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    acusu1979

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    acusu1979

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    あげ忘れてました…

    お腐れ作品です。ご注意ください
    CPビト七

    #ビト七
    #禪院直毘人
    #七海建人
    sevenSeasBuilders

    初めは学長の頼みで出席しただけだった。都内でも老舗の料亭で高専関係者の飲み会に連れ出された七海。置物宜しく目の前のお膳を黙って口にし、時間いっぱい居座る。あえて酒は口にせず酒に溺れた者たちを見て見ぬふりをしていた。そんな時である。

    「七海一級呪術師」

    徳利とお猪口を持って禪院直毘人が前を挟んで目の前に座った。

    「禪院特別一級呪術師」
    「やめやめ、禪院には一級呪術師はいくらでもおるわ。直毘人でよい」
    「では、直毘人さん。どうされました」
    「ん」

    差し出されたお猪口を受け取ると断る暇もなく酒が注がれていく。

    「お前も連れてこられたクチだろう?俺もだ。さっきからつまらん会話しかせん。呑まずにやってられるか…なぁ?」
    「……さぁ、どうでしょう」

    名言を避けて酒を一気に飲み干すと、お猪口を拭き取り返杯する。七海の飲みっぷりに口の端を上げながら直毘人は受け取ると今度は七海が自分の膳に置かれていた徳利から酒を注いだ。周りの喧騒は相変わらずだが目の前に人がいるからかほんの少しだけ遠くに聞こえるような気がする。

    「この酒もつまらん。安酒よ…このまま抜けるがお前はどうする」
    「今日はお供で来てますので」

    直毘人の提案に乗っかりたい七海だが、学長の頼みで出席している手前、素直には頷けない。分かっていたのか「夜蛾よ」と呼び止めた。

    「…禪院のご当主どうかされましたか?」
    「この七海を貰っていくぞ」
    「直毘人さん?」
    「構わんだろう?既に役目は果たしているはずだぞ」
    「それは…構いませんが…」

    夜蛾が七海に視線を向けると小さく頷いた。

    「ふっ…素直で良いじゃないか」
    「七海、大丈夫か?」
    「大丈夫も何も、何も起こりませんよ」
    「なら良いが」

    夜蛾と七海の会話を聴きながらスっと立ち上がると

    「俺は帰るぞぉ!おい、七海一級呪術師来い!」

    こうやって「渋々連れていかれる」の程で七海は直毘人によって会場を後にしたのだった。このまま解散だも思い駅に向かおうと歩き出す七海に直毘人が声をかける。

    「まてまて、もっと美味い酒を飲ませてやる。着いてこい」
    「直毘人さん、すみませんが私は帰ります」
    「あそこから抜け出すのに手を貸してやったではないか。いいから一杯付き合え」
    「…はぁっ…」

    仕方なしに直毘人のそばによればタイミングを図ったかのように車が滑り込んできた。後部座席の扉を開けられ直毘人が奥へと座りに行く。

    「…どうした。入らんか」

    出来ることなら拒否して帰りたい。だが律儀な七海はゆっくりと車に乗り込んでいく。シートに座った七海を確認するとドアは閉まり、車はゆっくりと走り出したのだった。

    連れてこられたのはどうやら直毘人の馴染みの料亭のようで、女将に驚かれはしたがそのまま直毘人のお気に入りだという部屋へ通された。

    「禪院様、ようこそお越しくださいました」
    「女将よ、挨拶はよい。例のものは飲めるか?」
    「もちろんでございます。直ぐにお持ちさせていただきます」
    「それとな、コヤツは七海という。覚えてやってくれ」
    「…初めまして。七海建人と言います」
    「七海様、ご挨拶ありがとうございます。当店の女将でございます。本日はごゆるりとなさってくださいませ」

    女将の挨拶をしている横で中居がお膳と酒を広げていく。「失礼致します」と最後に深くお辞儀をするとあっという間に部屋の中で二人になった。静かになった部屋で直毘人は酒瓶を抱えて大事そうに撫でている。

