「噛む」という病 野良作業がひと区切りついたところで立ち上がり、柔らかい土のうえで踏ん張って、背を反らした。畑や花壇をいじるのはもちろん好きだが、作業中しゃがんだり中腰になったりの、これらの姿勢に慣れることはないだろう。足腰がつれえ……。
半泣きになりながら軍手を外し、近くの地面に直置きしていた水筒を取る。金属のボトルの硬い表面にふれた瞬間、ピリッとした痛みが走り、つい声を上げてしまった。
「ってぇ……」
傍らで雑草を抜いていた、我が園芸部の女子部員――小波 美奈子が振り返り、眉根を寄せた。
「どうしました? 切っちゃいました?」
「いや、ちょっとな。深爪しちまったとこが痛んだだけだ」
美奈子はすっくと立ち、そしてやっぱり先ほどの俺と同じように、腰を後ろに曲げた。うんうん、つれえよなあ。
4301