意識がゆるりと持ち上がる。ここはもう戦場ではないとわかっているから、まず安心して全身の力を抜く。
慣れないホテルの固いマットレス。シーツに背中の地肌が当たっている。隣には温もり。目蓋を開く前に、額からこめかみ、頬へとそっと走っていく指先を感じた。寝たふりを決め込みたくなる心地良さだ。
慈しむように触れてくるこのしなやかな指先を、その美しい爪の形の一つ一つまで、今の俺はよく知っている。頬を辿る指がこめかみへ流れ、やがてくしゃりと柔らかく髪をかき混ぜられた。……俺がされると好きなことを、この男はよくわかってやっている。人を甘やかすことに長けた奴だとは思っていたが、実際に付き合ってみたら、何もかも想像以上だった。
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