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    『DIRTY BRAVER』
    トートオブアリーナ登録キャラクター【ブレイブソード】前日譚

     悲鳴が人々行き交う広場に響き渡った。
     全裸で、鞘に収まった直剣を携え俺が佇んでいるからだ。
     伝播する混乱。薄手の布を纏う母に手を引かれる少年が口を開く様子を、俺の両目の視界が捉える。

    「はだかの変態だ!」

     その日、俺は牢獄にぶち込まれた。



    ―――― DIRTY BRAVER



    「まさかお前がそういう奴だったとは思わなかったが、ヒトは何を考えているか分からんものだな」

     嘲笑の声を押し殺しきれない声が、昏い鉄格子の先から滴る。
     同僚の王宮騎士の虎獣人の男が堅牢な鎧の肩を揺らす様子が、右目が塞がれた視界に見える。

    「たまには発散が必要だ」
    「七日で足りるといいな」

     軽い言葉の応酬を終え、罪状の読み上げ、刑罰の期間を伝えられる。

     この王都ゲルニアにて衣服を纏わぬことは罪となる。
     刑罰としては軽いものであるが、積み重なると刑罰は重いものに変わる。
     初犯であり模範的な騎士として生きてきた俺に拘束具は無く。
     しかし、右目を隠されるような鉄の眼帯を取り付けられる。
     これはもし仮に逃走した際に、ある力を王の伝令の元に行使する為だ。

    「七日間の辛抱だ。それにしても……」

     牢獄の中、棒立ちでいる俺を舐めるように眺め、鼻で笑い言葉を続ける。

    「さっさと鎧を纏うんだな。持ち歩いていた"玩具"にしてもだ」

     彼は一度、牢の外、通路の方を一瞥した。
     持ち込んだものを嘲笑うような口調。

    「お前の気色の悪い趣味に付き合う気はないぞ?フロギア」

     そう言い残し、その虎の獣人は地下牢を去った。

     フロギア・サーメット。
     ゲルニア王宮騎士、祝福の鎧を常に纏う、王の剣。
     前例のない全裸の王宮騎士の変質者として、地上では俺の事をどう言い扱っているのかまでは分からない。
     どうでもいい事だった。



     一日目。
     反省しているようだなと揶揄される。
     鎧を纏わず座したまま、鉄のプレートに盛られた粗末な食事にも手を付けなかったからだ。



     二日目。
     気味悪がられる。
     一日目と変わらずであるからだ。



     三日目。
     流石に論される。
     その行為に何の意味があるのか。
     あと五日後にまた此処にぶち込まれたいのかと。
     餓死でもする気かと。
     気でも狂ったかと。
     それに答える声はもう持たない。
     鉄のプレートに盛られた粗末な食事は、相変わらず手を付けられていない。



     四日目。



     五日目。



     六日目。
     流石にしんどいだろう、と首を掻きながらも呆れた笑いを向けられる。
     王都では湿疹が流行っててよ、などとの世間話が垂れ流される。
     それに答える声は無い。
     鉄のプレートに盛られた粗末な食事は。
     相変わらず手を付けられていない。



     七日目。



     八日目。
     歩くのがやっとという様子の虎の獣人が、牢獄の扉の鍵を開けた。
     何度も咳き込み、血を滴らせる。
     鎧の隙間から見える体毛には赤錆じみた色合いと、掻き毟りえぐれた皮膚。
     早く出ろと急かす声に、ゆっくりと立ち上がる。
     上の凄惨さを息絶え絶えに語る様子を無視して、鉄格子の扉を潜る。
     鉄のプレートに盛られた粗末な食事は、手を付けられていないまま。
     制止する声を無視して、通路の壁に掛けられた剣を手に取る。

