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    凪子 nagiko_fsm

    戦国無双の左近と三成、無双OROCHIの伏犠が好きな片隅の物書き。
    さこみつ、みつさこ、ふっさこ でゆるっと書いてます。
    ある程度溜まったらピクシブにまとめます(過去作もこちら https://www.pixiv.net/users/2704531/novels

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    【さこみつ現パロ】先輩刑事と新人刑事

    #戦国無双
    SamuraiWarriors
    #石田三成
    mitsunariIshida
    #島左近
    shimmeringOfHotAir
    #さこみつ
    #腐向け
    Rot
    #現パロ
    parodyingTheReality

    【さこみつ現パロ】先輩刑事と新人刑事 春。4月と言えば出会いの季節。
     ここ、佐和山署刑事課にも新人刑事が異動してきた。
    「それでは彼の教育係は島君に任せるよ」
     課長に指名された島左近は「まあ、任せてくださよ」と軽い気持ちで返事をした。
     ………の、だったが。
     初日にして左近は早くも後悔しかけていた。

     この新人、愛想が悪すぎるのである。


     石田三成、K大院卒で警察学校主席。
     何をやらせてもそつなくこなし、身体能力も高い。
     しかし、ぶっきらぼうでそっけない。にこりともしない。
    「綺麗な顔が台無しですよ?」
     もっと笑って? と左近が言ったら、物凄い目で睨まれた。
     なまじっか顔が整っているだけに、その迫力は凄まじかった。
     
     
     そして、配属から一ヶ月も経ったころ、二人に大きな仕事が舞い込んできた。

    「まあ、言いたいことは色々あるでしょうが…これも仕事なんで」
    「……分かっています」
     分かってるという割には随分不満そうな顔だな……。左近はそう思うものの口に出すようなドジはしない。
     ちなみに今回の二人に与えられた任務は長期の張り込みだ。
     ターゲットとなる家の向かいのアパートの部屋を抑えて、二人でちょっとした同居をすることになったのである。

     

    「晩飯買ってきましたよ。どっちにします?」
     今日は左近が買い出しの番で、彼は手っ取り早くコンビニ弁当を買って来た。パスタと幕の内弁当とサラダが二つ。
     三成は軽く頭を下げると、遠慮なくパスタの方を取った。
    「いつもコンビニ弁当なのはどうか思うが?」
    「じゃ自炊でもします? 俺は大したもん作れないですけど」
    「それは、俺にやれという命令か?」
    「そうじゃないですよ。コンビニ弁当でも良いじゃないですかって言ってんです」
     マグカップにお湯を注いで、左近はインスタントみそ汁、三成はコンソメスープの粉末をそれぞれ入れた。
     三食コンビニ弁当生活もそろそろ一週間になろうとしている。
     張り込み対象にはいまだに動きなし。
     いい加減、初めの頃の緊張感も無くなってきた。
    「三成さんは自炊なんてしなくても、彼女が全部やってくれそうですよね」
    「そんな相手はいない。お前こそ、そうなんじゃないか?」
     食事を終え、弁当の空容器を片づけながら二人は何気ない世間話を始めた。
     三成はカーテン越しに張り込み中。左近はその背中に向かって色々と話しかけている。
    「今は完全にフリーですよ……。二年ぐらい前にはいい相手がいましたけどね」
    「意外だな」
     三成は軽く目線を流して言った。特に軽蔑しているような訳ではなさそうだ。
    「俺ってこれでも結構一途なんですけどねぇ」
    「警察官のくせに嘘つきだな」
     皮肉っぽく言った三成に、今日の分の報告をパソコンで入力していた左近はさりげなく続けた。
    「そう言わないでくださいよ……昔の相手が忘れらんないんです」

     

     もうお気づきだろうが、新人の三成が先輩の左近にタメ口をきいている。
     実は二人は三成が大学生の頃にルームシェアと称して同棲していた元恋人同士である。
     三成が大学院に進む時に色々あって二人は別れた。といっても一方的に三成が怒って出て行ってしまったのだが。
     それからは一度も連絡を取っていなかった。
     再会してからも暫くは固い態度を崩そうとしなかった三成だったが、この張り込み中にだいぶ気を許してくれたらしい。二人だけの時には昔のように気安く話してくれるようになった。
     左近の言った忘れられない昔の相手というのは三成のことである。


