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    fmh5e

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    マリィのパートだけ書けたから尻叩きで貼る。
    後は行くんの部分書いて終わり。
    ※前半は上げていたやつ。

    【せくCらんじぇりーの話になる予定の行マリちゃん(卒業後)】「あっ、ちょっと待って!」
    「え?気になる記事あった?」
    「うんうん、さっきの特集!」
    「ごめん、どこだろ……」

     緩い空気を纏った午後の部屋で買ってきたファッション雑誌を捲っていたら、後ろからにゅっと伸びてきた腕が今見ていたページを指さす。慌てて止めたけど行くんの膝の間に座って一緒に見ていたから、預けていた身体が揺れてばらり、ページが先に進んでしまった。
     ええと、さっき読んでたページはどれだったろうか。
     煌びやかなモデルが並んだ『カワモテ★着回しコーデ』だとか、『おさえておきたい新作コスメ』とかがピックアップされているページを辿り、見覚えのあるページに戻って来た瞬間、これが見たかったの?と後ろを振り返って確認するとジッと食い入るように紙面を見つめている行くん。
    「『読者100人に聞きました、おすすめの一押しアイテム』?」
    「これ、このコーナー」
    「……?」

     行くんの長い指がすい、と滑って私が適当に読み飛ばしていた部分を指してぴたりと止まる。そこは、カラフルな雑誌にはあまり見かけない二色刷りの文字だけのコーナーで、小さなイラストが描いてある様な何の変哲もない内容だ。
     読者から寄せられた質問にキャラクター化された編集の人が答える、って言う良くある質問部屋、みたいな……。
     今回の内容は『長く付き合った彼氏とマンネリ気味なので何か新鮮な気持ちを持つにはどうすれば良いか』……読めば読むほど、行くんの興味を引くようなコトでもない気がする。
    「行くん、良く見えたねえ。何が気になったの?」
    「ここに書いてある『セクシーな下着』って所謂どう言う物なの?」
    「?!」
    「そう言うのがお店で売ってるの?これがセクシーですよって?それとも、女子的に何か共通の『セクシー』があるの?」
    「!?!?」

     思いもよらない質問をされ文字通り立ち上がりかけ逃げ出そうとした私を、後ろからぎゅっと押さえて行くんが答えを待っている。
     し、失敗した~!
     これって、答えも無いし、私には適切に答えられる様な内容じゃない!
    「わ、わかんない!」
    「そか、君がわかんないって事は共通の何かがある訳じゃ無いんだね。だとしたら、『セクシーな下着』が売ってる売り場がある?オレ、流石にランジェリーショップには入った事がないからわかんないや」
    「な、ないと、思う……」

     顔のすぐ横で行くんの心地よくて通りの良い声が響いている、のに私はどもってぼそぼそ返すしかない。この先の展開が長い付き合いでわかってしまっているから、どうにかそっちに持って行かない様にぐるぐる、考えながら必死に心の中の友人達に救いを求める。
     みちる、はダメだからひかるにお願いすれば良い?七ツ森くん、に訊いたら卒倒しちゃうかな、いっその事友達ではないけれどGORO先生に電話する!?
    「オレは見た事ないけど、もしかしてみなこちゃんは持ってる?」
    「持ってません!!ちなみに妹ちゃんも持ってないと思います!聞いちゃダメだよ!?」
    「わかってるよぉ」

     もう、あと少しのところまで来てしまっている行くんの興味ゲージ。大好きな彼の為に何でも聞いてあげたい、一緒に知ってみたいって思うけど、これは、こればっかりは……だって、私も良くわかんないんだもん。
    「レースがいっぱいでカワイイ、とか?」
    「でも、服の下に着づらくない?ごわごわしそう」
    「行くん、肌着も苦手だもんね……うーん、逆に布が少ない……?」
    「必要最低限って事?セクシーって性的魅力だよね、それはあるのかも……隠されたと所は想像力にお任せ、みたいな?」
    「!そうそう!」
    「えー、でもそれってお互いの裸見知ってたら効果少なくない?逆に何も着ていない方が好きかも。君の肌に触れてると気持ちが良いもん」
    「……」
     それは行くんの感想では、と言えないまま熱くなった頬を隠したくて抱えた膝の間に
    顔を埋めると、追い打ちをかける様に呑気な声が響く。ちょっとわくわくしている、新しい遊びを思いついたみたいな明るい声。

    「ねね、来週お互いに調べて発表会しない?スケジュールに入れておくね!」

     変わらない、キラキラ輝く瞳に負けを悟った私はやだ、と呟くしかない。
     それも本気の拒絶じゃないってバレバレなのが、とっても悔しい。
     こうして、セクシーな下着の定義を各自調べて発表する、と言う恥ずかしさしかないデートの約束が共有のスケジュールアプリに刻まれた。

