SF 目覚めると、まず、サイドテーブルに置かれた手紙に手を伸ばす。
それは年月の経過を感じさせる古く茶色くなった封筒と便箋。年月と共に色褪せてきた万年筆で書かれた文字を読むことが少年の楽しみであった。
自分の名前が「俊國」であること、病気がちに生んでしまって申し訳ないという謝罪、「黒死牟」の言うことを聞くこと、そして幸せになれ、と書かれていた。
「おはよう、お父様」
窓から差し込む朝日の中で、少年は古い手紙を胸に当てて呟く。
それが父からの手紙であると一言も書かれていない。しかし、少年は、その手紙の主を父親だと信じていた。
自分の幸せを願ってくれる存在は父に違いない、と。
実際、俊國には莫大な財産と、黒死牟という有能な執事を遺してくれていた。そろそろ部屋にやってくる時間だと思い、俊國はサイドテーブルに手紙を置いて、黒死牟がやってくるのを待った。
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