    「あれから何してました?」
     気安くなったとはいえ、三成は昔の話題はあまり好まない。
     それでも聞けば一応は答えてくれた。
    「何って、普通に学生生活していただけだ」
     先に風呂に入った左近が布団を敷きながら話しかけた。
     張り込みは二四時間なので、交代で夜通し起きて見張ることになっている。今日は左近が先に仮眠をとることになっていた。
    「そうじゃなくて……俺と別れてから誰かと付き合ってました?」
    「誰とも。だが少なくともお前のことを引きずっていたからじゃない」
     先に牽制されて、布団に横になった左近は天井を見つめたままで大きく息をついた。
    「もう俺のこと好きじゃない?」
    「言われなくても気付け。だから出て行ったんだ。メールや電話を拒否されても分からないか?」
     左近が三成に一度も連絡を取らなかったのは、三成が一方的に着信拒否をしていたからだった。
    「友人としてなら構わないが、もうお前相手に恋愛はできない」
     三成にはっきりと言われて、左近は諦めたように目を閉じた。

     しばらくして、左近から寝息が聞こえてきた頃、誰に言うでもなく三成は呟いた。
    「お前には分からないだろう……あの時俺がどんなに不安だったか……」
     嫌いになったから別れたんじゃない……。
     三成は熱くなった目頭をそっと押さえた。

     

     二人が別れた理由は、左近が他県に出向するため中々会えなくなるから……はあまり関係なくて、左近が週三ペースで合コンに行っていたからだった。
     左近はただの見せ玉として友人連中から乞われて合コンに行っていただけなのだが、三成はそれがどうしようもなく嫌だったのだ。
     見目の良い三成もよくそういったことに誘われたが、すべて断っていた。それなのに左近は全く断らない。
    「恋人いないやつらが可哀想でしょう。これは言わば慈善事業なんですよ」
     そう言って三成の「行くな」を無視し続けた結果、三成の方が出て行ってしまったのである。
     後悔しても後の祭り。その後、三成はありとあらゆる手段を使って左近からのコンタクトを拒否し続けたのだった。

     


     そんな二人の張り込み捜査は、十日目にして終わりを告げることになった。収穫は無し。こちらは空振りで、もう一つの張り込み現場の方が当たりだったのである。
     その間の二人の同居生活にはこれといってドラマティックな展開などなかった。
     左近が堪え切れなくなって、仕事そっちのけで三成を押し倒したり。
     三成が涙を浮かべながら左近に抱き着いて「今でも愛してる」なんて言ったり。
     そんなことは全くなかったのである。


