聖ロック座女学園「電車が遅れちゃうなんて〜」
私は普段よりも30分遅く「聖ロック座女学園」の校門を足早に通り過ぎた。1時間目の授業はとっくに始まっていて、教室へ向かうため慌てて中庭を通り過ぎると、視界の隅にふと違和感を覚えた。
桜並木の下のベンチに誰かが座っている。生徒は授業中だろうし、こんな時間に誰だろう? そう思い近づいてみる。遠目からも分かる細身の体躯、少し明るい色のサラサラの髪。その下にある瞳は柔らかく閉じられている。ただ座っているように見えたその人は、眠っているようだ。いや、そんなことよりも。
「うそ…武藤先輩……?」
そこにいたのは、学園のアイドル「武藤つぐみ先輩」だった。この学校で彼女の名前を知らない人はいない。廊下を歩く際もファンクラブの生徒が双璧をなして、武藤先輩はその影からちらっと見えるだけだが、その噂は教室の片隅まで轟いている。そういえば、後輩が1枚500円のブロマイド、買ってたな。
2016