たこやきジュージューと目の前で鉄板が音を立てている。日車と七海は大阪、奈良など近畿地方へ任務で出張に来ていた。早めに任務を終わらせて今日は自分達で調整してオフの時間を作ったのだった。
「これは…凄いな」
日車が驚くのも無理は無い。たこ焼き用の鉄板の窪みは彼がイメージしたものより少し大きく一つ一つが食べ応えのありそうなサイズに見える。
目の前で繰り広げられるショータイムに二人は黙って魅入ってしまった。
「お兄さん達、たこ焼き焼くとこ見るの初めてです?」
手の動きは俊敏なままでにこやかに店員に話しかけられる。
「えぇ…何度かこちらへ来たことはありますが実際焼いている所を見るのは初めてですね」
「…んそうだな…」
七海、日車が答えると
「そうなん?見てるだけでも楽しいからちゃんと見てってや?」
店員の話術も相まってあっという間にたこ焼きが出来上がってしまう。
「はい、お待ちどうさん!熱いから気をつけてな?」
店員から一口で食べて熱かったら口の中でハフハフするんやで!と言われて少しだけふうふうと冷ましてから七海より少し遅れてたこ焼きを口の中へ放り込む。最後の仕上げとして油をかけて揚げ焼き風にしているのか外はカリッとしていて咀嚼をすると中から熱いと言うより痛いに近いトロリとした生地が出てきて思わず目を見開く。ハフハフすれば良いと言われたがどうやってハフハフとすればいいんだ?ほんの少しだけ慌てながら何とか外の空気を口の中に取り込んでたこ焼きを冷まそうと頑張ってみた。口の中が慣れたのかもう一度咀嚼をすると大きめのタコが顔を出す。タコの旨みとソースの香りしっかりと生地に混ぜこまれた出汁…どれをひとつとっても美味しいが全てが合わさるとさらに美味しくなる。流石…本場は違うのものだな…納得しながら最後にのどごしを味わった。
「いやー!兄さん達仲ええなぁ!同じように悶えて同じように飲み込んでいって息ピッタリですやん!」
二人はお互いを見やると熱すぎたのか顔まで朱くなっている。この店員に気に入られたのかこの後「これ食べました?」「これ食べた事あります?」と店のメニューからオススメがどんどん出てきて、もうお腹に入らないと断ると持ち帰りまで持たされてしまった。店の外まで出てきた店員に見送られながら二人はホテルへ戻って行ったのだった。
「随分と食べていたが大丈夫か?」
「えぇ…前回も食べろ食べろと言われるがまま食べて、後でお腹が膨れすぎた事があったんです。なので今回は膨れたとしても問題のない量に抑えてます」
「君は凄いな…あの量を…」
「食い倒れと言われるだけの量と種類と美味しさはありますから食は進んでしまいますね…」
部屋に着くとそんな話をしながら持たされた袋をテーブルに置き、二人は着ていたスーツを脱ぎ出す。ネクタイを緩めハンガーに掛けるとツインの片方へ仲良く腰をかけた。日車が七海の腰に手を回してそのまま引き寄せると七海は素直にもたれかけてくる。添い寝をするようにベッドに沈むと目が合い、鼻が触れてそっと口付けをした。何度か啄むようにしてどちらからともなく舌をいれー
「「ーっ!!!!」」
二人して思わず顔を離してお互いを見やる。
「…建人…大丈夫か…?」
「…なんとか…寛見さんは?」
「…いや…痛いものだな…」
二人は熱々のたこ焼きを食べた時火傷をしていたようで互いの舌がヒリヒリと痛みを訴えている。
「これでは…寛見さんにキス出来ません…」
日車の胸に顔を埋めながらポツリと呟く七海。そんな恋人の顎をすくい上げ愛おしそうに鼻にそっとキスをした。
「…建人…舌を使わなくてもキスはできるぞ」
「…寛見さん…」
「…ん?」
「……もっと…ください…」
「ん」
顔の至る所にキスの雨を降らせ、時には七海からお返しをしてゆっくりと二人は夜を過ごしていったのだった…