雨神天泣尊を調べていた学者の手記私は宗教学を学んでいるしがない学者の端くれだった。愚かにも神を調べようとした人間の記録だとでも思って頂きたい。
私は数ある文献の中で雨の神に興味を持ち、好奇心に駆られるままとある神社に取材に向かった。
これは雨の神、雨神天泣尊を祀る神社の神主に聞いた話。
雨神天泣尊は滅多に人前に姿を現さない。
激しい豪雨の際にのみかの神は現れる。
その姿はそれはそれは美しい狼の姿をしており、
一眼見たら脳裏に焼き付いて離れない程だと言う。
また、青年の姿で現れたと言う言い伝えもあるようだ。
日照りが続き、旱魃に飢える人々の元に何処からか一人の青年が現れた。
「辛かろう。苦しかろう。嗚呼なんと。悲しきかな。」
頭に直接響くような、よく通る声で青年そう呟いて一粒、二粒と涙を流すとたちまち空は曇り、
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