     あまりにも軽い剣だ。
     彼が"玩具"と言ったそれは、剣にしては酷く軽いものだ。

     牢獄の方へと引き返し。
     とても軽いそれを、逆手に持ち切っ先を振り下ろした。
     彼の声は途絶えて、俺は息を吐き出す。

    「ひとつ。俺は気色悪い趣味を持っていない」

     その呟きは、もう彼に伝わない。



     その日は雨だった。

     地上に上がれば、彼の言葉通り阿鼻叫喚の様相で。
     衛兵は倒れ、もがき苦しみ血を滴らせる。
     騎士があちらこちらに転がっている。
     広場で助ける声が響き渡る。呻き、痛みに滴る声が。
     王城に向かえば、その声は多くなる。より多く。
     倒れている姿はどれも、兵士、衛兵、騎士、そして気品の高い者ばかりだ。
     裸のままに、歩み向かう。腰にあの軽い剣を携えて。
     倒れている姿はどれも、兵士、衛兵、騎士、そして気品の高い者ばかりだ。
     王城に向かう程に、その声は多くなる。より多く。
     城の中では、俺以外に誰も立っている者などいなかった。


     俺以外に誰も立っている者などいない。
     それは王でさえ例外ではなかった。
     獅子の獣人であったその姿は、装飾華美な鎧を全身に纏い、そこにあった。
     荒い呼気を零し、もう動かない側近に何を指示する事さえもできず。
     王座から立ち上がる事すらままならず。
     全身の体毛に赤錆じみたものを纏わせて。

     その王の前に跪く。
     謁見の様式を守れど、誰も声を掛ける事はない。
     無数の呻き声だけがその間に流れるだけだ。

    「何故、おまえが、……これは、なん、だ、……?」

    「貧困層には硬貨すら流通していない」

     短い答えを向け、緩慢にも立ち上がる。
     そうして、剣を引き抜いた。
     瞬間、俺の右目が、右角が吹き飛んだ。
     王命による処刑魔術。鉄の変異を齎し脳を貫通させうる破裂。

     ゲルニア王宮騎士、祝福の鎧を常に纏う、王の剣。
     "ゲルニアは鉄を重んじる"。
     それは王の力が故のものだ。
     鉄を爆ぜさせ、鉄を纏う。
     それは簡易的にも祝福として騎士に施され。
     そしてまた鉄によりこの王都は繁盛した。
     鉄に加護を。鉄に祝福を。
     多くの鉄が王都にもたらされ。
     その一方、価値の見出せぬ低い地位の者、貧困層には布や木材しか許されなかった。
     小さな硬貨すら、その手に触れる事は許されなかったのだ。

     故に。

     血霧が晴れ、滴る赤。
     左の視界に王を捉える。
     王の力によって鉄の眼帯が角もろとも吹き飛び散って、後方に散らばっている。

    「お前は……!」

     全身に鎧を纏っていれば、その力によって死に絶えていただろうものだ。
     そうはならなかった。鎧は、纏っていない。何も纏いはしない。
     纏わぬ理由は、王の力を懸念してのもの、のみではない。

    「錆縫(さびぬ)い」

     右眼が、零れ落ちる。
     それは地面に転がり、昏い赤の光を大理石に伝わせた。
     複雑な魔術の紋様の浮かぶそれを、踏み潰す。

    「金属に蝕まれる魔呪詛だ。これは金属を伝播し、触れ、身に纏う者に赤錆に似た皮膚病を齎す」

    「それらは深く浸透し、七日目に急速に発現……心身に不全をきたし、被呪者を亡きものとする」

     木製の蹄鉄が、血に濡れる。
     右足の血の跡と雨雫を続かせて歩く。歩みを進めていく。
     唯一残る黄の瞳にて王を、捉える。
     王宮騎士に上り詰め、最も守るべき対象たる王の。
     それ以上を、この手に。
     それ以上を、与える為に。
     剣を握り込み。
     強く踏み込んだ。

     赤色が飛び散る。

     見開いた王の目が叫ぶ。
     何故、何故、剣を持っているのに、と。
     喉を深く貫通したこちらの剣が、王の喉の引き攣りを伝う。 
     何故先程の眼帯のように、鉄として爆ぜさせ得なかったのかと。