    「膳は運んでもらった。あとはコレで呑めば良い…」
    「直毘人さん一杯だけの約束では?」
    「一杯では無い!いっぱいだ」

    ガハハと笑う直毘人に騙されたと、こめかみを押さえた七海は立ち上がろうと酒瓶の銘柄を見せられた。

    「…これは」
    「幻だぞ…この酒は。どうした?飲まんのか?」

    七海が目にしたのは入手困難とされている銘柄のラベル。定価が数千円に対してネットなどで取引されている値段はゼロが二つほど多い値段となっている。七海でもそんな清酒を口にした事がない。…興味はある…自分の欲に負けてもう一度座り直した七海を見ると、直毘人は口角をあげて栓をあけたのだった。

    あれから何本か有名な銘柄を堪能して空けていた。目の前の直毘人は変わらぬ顔だが七海はそろそろ足腰に酔いが回ってきている。

    「直毘人…さ。そろ…ろおいと…を」
    「すっかり酔いが回っているではないか。奥で仮眠を取ればよいぞ」

    この日の七海は素直に直毘人の言うことに従い、起こされるまでぐっすり寝てしまっていたのであった。

    直毘人に揺すられ起こされた七海は足取りもおぼつかない状態で車で家の前まで送られてしまい、失態を見せたと気づいたのはその日の朝。文字通り頭を抱えてしまったが直毘人の連絡先を知らず詫びも言えないままで時が過ぎていた。そして仕事が早めに終わったとある日、帰宅しようと高専の敷地を出れば黒塗りの車を見つけて思わす足が止まる。窓が降りると顔をのぞかせたのは直毘人であった。

    「七海一級呪術師」
    「…直毘人さん、お久しぶりです。その節はご迷惑を」
    「構わん。清酒は後からくるものだからな」
    「いえ、言わせてください。あの時はご迷惑をお掛けしました。そして家まで送って下さりありがとうございます」
    「律儀なやつよ。詫びをと言うならこれから一杯付き合え」
    「…いちはいだけの一杯なら」
    「昔のことを言うな。細かいヤツめ。いいから乗れ」

    運転席から降りた運転手が前と同じ様に後部座席の扉を開け、直毘人が横にズレると七海は車に乗り込んだ。車内では二人言葉を交わすことなく静かに距離と時間はすすんでいる。七海にとっては二度目のあの料亭。「禪院様、七海様いらっしゃいませ」と迎えられあの部屋に通された。座る位置も膳も前回と変わらず直毘人と七海の前に置かれたのであった。

    「さぁ、七海よ。まずは一献。今日は焼酎だぞ」
    「…ありがとうございます」

    七海が差し出したぐい呑みにゆっくりと注がれるのは前回同様に入手困難な焼酎である。飲み会などでも滅多にメニューに上がる事がなくあったとしてもいい値段のする人気の商品だ。自分のぐい呑みを注ぎ終わると一度置いて瓶を預かり直ぐに直毘人のぐい呑みに注ぎ返す。お互いに献杯しあい、口をつけた。前回来た時も思ってはいたが、直毘人に連れてこられたこの店は酒の品揃えもそれに合う膳もバランスが良く食欲を満たす。気をつけたつもりでいたが、口当たりのいい焼酎は七海の体内に入りアルコールはどんどん蓄積されていく。前回のような失態では無いにしてもいつも飲むような「飲んでも飲まれない」スタイルとは遠く及ばない。直毘人の話術なのか酒の進め方が上手いのかマイペースを保てていなかったのである。

    「すみません、酒の酔いが回ったようです。そろそろお暇させてもらいます」
    「なんだ七海、もう根を上げたか。仕方がないヤツめ。今度来る時はもう少し付き合え」

    もう十分付き合っているでは無いかという考えが過ぎったが沈黙は金とも言うので肯定も否定もしないでいる。

    「沈黙は肯定…だな。まぁよい。車を出す。気をつけて帰れられよ。そうだ…今度呼ぶ時に待ち伏せするのも億劫だからな。連絡先を教えてくれ」
    「…わかりました」

    仕事用の携帯を教えて帰宅した七海は、全てのことを明日の自分に任せ、自室のベッドの上で泥のように眠ったのだった。

    それからまた時を重ねて季節が巡る頃、直毘人から連絡が入っていた。次の自分の休みを知りたいらしい。だが七海は休みの日にまで関係者に会いたくはない。休みだが予定があるとでっち上げると、ならばその前日の夜を開けろと指名される。今回だけです。もう貸しも借りもないはずです…という旨を伝えると、わかったと四文字だけの言葉が返ってきた。深くため息を付きながら休みの前の日取りを調節して直毘人に会うことになったのである。

