傍から見てどう映っただろう。
    「ねえ、」
    今は誰もいない和室。薄暗い室内、けれど侘しさを感じないのは、同じ屋根の下にある別室から聞こえる喧騒があるから。遠くから聞こえる生活音は、夜の空気の中だからこそよく届く。
    問いかけは虚空へ。けれど宛はある。この部屋でひっそりと、存在を主張するでもなく馴染んだ―目の前に立てかけられた、赤塗りの鞘が鮮やかな刀。
    「お前にはどう聞こえたかな、清光。」
    神なんて、いるのか知らない。けれど付喪神はいる。
    お前には、今の一息がどう聞こえただろう。せめて暗いだけのものでなければいいと願いながら、大和守安定は、在りし日の相棒を見据えたまま己が柄に手を伸べた。
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