腹噛木舌が部屋を出て行った後、平腹を連立って自室へ向かうべく階段を登っていた。
あと数歩で登り終えるというのに足を止めた平腹を振り返って見ると俯いて何かを呟いたのが分かった。
「…、だろ」
「は?…っ!」
ぐいっ、と力任せに後ろへ引っ張られ階段を踏み外す。
崩れ落ちた田噛を難なく抱きしめた平腹が閉じ込める様に抱きしめた。
「…さいあく。アイツらに見られたくなかった」
「…は?」
「さっきの!エロい顔してた!!」
「は?エロい顔…??」
平腹が何を言っているのか分からず田噛は思わず繰り返した。
その事が気に入らなかったのか、平腹は拗ねた様に繰り返して言う。
「エロい顔!絶対してた!!田噛は俺のなのに」
「ちょっ、バカ!声うるさい」
田噛は思わず平腹にアッパーを食らわす。
顎に入った平腹は少しフラついてしゃがみ込んだ。
「ってぇ〜…ナニすんだよ田噛ぃ」
「…お前がっ…」
「お前が…ヘンなこと、言うからだろ…っ」
立ち上がり、ギっ、と睨みつけた先に顔を赤らめた田噛が居て怒りが吹き飛ぶ。
代わりに田噛の熱が移ったかの様に一気に平腹の顔も赤く染まった。
「…また、エロい顔してる」
「っ…」
「田噛のソレ、俺のでしょ…ねぇ」
「〜…からっ」
「えっ?ナニ?聞こえないんだけど」
「だ、から…お前だけだって…何度も言わせるなよバカ…!」
そう言って口元を隠した田噛を平腹は呆けた様に見つめる。
直ぐに意識を戻した平腹は隠していた手を握りゆっくりと下ろした。
自分が大好きな橙色がユラユラと揺れている。
そのことに満足して頬が緩む。
此方を見て欲しくて、両手で頬をつつんだ。
「愛してる。…田噛は?」
「っ、あ、い…して、る…」
「…んっ、満足!」
目を右往左往しつつも告げられた言葉に満足気に笑う。
そうかよ。そう言って田噛は落ちた制帽を拾い上げ、深く被った。
「…なぁ、ゲームしようぜ!」
「絶対しない」
「えーっ!?なんでぇ」
そんなやり取りをしながら平腹は田噛を自室へと招いた。