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    3stlo_guri

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    昨日upした「ゲがタイムスリップして10年後の千ゲに会う話」の逆バージョン。

    「千がタイムスリップして10年後の千ゲに会う話」
    ポイピク初っ端から没ネタを供養すな

    10年後の自分達が喧嘩していた件について



    きっかけは、些細なことだった。
    結婚生活が十年目に突入しようとしていた春、四月一日。ゲンは朝から研究に没頭している千空に朝食をすすめ、そして激怒した。

    「千空ちゃん、ごはんできたよ」
    「〜」

    この「〜」に、ある日突然、何だか無性に腹が立ったのだ。全くもってくだらない。
    思い返せば、今日だけのことではなかった。最近返事を求めればずっとこんな感じで流された。
    何だかな、やだなぁ。
    新婚当初はキッチンで支度していると、いい匂いにつられてやってきた千空が覗き込んだり、後ろから抱き締めてきたものだった。ご飯を作れば美味しそうに食べていたし、日頃の感謝とか言って、たまに手の込んだプレゼントなんかも送ってくれた。
    ゲンは己の心が乾いてきていることに気づきながらも、気づかないふりをした。十年目だからと少し手の込んだ朝食を用意して。
    呼びに行って目も合わさず「〜」と言われたときに、「あ、これ駄目だ」と突然思った。
    お互いの平和のため見て見ぬふりをしていた感情が、心を冷ましていく。
    一度思ってしまったらもう駄目だった。
    もういいや。

    「千空ちゃん、離婚しよう」
    「ちーっと待て、今行く……って、……は?」
    「だめになっちゃった」

    理由を話したゲンに「そんなことで」と言ってしまい、さらに怒らせ、千空はビンタされて。
    ゲンにビンタされたらされたで、いってぇな!と千空も怒ってしまって。
    もう知らない、もうしらない!
    あーそうかよ!勝手にしろ!
    知らないから!ジーマーで!
    そう言いながら役所に駆け込んだ。自分の欄をしっかりと記入して、帰ったらこれを突き付けやろう。そして積もり積もったこの苛立ちも全て終わりにしようと。そう思っていた。

    何らかの運命のいたずらか、原因不明のトリップか。新婚当初の千空が、十年目にして離婚寸前のゲンの目の前に現れたのはそんな時のことだったのである。







    「────!?何が起こった!?」
    「げっ、千空ちゃ……、んん……??」

    今一番見たくない顔にうんざりした表情を見せたけれども、自分の知っている憎たらしいそれよりも目の前の千空ちゃんはだいぶ若い。ゲン、と名前を呼んだあどけない千空は、ほっと安堵の表情を浮かべ、いや待て、と首を傾げる。

    「テメー、ゲンで合ってんのか」
    「いやそれはこっちのセリフなんだけど?結婚した時みたいじゃん、何、若返る薬でも作ってたの?」
    「は?」

    しばしの沈黙。
    千空ちゃんは黙ってドンした。俺もつられて同じポーズをする。千空ちゃんは「今西暦何年だ」と質問してきて、自分の認識している年と日付を答える。千空ちゃんは深い溜息をついて、俺に信じられないことを言ってきた。

    「原因はさっぱり分からねぇが、俺は十年後の世界に来たらしい」
    「え!?何ソレ」
    「分かったら苦労しねぇわ。テメーは俺からすると十年後のゲンってことだな。だいぶ肉付きが良くなってるがテメーがゲンだってことはわかる」

    想定外の指摘に思わずお腹をおさえる。

    「痩せすぎだったっつー話だ。たらふく美味いもん食わせまくって丸々太らせてやろうと思ってたから別に気にしてねぇ。むしろ計算通りだ」
    「いや俺は気にするけど!?……って、そうじゃなくて!なんで来たの!よりによってこんな時に!」
    「こんな時?」
    「あっ」

    慌てて手に握りしめていた書類を隠したけれど、手首を掴まれる。「離婚届」と書かれた文字を見て、千空ちゃんは大きく目を見開いた。
    流石に、十年前の新婚ほやほやな千空ちゃんに見せるものではなかったと思う。気まずくなって目を逸らしていると、千空ちゃんはどことなくしゅんと落ち込んでいた。
    うっ……決意したとはいえ、罪悪感がゴイスーすぎる。

    「それ持って、家帰んのかよ」
    「そ、そうだけど」
    「俺にも説明しろ」
    「でも、」
    「聞く権利はあるだろ。パートナーなんだから」

    バ、バイヤー!ぎゅんと胸を鷲掴みにされたような気持ちになる。これだよこれ!これが俺の大好きな千空ちゃんなの!こういうトコに惚れたの!
    衝動で、目の前の千空ちゃんを抱き締める。

    「ンぶっ!」
    「こんなに可愛いのになんでああなっちゃったの〜!?」
    「ちょっ、テメ、やめろ!」
    「この千空ちゃんとなら、俺別れなかったよ……」
    「だから何したんだよ俺は」
    「んー、まぁ、くだらないことなんだけどさ、」

    今朝の話をすると、とっても渋い顔をされた。

    「〜……、くだらねぇとは思うが、お前にとっては違うんだな」
    「そうです〜!もー絶対あんな風になんないでよ!もう手遅れだけど!」
    「十年後の俺はそれでサインすんのか」
    「わかんないし多分嫌がるけど、書かせるよ」
    「……そうかよ」

    何とも言えない表情してる目の前の千空ちゃん。あーあ、キミに当たったって仕方ないのに。俺何してんだろ。

    「俺のことはいいからさ、千空ちゃんが戻る方法を考えようよ」
    「いや、後でいい」
    「え?」
    「家、見せてくれねぇか。俺達の十年間がどんなものだったのか」

    いいよ。するりと言葉が飛び出した。
    あれだけ喧嘩していたのが嘘のように解けていく。十年前の千空ちゃんは俺の手を取って、指を絡めて歩いた。手の温もりが過去の記憶を揺り起こしていく。昔は子供体温の千空ちゃんによくくっついてたな、とか。手を繋ぐとすぐ汗ばむから気にしたりしてたなぁ、とか。
    こんなにも満ち足りた気持ちになったのは久しぶりで、今の現状が引き裂かれそうなほどつらかったことを思い出す。家に戻ったら千空ちゃんがいる。どんな顔して帰ればいいんだろ。
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