    「お邪魔します」
    「よく来たな。まぁ上がれ」

    仕事も終わり一度家に帰り身支度をし直す。それから七海の家に運転手が迎えに来て連れて来られたのはいつもの料亭ではない。数ある禪院の屋敷の一つらしい。家の者が見当たらず思わず笑って眉を顰める。

    「どうした七海よ」
    「…ご当主が側近を置かれないのは危ないのではありませんか」

    七海の発言に少しだけ驚いた顔をした後、豪快に笑いだした直毘人。

    「なんだ、七海。俺を襲うのか?」
    「滅相もありません」
    「…では心配してくれてるのか」
    「……滅相もありません」
    「そうかそうか…気分がいいのう!」

    ご機嫌になって歩き出した直毘人の後ろでゆっくりため息をついて、後に付いて行くしかない七海は否定する事も面倒になっていたのである。
    入った部屋は庭を見渡せる景観のいい部屋で部屋の木材なのかどこからともなくお香のような匂いが漂っていた。今日はワインだと用意された酒(ワイン以外も多数あった)とそれに合う肴。仕事終わりに美味い酒と肴で欲求を満たし直毘人との会話も少なからず弾んでくる。その一方これ以上、直毘人との深入りは禁物だと頭の中で警告音も鳴っている。今日は控えめに、時間を調節して…と折を見てお暇しようと計画していると、七海の目の前に見た事の無い瓶が置かれた。

    「七海よ…これはな、禪院が作っている酒だ。何処にも出回らない」

    聞けばとある老舗の酒蔵は禪院家とも深い繋がりがあり、家の為だけに作られている清酒があるという。酒好きの直毘人が独り占めする様に飲んでいるものを今日は飲ませてくれると言う。

    「私が頂いてもよろしいんですか?」
    「俺とお前の仲だろう!」
    「…では一杯だけ」
    「素直なのはいいぞ」

    渡されたぐい呑みに傾けられる清酒。七海も同じ様に直毘人にすれば、また二人同時に味わう。直毘人が自慢するだけあって、あの料亭で飲んだ入手困難な清酒に負けず劣らずの美味さで七海の喉を潤していく。静かに二人で飲み干せば自然と言葉が口から零れた。

    「美味い…ですね」
    「そうだろう?酒の味が分かるものは少ない。こうやって分かってくれる者との飲酒が一番美味いのだ」
    「光栄です」
    「ん」

    差し出された瓶をみて迷った。こんなに美味い酒はそうそう味わえない。だがここで断らないとダラダラとまた飲むことになる。迷って入れば身を乗り出してぐい呑みに清酒を注ぐ直毘人。断る隙を与えてくれず、表面張力で盛られているぐい呑みを作りだした。手を動かすことが出来ず慌てて迎え酒をすればそのままスルりと飲み干した。もう一度注がれようとしたので手で制して「もう、結構です」と断る七海。その姿をみて子供のよう「なんだつまらん!」と拗ねて口を尖らせている。

    「それでは…そろそろ…」

    軽くお辞儀をした七海は急に膝が折れその場にうずくまってしまう。

    「七海よ…きゅ…に…たち…がっ……は」
    「はっ、はっ…はっ……」

    直毘人に腕を取られたような記憶を最後に七海の目の前は暗くなっていたのであった。


    「やっと寝たか…」

    七海と飲んでいた隣の部屋に布団が敷いてあり、そこに七海を転がすとジャケットをぬがせ、ネクタイを緩め、スラックスからベルトを外す。七海が来る前に部屋に焚かれた香は禪院家秘伝の香。ただの香だが特定の酒を飲むと人の体が恋しくなり自ら脚を開いて人を求めるようになる。禪院家の者が男女問わず手に入れたい者へと使う秘伝の酒と香であった。無防備に寝ているこの男を手に入れたいと思ったのはいつ頃かもう既に忘れた。だが直毘人は熱が昂まり、前後不覚に自分を求めてくるであろう七海を想像して舌なめずりをする。あの料亭で一度七海の体を軽く触ったがどうやらこの男素質がある。

    「今度は意識がある中でのおまえを見たい。早く目覚めよ。七海一級呪術師」

    七海がいつ自宅に帰れるのかは直毘人次第である。
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