行秋が損をする話 竹林を抜けた先、軽策荘の入り口に佇む一軒の空き家。
少々狭く感じるものの日頃から手入れはされていたらしく、少しの間だけ身を置くには申し分ない。
村長の厚意により一時貸してもらえることとなったその屋内で、旅人の帰還を待つ行秋は途方に暮れていた。
部屋の隅ですやすやと眠っている白い猫――もとい、変わり果てた親友の姿を一瞥し、幾度目かわからない溜め息を吐いた。
璃月の冒険者協会から依頼を受けた旅人に任務遂行の手助けをしてほしいと頼まれた行秋と重雲は、碧水の原の北、軽策荘へと続く街道から少し離れた雑木林に来ていた。
此処最近フォンテーヌの富裕層の間で室内飼い向けの小動物が人気を博しており、特に見た目の良い猫などが老若問わず女性らから受けが良いことから、金持ち相手に搾れるだけ搾り取ろうと画策する悪徳業者によって高値で取引されている。
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