ボブゲ転生:エンディング「双翼のピグマリオン」というゲームがあった。
多彩なキャラクターと豊富なテキストでファンタジー世界で
とある少年を導く、育成要素のあるアドベンチャーゲームだ。
シナリオの中盤で主人公が石像に魂を吹き込まれた無垢な存在で、
パートナーとなるキャラクターと歩むことで可能性を掴み取っていく、
そんな物語だと明かされる、そんなゲームだった。
そのゲームの制作者がいる。
ゲーム総指揮、メイン脚本を担当した大黒柱だ。
そんな彼女(性別は公開されていた)は、ある日「双オン」関連での
インタビューで「没にしたキャラクターとシナリオがある」と明かした。
ファンは気になって何度も公開を求めたが、頑としてさわりすら
語られることはなかった。
それから長い年月が経つ。
彼女はまっとうに生きて生きて今際の際にいた。
その間にいくつもの物語を生み出し世に放った。
それでも、こう思ってしまったのだ。
──ああ、双オンのあの物語をだれにも話さずにいたな、と。
ただそれだけの、しかし永い年月を経た妄念にも近い後悔。
それが、この世界を作った。
ゲームの中に潜んでさえいない、創造主の心に中に仕舞い込んだ、隠しシナリオ。
「像の作り手と、魂を得た石造の少年の物語」
製作者を同じように普通に生きて普通に死んだ「私たち」は、
このゲームが大好きだったから、
このゲームが大好きだった頃の記憶で、
このゲームに転がり込んだ。
製作者の彼女が、思い入れを込めすぎたと
会議に通すこともなくひっそりと葬ってしまった最後のルートを、
創造主と石像の行く末を、見守るために。
自分たちが入ったことでほんの少しだけ
愉快に変化を遂げてしまったこの世界で。
彼らのトゥルーエンドを見守るために。
創造主でもある彼女(今はゲームの性質上「彼」だが)は
このままこの身体で人生を送るのも、身体の本来の魂を呼び起こし、
自分は魂だけの存在となって文字通り「壁」人生(?)を送るなり、
また別のどこかに転生するなり好きに選んでいいといった。
推しに自分が収まっていることに耐えられないフォロワもいる。
選択肢があるのは有難いことだった。
皆それぞれ道を選びつつあるようだ。
ひとによってはお別れになるフォロワもいる。
送別オフ会の話なども出る中、ふと私も含め何人かが
思い出したように「創造主」へ視線を投げかけた。
「それで、創造主と主人公ルートの
スケベコンテンツはいつごろ公開になりますか?」