    **


     ラブホテルの内装って、どうしてこう独特なんだろうか。確かに居住空間じゃない訳だしきらびやかな壁紙や、広すぎて落ち着かない脱衣所なんかも気分を盛り上げるのに必要な造りなんだろう。
     今、私が大きな鏡の前に広げてどうしたものかと睨みつけているコレと一緒だ。目の前に広げた上下セットの下着……が2着ある。
     一つは自分で用意した物、もう一つは今日の為に行くんが買ってきた(どうやって買ったのかは敢えて聞かなかった)物。
     どちらも示し合わせた様に白い生地だけど、作りが大分違う。
     私の買った物は、レースで飾り付けられた一見ふわふわした如何にも女の子の理想とする『お洒落でカワイイ下着』で、行くんの買ってきてくれたのは……
    「うわぁ……」

     つい手に取って声を漏らしてしまった。引いた、とかじゃないけれど、行くんってこれが良いと思って買ってくれたんだろうか。扉を挟んだ部屋で待っている筈の彼に、聞く勇気は流石にないけど渡されたって事はそうなんだろうな、と思いながらその極端に布面積が少ない下着をそっと元の位置に戻す。
     何だろう、これを履いたら……何だか色々見えちゃうのじゃないだろうか……。
     最近運動サボっていたし、これを着てお肉でも摘ままれたら恥の上塗り待ったナシだ。かと言って、自分の用意した物を履く勇気も──
    「みなこちゃん、だいじょぶ?開けても良い?」
    「!だ、大丈夫!!あと開けちゃダメ!!」
    「えっ、」
    「着るから!もうちょっと待ってて!」
    「はぁーい」

     部屋に戻るのがあまりにも遅いから心配して声を掛けてくれた行くんを追い返し、覚悟を決めてそれを手に取る。
     行くんが用意してくれたものを着て反応を見たい気持ちもあるけど、今回はこっち!だって、これ、行くん絶対好きだもん。
     水通しをしただけの新品の下着は少し肌に当てるにはまだ固くてホックが締めづらいなって思いながら、ついでに最近気になっている脇腹のお肉も上げてカップへ押し込み、鏡越しに気合を入れてから脱衣所を出る。歩く度に、ふわふわ揺れる胸元のレースが何だかこそばゆい。
     大丈夫、大丈夫。見た目は水着と一緒だ。
     そう自分に言い聞かせ、ベッドの座る行くんの前に立ったのだけれど……座ったまま私を見上げる行くんの瞳が期待に満ちてキラキラ光っているのを見て、たちまち後悔し下着に隠されている胸を押さえ縮こまってしまった。
    「わあ!ふわふわしてる!カワイイね!」
    「う、うん……行くんの用意してくれたやつじゃなくてごめんね?」
    「ううん、良いよ!あっちは何となく布面積だけで買ってみたやつだから!」
    「え、そうなの?」
    「そそ!ほら、この間『隠された部分』の話もしたでしょ?結局セクシーってなんだろうかってたくさん考えたんだけど、やっぱりわからなくて。君が着てたら何でも性的魅力に結びつくんじゃないかなって思ったから、絶対に君が選ばなそうなの買ってみたんだ」
    「あ、ああ~……」

     確かに。あの下着は絶対に選ばない。だってブラのカップの部分、着けたら乳首丸見えだったよ!1/4カップって初めて見たよ!
    「何も保護出来てない下着、初めて見た」
    「あれ、何が目的で着けるんだろうね」
    「ええ~……エッチする為じゃない?」
    「それもそっか」

     買ってきた本人がシレっと宣うから、気が抜けて思わずエッチ、なんて言ってしまったけど顔色一つ変えない行くんはよいしょ、とか言いながらベッドの奥の方へいってしまう。
     ああ、始まっちゃうんだ。途端に緊張が戻って来て、そわそわする私を行くんが笑いながら手招きしている。諸事情で脚があまり開けない私が、不格好にベッドへそろそろ上がるのを見て首を傾げる行くん。……あまり、じっと見ないで欲しい。
     近寄って見つめ合って軽い口付けの後に、頬を撫でる優しい手。こつん、と額を合わせ行くんの探る様な視線に目を瞑ると唇を開けて、と促す柔らかい舌が触れた。
     ここでいつもなら行くんの膝に乗り、彼の首に腕を回してもっと深く、っておねだりするところだけれど……今日はそうもいかない。
     中々唇を開けずに身を離そうとする私に、頬を押さえる手のひらがどうしたの?って訊く様に少し力が入ったのを感じ、一旦ストップの意味を込めて行くんの裸の胸をトントン、と軽く叩いた。
    「んっ……どうしたの?」
    「あ、あのね……お願いがあって」
    「うん」
    「今日は……今日は、行くんがそっちに寝て?」
    「え?オレが下って事?オッケー!」

