落し物(ヤスほわ)「おい、これ落としてったろ?」
いつもほわんが頭部へ身に付けている鈴付きリボンの片方を、バイト先のストアに現れたヤスが差し出す。
「ほわ! ヤスくんが拾ってくれてたんだね? ヒメコちゃんとも何処でなくしたんだろうって話してたんだあ」
「えっと、着けてやろうか?」
彼女は今、ダンボールを抱えている。
「うん、お願い出来る?」
しかしリボンを着け慣れていない男手だったため、不格好で歪んだ出来栄えになってしまった。
「わ、わりぃ。応急処置って事で、後で自分で着け直してくれるか?」
彼は謝るがほわんの方は笑顔だった。
「ううん、うちこれが良いな」
「直した方が良いと思うけどな。じゃあ、俺はスタジオで練習があるから」
「うん、頑張ってね」
ヤスは帰って行った。
ほわんは手で触れない代わりに耳をひくひく動かして微かに鈴を鳴らす。
ふふっ、と一つ温かく笑った彼女は『今日も頑張るぞー』と荷物を奥まで運んで行った。
(おわり)