    「これは木剣だ」

     強く、引き抜く。

    「勇敢を表す剣は、金属である必要はない」

     王の身体が、手前に崩れ落ちた。
     広がっていく赤色に感傷も無く、踵を返した。

     王城を去る頃には、もう誰も息をしてはいなかった。
     降る雨の音だけが、その静寂に満ちていた。



     貧困層の者は生きていた。
     硬貨すら与えられない者達だ。
     金属に触れる機会は、七日間においてもほぼ無いものだ。
     俺はある家の扉を開く。
     長らく立ち寄る事の無かった、その者の住む家に。
     この勇敢さは、この扉の先に捧ぐべきものだったのだ。



     力無き君へ。
     力を得た俺から。
     成し遂げた開放を。
     そうしてこの国の呪縛から、共に。
     共に。
     迎えに来たのだと。



     新品の全身鎧を纏った死体が、部屋の片隅にあった。
     それが物語る意味を知る。
     強くあろうしたのだ。
     俺のように、この国に力にて関わる、貧困層の民としてではなく。
     そう努力してしまった姿が、そこにあったのだ。

    「――――何の、ための」

     何の為の、汚れた勇敢さであったのか。
     
     君が強くあろうとする必要はなかったのだ。
     声は、出ない。もう伝え届けることなど叶わないのだ。

     只、亡骸を前に慟哭した。




     
     王都は終わりを迎えた。
     呪いの効力の消えた王都からの貴金属を貧困層の民に分配し、それぞれが王国を出た。
     あまりの死の多さに、この場に留まらない者は多かった。
     ゲルニア崩壊の話は広く伝い、近隣諸国の野盗や軍隊がゲルニアに到着するのは時間の問題でもあったからだ。

     俺は旅をし人助けを続けている。
     まだ遠く離れた地ではないが、これからはどこにでも行けるのだ。
     思い起こす無数はまだ色褪せはしない。
     目を閉じても、あの選択は正しかったのかの懐疑が巡るのだ。

     立ち寄った村にて一仕事を終え、長椅子にて一休みを入れていると、一人の少年が寄ってきた。

    「はだかの勇者様だ!」

     かつて広場で会った少年は、そう言った。
     隻眼がその姿を眺め、そうして緩く息を吐き出す。

    「ただの元騎士だ。それに、今は鎧を着ているしな」

     首を左右に振り、その少年の頭に軽く手を置いて、立ち上がる。
     前へ向ける眼差しに曇りは無い。
     片手に持っていた紙を折り畳み、次の定めた行き先へと向かう。

     ブレイブソード。
     そう銘付けるに足る理由に激痛が伴えど。
     そうあるべき意味は、この心に秘め続ける。

     新たな戦場へ、この剣と共に。



    DIRTY BRAVER
          END 

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    Replies from the creator

    mttbsmn

    DOODLE妄想!!!
    カナタくんとイリルちゃん混浴想定書き散らし寒い時期の突然の大雨~で(塾?部活?何か用事?で)外に出てたカナタくんびしょ濡れなトコにイリルちゃんが心配して傘二本持ってって渡したとこに車が通り掛かって泥ぶっ掛かるかわいそうなイリルちゃん(かわいそう)なところからの、フーラ家近いから一緒におうち行こう~な流れになって、カナタくんめっちゃ冷えてる+イリルちゃんどろんこで靴もビショ濡れだし靴持って二人で脱衣所まで来たとこで~カナタくん体冷えてるじゃん今お風呂沸かすから先に~というかシャワー使えるからvsイリルこそ泥だらけだし先に脱衣所、というかシャワーで泥落とす必要あるじゃねーかよ!の靴持ちながらの譲り合い合戦~なところからおねーちゃんただいまー!って帰ってきて咄嗟にイリルちゃんがお風呂場にグイッとカナタくん引っぱって避難!シャワー全開にお風呂使ってるよアピールで、靴もお風呂に持ってってたバレず、カナタくんにお風呂に入って!!!てやって、脱衣所におねーちゃんが来る&お話~で泥んこになっちゃったからシャワー使ってるよ!なところと、あれ?おねーちゃん今日用事あって帰り遅くなるんじゃなかった?というイリルちゃんの鋭い気付き&ポンコツおねーちゃんっぷり効果大でおねーちゃんがウワー!わすれてたー!って撃退(撃退)するわけで、もう出てきていいよ!ってカナタくんに言うけどアレー!?お風呂沸かしてる途中だったから中途半端に冷ため!?みたいなのでガクブルだったから、引っ張り出して暖かいシャワーを当てて温めて、いや、イリルも寒いだろ、それに泥ついてるしってなんか半々で掛け合う妙な気まず時間が流れて泥落としてるところで胸とか腰とかの張り付き輪郭~なところ意識し始めたとこでお風呂が沸きましたになって、ああ、じゃあ、とはいうものの、どっちもどっちな様子で両方びしょ濡れ寒々で、片方シャワー片方お風呂~とか浮かぶものの、なんか服着てるなら一緒に入ってもいいんじゃね?とかカナタくんがすっとぼけたことを言っちゃって~~というかさっきイリルに咄嗟に入れって言われたけど帰りの服、いや、まぁビショ濡れだったし同じようなものだけど!みたいな様子と、明日休みだし、貸せるパジャマあるしみたいな外堀からなんか埋めてっての、おねーちゃんも暫く帰ってこないし、な様子で、着衣混浴!!!
    1031

