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    pnpn_dx

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    メイドの日だったらしいから過去にXに投げてた記憶無し❤️‍🔥さん×記憶あり🐯さんの転生現パロ小説再掲。
    ❤️‍🔥さんの家でメイドさんのバイトする🐯さんの話です。

    メイドイン俺ん家① あんなのは酒の席での戯言だった筈だ。
     「ロシィ、前に部屋の掃除ができない様ならメイドを雇う、と言っただろう?」
     我ながらとっ散らかってんなぁと思う部屋ん中で、ドアノブに手を掛けたまま「ああ……」と生返事をしつつ思考を飛ばす。でなきゃ目の前のことを受け止めなきゃなんねえから。
     「だから連れて来てやった」
     そう言って我が優秀な兄上殿は、ニヤリと笑みを浮かべながらそばに居た子の肩をポンポンと叩いたあと、そのままおれの前へと軽く押し出すように引き寄せた。
     「聞いて喜べ。お前があの時挙げていたご要望通り、且つ、お前が熱中してるソイツと名前まで一緒のヤツを見つけてきた」
     ビシッとおれの胸元を指差してくる兄上に、ああそういえば今着てんの推しTじゃんと思い出して気が遠くなる。こんな事になるならもうちょっとマシな格好したのに。もうヘアバンドにスウェット装備しちゃった完全寛ぎスタイルだったんですけど!
     「という訳で、今度からお前の専属メイドになるトラファルガー・ローだ。せいぜいくまなく綺麗にしてもらう事だな」
     少し戸惑った様子でおれとドフィのやり取りを見ていた当の子──ローが、グイッとさらにおれの前に突き出された。
     光に透けて少し青みがかって見える短い黒髪の揺れる様が、何故かスローモーションで見える。うわ、なんか良い匂いする。極めつけに濃いめの隈に縁取られた金の瞳が照明の光をキラリと反射しながらおれを上目遣いで見つめてきたと思ったら、心地よい低音ボイスが耳に流れ込んできた。
     「……トラファルガー・ローです。これからよろしくお願いします。……ロシナンテ、様?」
     ズドン!
     少し悩んだあと小首を傾げながらこちらを伺うみたいに青年が言うのに、おれの心臓がえらい衝撃を受けた。そう、青年。奇しくも推しと同じ名前の彼は、その風貌もこんなにも推しと一致し過ぎてるのに、ただ一点だけがあまりにも掛け離れていた。それなのにバックンバックンやべえ程に心臓が高鳴なりまくってて……どうしたおれ!?
     「あ、あー……、『様』付けはなんかアレだからさ、その、それ以外でお願い〜……したいな? あとドフィ」
     「ん?」
     彼には来客用の応接室で待ってる様に伝えてその姿が見えなくなってから、ずっとニヤニヤニタニタ楽しくて仕方なさそうな兄上をイラっとしながら強引に自室に引っ張り込んだ。もう部屋が散らかったままとか関係ねえ。

     「いやメイドって…………男の子じゃねえか!! "おれのローちゃん"は女の子なんですけどぉぉおおお!?」

     渾身の叫びが部屋中に響き渡る。
     ああ、ごめんねおれの天使、煩くしちまって。でもこれだけは突っ込まずにいられねえ、いられねえからさ。
     ポスターやフィギュア、アクスタや缶バッチ等たくさんのグッズで彩られた一角に向けて謝罪する。そこには先程の彼と同じ、黒髪で金の虹彩を持つおれの天使──大人気ソーシャルゲーム『百花繚乱!ワンピース〜サラダ食べて海賊王〜』に登場する──トラファルガー・ローちゃんが様々なポーズや表情を浮かべて飾られていた。
     そう、女の子なのだ。おれの天使は女の子で、先程の彼は男の子。風貌が似てたって名前が同じだからって、性別が全ッ然違うのだ。なのに。
     「だが、気に入ったんだろう? ローの事」
     「んぐぅ!」
     「でなければメイドとして雇う事をあの場で拒否してた筈だからな。なあロシィ?」
     ああああマジで兄上様にはなんでもお見通しである。
     おれ、ヘテロだと思ってたけどまさかバイだったのか……? いやいやいやいやまさかな? まさかだよ。
     自分の挙動に自分自身が信じられない思いでいつつ、「話がそれだけなら戻るぞ。ローと正式に契約も交わさなきゃいけねえからな」というドフィの言葉に「そうだな」と返しながら、これから彼がおれのもとへと通ってくれるのかもと想像すると少しドキドキしてしまう自分を抑えられないでいた。

     ──そんな気もそぞろでなんかいた所為だろう。彼の元にドフィと一緒に戻ったおれは応接室に入ってすぐ盛大にズッコケた。
     泣きたい。

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