大事な思い出はその目に焼き付けろ「う…くそねみィ……」
その日土方はボロボロだった。冬の乾燥で蔓延したウィルス性感染症に隊士達が次々と罹患。巡回の穴を副長自身で埋める事数回。休みを返上して勤務を続けていた。そうして気付けば20連勤。新政府が立ち上がったばかりの江戸に労働基準法なぞまだ存在していないし、人手不足を補うのは上司の勤めと身を粉にして働いた。その結果、流石に疲労困憊で眠気も強い。この疲れた身体は健康ランドで癒してからゆっくり眠ろう…そう考えかぶき町へ来ていた。
「定春ー!止まるアル!」
聞き覚えのある少女の声に振り向くと白い軽自動車が土方を跳ね飛ばした。土方にはその塊が軽自動車に見えたのだろう。
「わんっ」
「駄目じゃない定春。あ…やべ」
1942