     クッションと枕がたくさん置いてあるヘッドボードを指さしてお願いすると、勇気を出した割に軽い返事が返ってきて拍子抜けしてしまう。ごろん、と勢いよく寝転んだ行くんがじゃあキスの続き、って腕を引いてくるのに抗わず、ベッドに手を付いて顔を寄せる。今度は簡単に開く事の出来た唇から、舌を出すと合わせた隙間から彼の咥内に入り込んでずるりと擦った。
     擽る様な舌先の刺激とざらついた気持ち良い感触に夢中になって息をするのも忘れてしまう。鼻から漏れる空気までも湿り気を帯びた長いキスが終わり、唾液の糸を引きながら身を離した頃にはお互いに上気した頬が隠せない程蕩けている。とろりとした瞳を瞬かせ、行くんの指が私の唇から零れた唾液を顎のラインに沿って塗りこめていく。
     緩く撫でられるとそれだけで背筋がぞくぞくしてしまう。
    「は……みなこちゃん、今日はすごく積極的だね」
    「……いや?」
    「ううん。これってもしかして、セクシーな下着の効果ってやつ?可愛いのにそんな効果があるのすごいや」
    「ん……そう、かも。でもね、行くん。これって……」

    シーツとクッションに埋もれた行くんを見下ろすのは新鮮な景色だけれど、この後どうしよう。いよいよ言わなきゃ。バレる前に先に言ってしまった方が、きっと恥ずかしさも薄れるに違いない。
     そう思って口に出そうとしたのに、いざとなったら何て言えば良いのかわからなくて。行くんの投げ出された脚の間にいた私は、無言のまま彼のお腹の横に膝を置き、おそこの上に跨る事にした。
    「行くん、あの、お腹の上に乗っても良い?」
    「?うん、良いよ!」

     どうぞ、と身体をずらしてくれる行くんへお礼を言ってから、ついでに彼の左手を持ち上げる。もう心臓が口から飛び出てしまいそうだ。
     私の行動に不思議そうな顔をする行くんに心の中でごめんね!って謝ってから、借りた手を開いた足の間に当てた。
     純白の、レースが折り重なったその中心。脚を開いているとは言ってもきっと探らないとわからない。
    「ここ、開いてるの……」
    「えっ!?」

     私の言葉を聞いて、行くんの大きな瞳が一回り大きくなった。
     ああ、その顔好きだなあ、ってそうじゃないの、そうだよね?!そうなるよね!?
    「や、やっぱり無し!!」
    「待って待って!!えっ!?ちょっとごめん!!」
    「きゃあっ!?えっ!ウソ!!」

     あまりの恥ずかしさに彼の手を放り投げて逃げようとしたら、勢いよく起き上がった行くんにひっくり返されてしまって、あっと言う間に視界は天井しか見えない状態。
     やだやだ、と暴れる私の足をいとも簡単に掴んで開いた行くんが「ほんとだ!」なんて叫ぶから、もう空いた両手で顔を覆うしか出来る事がない。
     やっぱり布面積の少ない方が堂々と出来たかも知れない……。
    「初めて見た!」
    「私も初めて買ったよぉ!」
    「これどこで売ってるの!?」
    「ネットで買いました……!」

     行くんも一緒でしょ!って自棄になって返すと、我に返ったのかごめん!と言う声と閉じられる脚。途端にセクシーどころかギャグになってしまった空気にどうすれば良いかわからないまま、とりあえず二人で起き上がり正座して向き合ってみる。
     のぼせているのか勘違いするくらい顔が熱くなってしまった私と、爛々と目を輝かせている行くん。これは、多分すごく話したいけど私が嫌がるだろうから我慢している顔だ……。
     白いレースの下着に視線を落として、どうしよう、もう一度キスから始める?それとも今日はお開きにする?って訊こうかな、と思う程無言が続き、いい加減口を開こうかと顔を上げた瞬間、膝に置いていた手をぎゅっと握られた。
    「みなこちゃん」
    「は、はい……」
    「オレ、してみたい事があるんだけど!もちろん、君が嫌だったらしない。絶対しない」
    「うっ……でも、行くんはしてみたいんだよね……?」
    「うん」

     嫌とは言えない空気の下で何をでしょうか、と訊ねると輝く笑顔で返された言葉にぐらり、眩暈がした。

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