雪だるまいつもと同じ朝。いつものように起き、いつものようにベッドを整え、いつものようにカーテンを開ける。しかし、その日の窓から見える景色はいつもと違っていた。
「なに…?これ?」
一面の銀世界。はらはらと落ちてくる白い紙ふぶきのようなもの。初めて見る光景だった。
急いでにいにの部屋へと走った。
「にいに?なんかね、外がすごいの。真っ白で白い紙みたいなのが落ちてきてて、あれなに?」
「茉仁は見たことないんだっけ?雪だよ」
「ゆき?危なくない?」
「危なくないよ。気になるんでしょ?行っておいで」
「にいにも行こうよ!」
その言葉に仕方ないなと立ち上がって用意をしてくれる。そんな彼の手を引っ張り外へと出る。
初めての雪。そっと手を広げるとその手にはらりと落ちる。しかしそれは一瞬で消えてしまう。なぜ消えてしまうのだろうか。
「茉仁?どうかした?」
「消えちゃった!こっちのは消えてないのに…」どうしたらいいんだろうと悩んでいると、茉仁、と呼ばれる。
「雪だるま作る?」
「雪だるま?でも消えちゃうよ?」
こっちの雪を使うんだよと言いながら彼は作り方を見せてくれる。それに倣い、同じように雪を丸めてみる。今度は雪は消えなかった。
「できた!!」
酷く不格好な雪だるまだ。彼のものと並べてみるとそれが一層わかる。
茉仁の雪だるまは、それだけでは立たないため早真の雪だるまに寄りかかるようにして置かれた。それはまるで彼ら自身のようだった。