信頼の晩餐 随分薄情だと思った男は、今目の前で歳下の男を困らせていた。
「ほら、憂太、こっち焦げそう」
「ちょっ、火、弱くしてください」
「弱くってどれぐらい?」
「もうっ、ここはいいので、五条さんは座っててください」
「やだ」
ずっと賑やかな会話が響いているのは、キッチンの方からだ。
そんな会話を聞きながら、夏油傑は乙骨憂太が出してくれたコーヒーに口をつける。甘党の五条悟は、自ら進んでコーヒーを飲むことは無い。長く苦学生だったと聞いた乙骨も、コーヒーにこだわる余裕なんてなかっただろう。
それを知っているからこそ、この香りの深いドリップコーヒーは、自分のために用意した物だと分かる。
夏油は今、五条の家に招かれていた。
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