酒は飲んでも呑まれるな「ほら、伽羅坊、もう一杯いこう、な?」
鶴丸は面白くなっていた。普段酒に手をつけない大倶利伽羅が珍しく鶴丸からの誘いを断らなかったからだ。飲んでも酔えない、飲む意味がない、とすげなく断られ続け早一年。同じ伊達のよしみとして積もる話もどうでもいい話もあったからどうしても酒を交えたかった。
ただ、本人曰くザルらしいが、とんでもない。想像以上、ワクだ。いくら入れても大倶利伽羅の顔色が変わることはなく、鶴丸の倍のペースで器を空ける。自分も弱くはないと思っていたがおそらくこの本丸で一番酔えない男だろう。一度面白半分で長谷部に飲ませた時は、数杯入れただけで主との思い出語りが始まった。そこから更に飲ませると最終的に「主…俺は主の犬になりたい…」と泣き出す。非常に面白かったが翌日全てを覚えていた長谷部に絞められ、二度目はまだ訪れていない。鶴丸は本丸の男士に酒を飲ませて変化を見るのが最近の趣味にまでなってきていた。
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