月夜に跳ねる 庭を見遣ると夜だというのに空が明るい。草木の影がくっきりと落ち、縁側や障子も青白い光を含んでいる。
「お風呂、冷めてしまうかな」
炭治郎は義勇の屋敷で一人、家主の帰りを待っていた。鬼殺隊が解散してからも元柱達は定期的に集まっており、今日も昼間から出掛けて行った。支度する義勇からは少し楽しそうな匂いもしていた。元柱同士打ち解けた、その姿を見ると炭治郎もかなり嬉しい。
「薪を焚べておこうかな」
書き物を置いて立ち上がり、湯船に乗せた木蓋を上げる。少しぬるいが、焚き物を足せば良さそうだ。勝手口から焚き釜に向かい、適当な薪を数本投げ込む。熾火の残った釜の中では赤い炎がぶわりと広がる。吐く息が白く濁って風に溶ける。はぁと両手に息を吹き掛け、焚き釜の蓋をそっと閉めた。
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