俺のクラスには、空席が一つある。窓側の一番後ろの席で、そこはいつも空いていた。転入生が来ても、席替えをしても、その席が埋まることはない。担任曰く、ある事情で来られない生徒の席らしいが、入学して半年が経とうとしている今現在、その姿を見た者は誰もいない。最初こそクラスメイトたちはその人物を探し当てることに夢中だったが、時間が経つにつれてその熱は冷めていった。それは俺も例に漏れることはなく、いつの間にか存在すら記憶になかったのだ。
ただ、それが呼び起こされたのもつい数分前。体育で怪我をした俺は保健室に足を運んだ。幸い、大した怪我ではなかったが、「安静にしとくように」という保健医の先生の言葉に頷き、一足早く教室へ戻ろうとしていた。
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