    「何か、楽しかったですね」
     今日中に引き払う張り込み部屋を片づけながら左近がぽつりとこぼした。
    「……これは仕事だぞ」
     楽しいも何もあるかと返す三成は心なしか元気がない。
    「……ねえ、三成さんが警察官になったのって、もしかして俺を追っかけてくれたからとかですか?」
     ゴミ袋を縛る手を止めて、左近は三成を振り返った。
    「昔言ってましたよね、将来は大学に残って研究したいって。なのに…」
    「お前には関係ない!」
     左近の言葉を遮って、三成は早口で呻くように言った。
     自分から別れておいて、いまだに未練がましく追いかけている自分が。そして、素直に「好き」が言えない捻くれた自分の性格が、三成は大嫌いだった。
    「言いたいことあるんなら今のうちにはっきり言ってくれませんか。明日からはまた普通に職場の同僚に戻っちまうんだし……それに俺たちの仕事って結構危ないんでね。いつ突然会えなくなるか分からないじゃないですか」
     左近の言葉に三成ははっとして顔を上げた。
    「正直、貴方がうちの課に配属された時は妙な気分でしたよ。嬉しさ半分心配半分。三成さんにはこんな職には就いてほしくなかった」
     子供に言い聞かせるような優しい声音で左近は続けた。
    「俺のこと好きですか? それとも嫌い?」
     その顔には「ホントは好きなくせに」と書いてある。
     気恥ずかしさと悔しさと、それから今でも微かに残る不安から三成は俯いて何も言えなくなってしまった。
     唇を噛んで黙り込んでしまった三成の顔を覗き込むように、左近が三成の傍に寄った。
     三成は見られたくないのか慌てて顔をそらす。
    「本当に……いくつになっても素直じゃないですね」
     カシャン……。
     左近が呆れたようにそう言った後、下の方から乾いた金属音がした。
     手首に感じた冷たい感触に三成が視線を落とせば、自分の手首に手錠がはめられているのが目に入る。
    「素直じゃない子は、逮捕しちゃいますよ♪」
    「……ば……バカかお前はー!」
     さっきまでの切ない甘ったるいムードは一瞬で吹き飛んでしまった。
     三成の容赦ない一撃で張り倒された左近は、そのまま正座させられ、目の前に仁王立ちした三成から延々説教されることになったのである。
     その説教は「仕事道具を遊びで使うな」から始まってしばらくはまともな説教だったのだが、次第に「さっきのムードに流されそうだったのによくもぶち壊してくれたな」という逆切れの恨み言に変わっていった。
    「お前はいつもそうだった。俺がどんなに真剣でも軽く流して……そういうところは全然変わってないな! 俺はお前のそういうところが……」
     嫌いなんだと続けようとした三成だったがそれは叶わなかった。
     左近が急に立ち上がって三成を抱きしめたからだ。
    「その先は聞きたくない。貴方に嫌いって言われるの……今でも結構キツイんですよ」
    「だったらあんなふざけたことしなければいい……」
     三成は大人しく左近の腕の中に収まってぽつりと言った。
    「いやーまぁ……あんまり重い雰囲気だと貴方が苦しくなるんじゃないかと思いましてね」
     あれも左近なりの気遣い。三成にも分からない訳ではないのだが、そうやって気を使われるのも何となく悔しい。まるで自分の方がコドモだと言われているようで。
    「お前と俺の間で気遣いなど不要だと、以前にも言ったつもりだが?」
    「気にしないでくださいよ。好きでやってるんですから。それに、知らなかったですか? 昔から俺の趣味は三成さんを甘やかすことなんですよ?」
     思い当たる節があって、三成は恥ずかしさに体温が上昇していくような感覚に陥る。おそらく顔は真っ赤だ。
    「今でも……そうなのか?」
     左近に抱きしめられているので顔は見られないことにわずかに安堵しながら、三成はぼそっと言った。
    「もちろん今でも。三成さん、相変わらず可愛いし」
     囁くような声で言った左近は、ようやく自分の元に戻ってきた恋人にそっと口づけた。

     

    「今回は空振りだったが、これもいい経験だったと思って。お疲れ様」
     署に戻った三成は課長から労いの言葉を受けていた。
    「それで、先輩はどうだった?」
     これからも暫くは二人を組ませようと思っていた課長は、三成に彼とうまくやっていけそうかと聞いたのである。
     普通なら先輩を立てて世辞の一つも言うのだろうが、三成は容赦なく左近の欠点を次々と並べたのであった。
     あまりの遠慮なさに若干引き気味の課長を前にして、三成は最後にこう言った。
    「……ですが、島先輩となら上手くやれると思います」
     軽く微笑を浮かべた三成に、課長は満足そうな頷きで答えたのだった。

     

     半年後。
    「……真面目にやれ! このバカ左近!」
    「そんなに怒らないで。綺麗な顔が台無しですよん?」
    「な……黙れ軽薄男!」
    「ほら三成さん、さっさと聞き込み行きますよー」
    「逃げるな! 今日こそは土下座で謝るまで締め出してやる!」
     左近が後輩から怒鳴られながらも楽しそうに仕事する姿は刑事課の名物になった。
     "締め出すぞ"の言葉通り、二人は前の月から同棲を始めた。
     一気に表情豊かになって親しみやすくなった三成は、最近広報の方から色々と頼まれごとをしているらしい。
     『警察官採用の募集ポスターに使われることになった』と苦笑いで言った三成は、左近が密かにそのポスターを横流しするように画策していることをまだ知らない……
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