勿忘草の花束を「確定診断は難しいですが、認知症の疑いが強いとしか言えません。とりあえず、進行を抑える飲み薬を出してみますので、それで経過を見て行きましょう」
土方は硬い表情の医師を真っ直ぐ見つめ頭を下げた。
初めに彼が異変に気付いたのは部下の山崎の指摘からだった。それも1ヶ月前だ。土方が何度も同じ事を言うようになったので疲れてるんじゃないかと言われた。山崎が報告書を出した事を忘れて催促したのも1度や2度じゃないらしい。
おかしいと思い机の上にメモを置き、その日の出来事を綴ってみた。巡回後帰室すると机のメモの事も忘れ何故出しっぱなしなのか不思議にメモの中身を見て自分の記憶が飛んでいると知った。数時間前の記憶すら思い出せないのだ。おぼろげにあった気がするとしか分からない。これは何かの病かと急いで大江戸病院で脳のCTやらMRIを撮って貰ったが、画像上認知症特有の脳の異常は見られないらしい。採血もどこも異常がない。が、問診上では認知症の傾向が強いのだと。
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