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    @94_ROM_12
    稲妻の目金君関連のみ

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    この間投げた会話文をSS調に直しただけの話です

    ##目金兄弟
    ##CP無し

    エイプリルフール(SS版)「兄ちゃん兄ちゃんっ。今日の晩ごはんカレーなんだって!」
    「?カレーって、今日は昨日の残りを消化する筈じゃあ」
    「あ、信じた?ざんねーんエイプリルフールでしたー!」

    あれは確か小学生になって間もないころ。学校の外で知った『エイプリルフール』という変わったイベントを楽しみたくて、嘘と言えるのかどうかも分からない冗談を兄に話した日の出来事だ。そんな浮かれた僕を心底馬鹿にしたように兄は「ああ、四月馬鹿ですか」と吐き捨てた。

    「しがつ?」
    「日本におけるエイプリルフールの言い回しだよ。にしても、去年のこの時期は嘘なんてついていなかったじゃ無いか。一体どういう風の吹き回しだい?」
    「えっと、サッカークラブのセンパイから教えて貰って……」
    「なるほどねえ。それでこんな馬鹿げた事を」

    あそこの連中はまたくだらない話を僕の弟に吹き込んで。
    そうぶつくさと兄はぼやいていたが、その時の僕は『自分が今日知ったばかりのイベントを兄は知っているらしい』という点に意識が向き、ついこう訊ねた。

    「兄ちゃんはエイプリルフールのこと知ってたの?」
    「知ってるも何も、この時期になるとニュースでも取り上げられるからね。それで?その先輩とやらに一体何を吹き込まれたのさ」
    「あのね、今日はウソをついても良い日で、みんなでウソを楽しむ日なんだって!」
    「それだけかい?我が弟ながら随分と浅い知識を衒らかすものだねえ」

    はっ、と小馬鹿にしたような笑い方をされ、悔しくなった僕は「じゃあ兄ちゃんは何を知ってるのさ」と拗ねた声色を隠さずに聞いた。

    「おや、この僕に講釈を垂れろとでも?いいでしょう。この僕が教えてあげようじゃ無いか。
    まず、エイプリルフールの起源は明らかにされておらず、十五〜六世紀の西洋諸国とも三世紀頃のインドとも言われている。日本に広まったのは大正時代と言われ新聞にもその記事が……」

    兄の話す内容は凡そ小学校低学年に理解出来るものではなく、この辺りから何を言っているのか分からなくなったのだが、それを察知したのか兄は「この辺りは一斗には難しいか」と呟き、エイプリルフールそのものについて語りだした。

    「エイプリルフールは一斗の言う通り嘘をついても良い日とされていて、イギリスでは午前中に嘘をつき、午後にはネタバラシというルールが定められているね。日本でもそのルールを適用している人が多いそうだ」
    「えっ、そうなの?」
    「ああ。とはいえこのルールを採用していない国も多いみたいだけどね。それと、近年では『エイプリルフールについた嘘は1年間叶わなくなる』といった情報が回っている様だけど、これはどこかの誰かが言った伝統もルールも何も無いただの嘘だね」
    「へえー」

    (僕が今日初めて知ったイベントを兄ちゃんはこんなにも詳しく知っている。やっぱり兄ちゃんは凄いや)

    詳しいことまでは覚えていないが、当時の僕はただ漠然と兄の知識量の凄さに圧倒され、心から尊敬していたのを覚えている。しかし、そんな無邪気に兄を慕う弟の目など気にも止まらなかったのか、兄は心底不快そうにこう話しだした。

    「そもそも、嘘をついても良い日だとか何とか言って訳もなくはしゃぐというのは随分と馬鹿げた行動だと僕は思うね」
    「に、兄ちゃん?」
    「メディアやら有名人やら、面白みのかけらもない嘘を無闇矢鱈にばら撒いて、今日だけは許してと言うのは随分と変な話ですよ。国によっては国営メディアで嘘のニュースを流すだとか。全く、訳のわからないイベントに意味もなくはしゃぐ馬鹿どもが大勢いると思うと、ゾッとする話だね」

    エイプリルフールを楽しむ全ての人々を馬鹿にするように、兄はそう吐き捨てた。兄はあくまで『エイプリルフールを楽しむ何処かの誰か』をさげすんでいるだけの話ではあった。しかし、

    「一斗?何だい黙り込んじゃって」
    「……ぅう〜っ!そんなに言わなくたって良いじゃんか〜〜〜!」
    「ぇ、はっ!?何でお前が泣くのさ!?」
    「エイプリルフールではしゃぐのはバカって言った〜!」

    当然エイプリルフールを楽しむ何処かの誰かに当時の僕も含まれていた訳で、兄の強い口調が全て自分に向けられているように感じた僕は、堰が切れたようにワンワンと泣いてしまったのだ。

    「いやっ、何も一斗のことを言った訳じゃ……!ああっもう!泣き止めってばー」

    自分の言葉が弟を傷つけたとようやく理解した兄は慌てふためき僕を必死に慰めたが、涙は簡単に止まることは無く、僕は母親が部屋の扉を開けるまでずっと泣き続ける羽目になったのだ。




    そんな他愛もない出来事から早数年。中学生になった僕と兄貴にとってあの時の出来事は遠い昔の話になった。その数年の間に兄は随分と丸くなり、過度な偏見や尖ったものの見方や発言は随分と減ったように思える。あの頃は心底馬鹿にしたエイプリルフールだって、自身は参加こそしないものの『楽しみたいもの同士ですればいい』といった寛大な態度を見せるようになった。それどころか__


    「うわーっ!今年もディスティニーGOから謎のアプリがリリースされてる!ミリタリーマスターは1日限りのミニゲームが実装されていますし、アニメ会社からもエイプリルフールに纏わるネタ画像が多数投稿!ふ、ふふふふ。久々に本気を出すとしましょうか……。この僕が、絶対に、エイプリルフール限定イベントを全て楽しみ尽くして見せます!!!」

    「…………」

    近年ではエイプリルフールを期間限定ゲームイベント実装日と認識する様になり、世界中の誰よりもエイプリルフールを楽しむようになったのだ。
    ……いやそれにしたって思想変わりすぎじゃない?何もあの頃の発言を翻すなとは言うつもりはないけどさ。それにしたって変わりすぎだろ。誰よりも浮かれてるじゃん。誰よりも楽しんでるじゃん。謎に僕に圧かけてきたのは一体何だったんだよ。

    「……ねえ兄貴」
    「何ですか一斗」
    「僕の知り合いにさ、エイプリルフールにはしゃぐのは馬鹿のすることだって言う奴がいるんだよね。どう思う?」
    「へえ、随分と偏った思想を持った奴もいるもんだね」
    「………………」

    あっけからんとそう言い放つ兄にすっかりと脱力してしまい、僕は兄にこう吐き捨てた。

    「兄貴ってさあ、本っっっ当に人生楽しんでるよね」
    「おや、随分と今更なことを言うじゃないか。僕は一分一秒も無駄にせず、効率よく且つ真剣にコンテンツに向き合っており__」
    「ぁあーもうっ、うるさい黙って」
    「何で!?」
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