    mttbsmn

    MEMO副題:MMO適応障害
    FF14所感-新生~黙約の塔-FF14所感~ゥ!
    まーどんな感じでプレイしてどんな感覚でやってるかとか色々出していって今後の展望で変わるのかなーとかまだ見えてないが故の色々な不安垂れ流しも含めてアレソレ出していこうかなくらいの垂れ流し。

    そもそもFF14やる、ってなったのがロスガル(メス)出ますよの話が出て、っていう前になんか始めた機会があったんだよね、UI弄りと、アクションゲーム画面ながらの停止してのスパンの速いリキャストタイム式コマンドバトルにドチャクソ衝突してレベル15でアーー無理ホントムリ死んじゃう!ってなって止まって一年後くらいにメスガル正式決定して、じゃあやりますか……とふたたびUI弄りから始まったとかのなんかで。

    そもそもとしてMMORPGに対してとんでもねーーー忌避感は持ってて、MMOじみたある種の最大出力な世界観持ってキャラが生きてる非MMOな遊びをずっとやってた身としてはハマると即死すると知りつつ、一方MMO性の強さに疲弊しそう(ゲームだからさぁ要素/効率とかボタンポチポチとかストーリー性の薄さの一方ナラティブ性-個人体験-重視というのは分かっているけれどなんかそこに更にコミュニケーションとかが絡んでくるんでしょうとかの)でハマらなくても嫌な形で即死するのは知ってて、実際のところ新生の殆どとリヴァイアサンとクリスタルタワーでそのMMOさが圧倒的に猛威を振るって死んだのはあってそれはそうなんだけど。先に書いておくか……。
    6457

    mttbsmn

    DOODLEほしいものリスト
    ください/ほしい/欲しい/描きたいの文章の抽出

    またたびはアイデアがパッと浮かんで"消える(迫真)"ので出してしまってそこに描きたいとか欲しいとかのワード付けといてあとでツイート条件検索してまとめてサルベージしてる(システマチックすぎるのやめーや
    ほしいものリストfrom:@mttbsmn ください

    2021年6月13日
    耳の中覗かれて死ぬほど恥ずかしい思いをする垂れ耳ケモとかほしい。ください(くさい)

    2021年8月10日
    例えば馬車の長距離移動で男女パーティとか!そういうシチュでも絶対に起こりうるコトだよね?っていうのは、みんなが特に描かない、描く必要がないと捨て置いてるだけで、そこは確実に"あっていい、あることができる"モノなんだよね!
    どういう様子でその状況を解決するのか、それは大事な要素……!
    という事で長距離馬車止めるタイミング逃しておもらしする冒険者メスケモください(※誰も描かないのでまたたびが描きます)

    2021年8月14日
    ガーターベルトってパンツの下に履くものって知って確かに脱ぐとき困るもんな、ってなるほどってなったあと、…………パンツの上にガーターベルト付けちゃって脱ぐのに手間取ってギリギリトイレ失敗しちゃう新入りメスケモメイドおもらし絵ください!!!!!!!!!!!!!!ってなったのでください
    21400

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